75話 イチクミvs1組
ウッドランドに行ってたタガセンが戻ってきた。
その前に千谷君がさか中の生徒をたくさん連れて戻ってきたので、クラスの間が狭くなった。
イチクミみんなで使ってた時には狭さを感じてなかったのに、さすがに他の学校の生徒が来ちゃったら狭い。
教室を掃除する時みたいに、椅子を壁際に寄せて重ねた。開いた空間の半分、こっち側に僕らろく中が、向こう側にさか中が床に座った。
あぁ……苦手な床座りか。せめて壁に寄りかかりたいです。なんて考えていたら、太郎君に壁際に引っ張られた。
「ここにしようぜ」
太郎君! 僕はいつでも太郎君に着いていきます!
やないさんと漆原さんも近くに来て、僕のスペースを開けてくれた。董明さんもだ。
「ほら、ポチャ次郎、こっちに脚伸ばしなよ」
「壁に寄りかかって足伸ばしなさいよ」
「う、うん。ありがと」
イチクミのみんなはそれぞれ床に座っている。膝を抱えたり、胡座をかいたり、足を横崩しにしたり、たまに正座したり。どれも僕には出来ない座り方だ。
「デブを舐めるなよな。俺、身体が硬いからさ、胡座かけないんだよ、開脚とか無理」
太郎君がブツブツ言いながら僕の横の壁に寄りかかって足を投げ出した。
やないさんと漆原さんは女子だけど胡座だ。かっこいいな。董明さんはなんか女神様のような座り方。どこにも寄りかからずにあの座り方って、どうなってるんだろ? 僕なら一瞬で横に倒れるな。
突然、近くで城之内君が立ち上がったのでびっくりした。
部屋の中央で日向君が立って話をしていたけど、僕、全然聞いてなかった。
立ち上がった城之内君に、さか中の人が数人、座ってる人を掻き分けて近づいてきた。
城之内君が空いているスペースを指差すと、彼らはそこに座った。
向こうでは日向君が誰かの名前を呼んで、またそこにさか中の生徒が近づいていく。
「ポチャ次郎ぉ、また、話を聞いてなかったな」
「ごめんなさい……」
「今な、さか中とスキル合わせをしているんだ」
「スキル合わせ?」
「うちとさか中で同じスキル同士で班を組む」
え、今ってスキル別じゃない班分けになったんだよね? そこにさか中も入るの? ちょっと混乱しない? いま6人なのにあと6人増えて12人の班になるの? えー、僕、名前覚えられるかな?
「ポチャ次郎、大丈夫だ。うちの班が引き受けるのは5人だ」
「大丈夫よ、ポチャ次郎君。あとで名前を紙に書いて渡すわね」
「うちと組むのは、鑑定、生産3つと、倉庫。そのスキル持ちの5人だ」
「よろしく」
「よろしく」
「どうも」
女子3人が僕ら、と言うか主に城之内君に頭を下げた。
「よろしくお願いします」
4人目の女子は僕らに向かって頭を下げた。
女子ぃぃ??? あ、ごめんなさい。ちょっとだけ老け顔の女子って思っちゃった。僕って失礼だよね。
「あ、佐々木先生な。さか中の社会科の先生だってさ」
え、あ? 先生だったのか。
大人だったのなら全然老けていませんから! 若い女性の先生です。
5人目は男子だった。
「地主の染谷です。よろしくー」
地主の染谷??? ええと、ウッドランドの地主さん?山林持ち?
「おい、ジヌそめ。ポチャ次郎が勘違いしてるぞ。ちゃんと自己紹介しろよな」
城之内君がなんか受けている。地主さんに対して『じぬそめ』なんて失礼な呼び方!
「ごめんごめん。うちのクラス染谷がふたりで、親の職業でみんなが呼ぶからさ。染谷ぁ!」
地主さんが向こうに居る団体へと大きな声で叫んだ。
「おう?」
「何でもねえ」
手を振った後、くるりと僕に向き直った。
「今のが親が公務員の染谷。で、俺が親が地主をやっている染谷」
「親御さんがウッドランドで地主をやってるんだ。染谷君、こっち産まれなんだね」
「ああ、ほら。もうポチャに誤認されたなw」
「いや、うちの親は、野田市内の田舎の地主だ。野田市、千葉県、日本国内! 同じ地球人だから。よろしくな」
「そ、そうなんだ。ごめん、僕はポチャ次郎、よろしくね」
そこで城之内君と太郎が笑い転げた。
「ポ、ポチャ次郎、お前、ポチャ次郎はあだ名だろw まさか自分の名前を忘れてないよな?」
「あわわ、ごめんなさい。草凪です。あだ名がポチャ次郎です」
「なんかピッタリw」
「だねぇw」
さか中女子3人組が小さく笑っていた。なんか、恥ずかしい。隠れたいけど隠れる場所がない。
と思ったら僕の前に城之内君と太郎君が立った。隠れられる!
「あ、言い忘れた。ポチャ次郎はイチクミのアイドルだから、取り扱いには十分、注意してな?」
「そ。次郎は俺の相方。ポチャコンビとして、次郎を馬鹿にするってことは俺も敵に回すって事だかんな?」
ふたりの背中でさか中の生徒が見えなくなった。
「あの、ごめんなさいね。うちの生徒、悪気は無かったの。仲良くしてね?」
佐々木先生が謝っている。
何で? 今、誰と誰が喧嘩? 何が起こって怒ったの? 僕も謝った方がいい?
城之内君の背中から顔を出すと、城之内君の前に董明さん、やないさん、漆原さんの3人が腰に手を当てて立っていた。
ろく中対さか中の女子3人の戦い??? じょ……しの戦いに男子が入ったらダメだよね。口を挟んだらたぶん、死。
城之内君の横から地主さんが顔をヒョコっと出した。
「ポチャ次郎、ごめんな? うちの女子が失礼で」
「え、あ? んと、よくわかりませんが、地主さんは頭を下げたらダメです」
「親が地主。俺は普通に中2。仲良くしよ?」
手を出してきたのでその手を掴んだ。握手。
ニギ、…………ニギギギギ
地主さんが僕の手をニギニギしたと思ったら両手で掴んで、僕の腕を上に上に上がってきた。二の腕あたりでニギニギと揉んでいる。
「何だ、これぇっ!」
「ふっ、落ちたな」
「落ちたぞ」
城之内君と太郎君が謎のわかり合いをしていた。
それからみんなで輪になって座った。各班でさか中とスキルの情報を共有するんだって。
城之内君がスキルの説明を始める。さか中の女子3人は相変わらず城之内君に釘付け。佐々木先生はなんかオロオロしている。
先生同士、タガセンと話さなくていいのかな?と思ったけど、タガセンは戻ってすぐに部屋から出てどこかに行っちゃった。高田さんも居なかったから、別室で会議かな?
僕は壁に寄りかかって座っている。隣には太郎君。太郎君とは反対側に地主さん。
地主さんがずっと僕の二の腕をモミモミしている。いいけどさー。




