74話 着々と交流
-----(田川視点)-----
生徒の名簿を作ってもらいスキルを記入してもらった。
ざっと目を通すが、やはりスキルの種類はうちと同じだ。佐々木先生は生産(養殖、養蜂、飼育)のようだ。生産(養殖等)は、どこでも人気がないスキルだな。
「各自、スキルは使ってみたか?」
俺の問いに数人が首を横に振った。佐々木先生もだ。俺もまだだからな。このスキルは使えるタイミングが難しい。
魔法移動は……染谷か。名前の横に括弧書きで『公務員』とある。もうひとりの染谷は『地主』か。親の職業だろう。
染谷はさっき首を振った中にはいなかった。と言う事は魔法移動は既に使っていると言う事か。だったら話が早い。
「今後の事を考えて、ウッドランド、ブリンクランド、コスタルの交流を密にしたい。そこで主になるのが魔法移動スキルだ」
俺は染谷を見ながら話す。彼は緊張した面持ちで頷きながら聞いている。
「魔法移動を使っているならわかっていると思うが、これから一緒にブリンクランドに飛んでもらう。ブリンクランドをブックマークしてしまえば、今後はいつでも行き来が可能だ。千谷」
千谷が頷き染谷へ近づく。染谷の肩に触れると2人が一瞬で消えた。
すぐに戻ると思ったが4〜5分待った。千谷と染谷は廊下から戻ってきた。
「すみません、この部屋をブックマークし忘れて、泊まった部屋に出ちった」
千谷が申し訳なさそうな顔で入ってきた。
「染谷、向こうはブックマークしたか?」
「はい、しました」
「そうか。今後は染谷がさか中での運び役になってもらう」
「船橋、今日はまだ魔法移動は使っていないな?」
「はい」
「なら、ウッドランドとブリンクランドの往復を染谷に付いて検証しろ。まずは染谷が何回往復可能か。その後は船橋が検証だ。レベルや魔力が見えない分、実際に試して記録するしかない」
「同時ではダメなんですか?」
「途中で切れたら戻ってこれない。どちらかの国で魔力切れが起きればまだフォローのしようはあるが、万が一、途中で落ちる事があってももうひとりがフォロー出来るように、だ」
「途中で落ちる事、あるんだ……」
「知らん。知らんが無いとも限らん」
「あ、じゃあ、俺は染谷に捕まって同行すればいいのか」
「染谷の回数をカウントしたら、船橋はブリンク待機組とペアを組んでカウントしてみろ」
「俺は……今日はもう飛んだからマックスの魔力じゃなくなってるのか」
「魔法移動スキル持ち全員が同じ魔力量とも限らん。別日にカウントを行っておけ」
「はいっす」
「あーやっぱり、MPとかあるんだ。午後になるとダメな事多かったの、それかぁ」
「攻撃系の魔術は魔力の減りが速いみたいだぞ」
「そうなんだ?」
「ねぇ、鑑定とか回復ってどうなの?」
「鑑定は無制限って言ってた気がする。すまん、俺鑑定持ってないからハッキリとは言えん」
スキルについては生徒同士、同じスキルで話した方が早いかもしれないな。
生徒名簿に書かれたスキル一覧を見ながらグループ分けを考えた。
「佐々木先生、我々大人が話している間、さか中の生徒をブリンクランドへ連れて行きます。うちの生徒と顔合わせをさせましょう」
「は、はい。よろしくお願いします」
「染谷、船橋はカウントの検証。千谷は残りの生徒をブリンクランドへ運べ」
「はい。あ、でも一度には無理かな。3回に分けてでいいですか?」
「かまわない。向こうに着いたらこのグループに分かれてスキルついて勉強会だ」
佐々木先生から預かった生徒名簿に蛍光ペンで色分けした紙を千谷へ渡した。
千谷は名簿見をながら、同じ色塗られた生徒名前を呼び、自分へと触れさせると魔法移動で飛んでいった。船橋も染谷とカウント検証を始めた。
俺は残された佐々木先生に声をかけて、この国の召喚関係者へと案内をしてもらった。
連れて行かれたのは、こじんまりとしていたがそれなりに整えられた部屋であった。
そこには、ブリンクランドに来た使者エルフ殿と、他にも似たような美形エルフが数人いた。
この国のエルフ(エルフではないと言うが)は、年齢不詳だ。全員20代……そこそこに見える。
この屋敷の窓から見た外には少年エルフが居た。屋敷の廊下では幼児エルフも居た。が、年寄りエルフはまだ見ていない。
一定の年齢までしか生きられない……エルフ。いや、どちらかと言うと一定の年齢で見かけの老化が止まるのかもしれない。
女性に年齢は聞けないが、男性エルフなら年齢を聞いても大丈夫だろうか?
だが、あまりに美形すぎて、男女の区別が難しいぞ?スレンダーな女性と言われれば女性にも見える。
どこだ?どこで区別をすればいいんだ?
声!……も、澄んだ高めの声だ。わからん。どっちだ?
今後の話をしたいが、この美形集団の中の誰がリーダーなのかもわかん。
名前(しかも長い)を名乗られたが、名前を覚えても顔の区別が難しい。整いすぎているせいで尚更区別がつかん。
とりあえず、誰に視線を向けるでもなく遠くを見つめて話す事にした。
「召喚された者の今後について話をしたい」
そう前置きをしてから、ブリンクランドの現状を掻い摘んで話す。これは宰相から了承を得ている。
それからブリンクランドはウッドランドと国交を深める意向である事、ついてはどちらかの国で関係者により話し合いを設けたい旨を伝えた。
俺は国交には口出しをするつもりはない。ないが、召喚された者が無事に帰還するために必要な口出しはさせてもらう。
コスタルとの国交も準備中である事、国交窓口になる『外交官』についても軽く触れておいた。
必要な事を伝え、聞き出したい事も聞いてから俺らはブリンクランドへ戻る事にする。
もちろん今後はしょっちゅう行き来をする旨伝えておいた。
そう。ウッドランドに来たら聞きたいと思っていたひとつ。
召喚における第三条件をウッドランドは何にしたのか?
話さないかもしれないと思っていたが、あっさりと教えてくれた。
「第三は『武に秀でた力』です」
「武力?」
「ええ。我々ウッドランドの民は魔術はそれなりに使いこなしますが、武力は控えめと言いましょうか……。その、得意とする者が少ないのです。それで、武に秀でた力を持つ者が召喚されてきたらと願いました」
25人、中2、武力…………。
それは、どうなんだ? 25人が必須として、中学2年の武力高め……。
さか中で召喚された2-1は武力に秀でた生徒がいたのか?
何故、さか中が召喚先に選ばれた?
それを言うならブリンクランドに選ばれたうちは『バランス』? 何故、うちがバランスなんだ?
コスタルはめぎ中を何で選んだんだ? 第三条件はなんだ? コスタルに行ってみないとわからないか。
ブリンクランド国 千葉県流山市、ろく中。バランス
ウッドランド国 千葉県野田市、さか中。武力
コスタル国 埼玉県春日部市、めぎ中。ー
ディサート国 東京都八王子市、本郷中。ー
ウッダレジオン ー
アンブリア ー
フォーレスタ ー
残り3校は不明だが、第一条件、第二条件は同じはずだ。
25人の中2。
そうだった、全員が中2ではなかった。俺自体が中2ではない。正直に言おう。厨二だった時期もある。今は違うぞ。違うと思うぞ。
強いて言うなら『中2の担任』
ろく中の、中2が24人と中2の担任か。
さか中も、中2が24人に中2の社会科教師。
めぎ中は、中2が22人に、中2の担任がふたりと……高田さんはたまたま2年の教室の廊下を歩いていただけのはずだ。2年に限定した用務員ではないはず。
それと召喚条件のみっつの関わりがわからないな。
「佐々木先生、さか中は陸上部が有名でしたね。駅伝でも毎年活躍されていたな。他にどんな部が盛んなんですか?」
「え、あ、そうなんですか? 私、その、教師歴がまだ浅くて。それに急な欠員で境井戸中学に来たばかり……。すみません、部活とかにまだ関わっていなくて」
「そうですか」
生徒に聞いた方が早いかもしれない。
どちらにしても、召喚条件について知ったところで今更だな。帰還に必要なら調べるべきだが、もう召喚はされてしまったんだ。これ以上深く知る意味はないかもしれない。
必要な会話も済んだのでさっきの部屋に戻り生徒が戻るのを待った。




