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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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73話 ウッドランド②

 この世界に馴染む生徒達に完全に置き去りの私。教師として落ち込むわぁ。でも私、社会科の教師だから。



「佐々木ちゃーん、大丈夫か? なんかかなり萎れているな」


「男子が怪我するから佐々木ちゃんが心配するんじゃん」

「そうだよー。もう少し気をつけなよ」

「仕方ないだろ! それにそんなに大きい怪我はしてないぞ?」

「だよな? せいぜいアザとか擦りむいたとかだよな?」

「回復誰だっけ?」

「はーい。私」

「山岡か。よし、じゃあ、佐々木ちゃんに会う前は必ず山岡に回復をしてもらってからにしようぜ」


「違うでしょ! 回復してから私に会うんじゃなくて、怪我を、しないで!」



 つい、怒鳴ってしまった……。それに、泣きそう。



「あー、ソウデスネ」

「おい、難しい戸邉ぇ、佐々木ちゃん泣かすなよ」

「え、あ? 俺? 俺のせい?」


「佐々木ちゃん、佐々木ちゃん、朗報です! この世界に召喚されたのって俺らだけじゃないんだって」



 えっ? どう言う事? 伏せていた顔を思わずあげた。鼻水が垂れ始めていたけど気にしている場合じゃない。



「他の国も召喚を行ったって。それで、情報交換を行うのにウッドランドからそっちに使者が出向くってさ」


「他の国?」


「うんうん。南側へうんと下ったとこにあるブリンクランドって国だって。それと、もっともっと南のコスタルって国も」


「そうなの? ふたつも?」


「なんか、もっと他にも同時に召喚をしたそうだけど、一応交流のあるのはその2国なんだってさ。ブリンクランドとコスタル」



 私が知らない情報を何で生徒が知ってるのかとかどうでもいいわ。もしかしてその国には大人達が招待されたかもしれない。

 たったひとり、大人の地球人って思ってたけど、他にも居るってわかって気が楽になった。


 私が笑い出したら、生徒達も笑い始めた。いつも私が暗い顔をしていたのを子供達は気にしていたのかも。恥ずかしいな。



 それから少しして、ブリンクランドへ向かった使者が戻ってきていると聞いた。

 ブリンクランドへは辿り着けなかったのかと焦った。

 けど、使者はちゃんとブリンクランドへ着けたんですって。それで向こうの使者を連れてきて、今は国境で待機しているって。


 私は迎えの一行に混ぜて欲しいとお願いした。ブリンクランドから来た使者の中に地球人、多分、私達と同じ世界から来た人が居ると聞いたからだ。

 一刻も早く会いたい。



「佐々木ちゃーん、ブリンクランド国の召喚で来たのが俺らと同じ世界からかどうかはわからないぜ」

「うんうん、あんま、期待しないほうが」

「全然違う世界からの召喚だったら佐々木ちゃん、絶対泣くよね」


「でも、いいの! 迎えに行くわ」


「あーもう、しょうがないなぁ」

「行っといでー」

「誰か着いてく? 佐々木ちゃんだけだと危なくない?」

「馬車だし、警備も山ほど付くだろ? 大丈夫じゃね?」




 生徒に応援されて(?)送り出されて、馬車で国境へ向かった。

 ほとんど屋敷から出なかったので森の中を通るのは来た時以来だ。鬱蒼とした森だけど、馬車が通れる道は綺麗に整備されている。アスファルトとかコンクリではないけれど、草木が全く無い土の道だった。


 獣に襲われる事もなく馬車は進んでいく。木が途切れた場所に壁が見え隠れしている。あそこが国境らしい。

 壁は国境沿いに国を囲むように作られているのだって。



「石のような岩のような? 不思議な壁ですね」


「はい。大昔に作られたそうです。今は国境近辺まで近寄れますが、昔は国境に近寄る事は禁じられていました」


「そうなんですか?」


「商人が出入りするくらいですね。我が国から出る事は滅多にありません。先だっての召喚で久しぶりに国境の門をくぐったそうですよ。私も初めてここまで来ました」

「道が残っていたのは驚きましたね」


「道はどなたかが整備をされているのですか?」


「いえ、道自体に魔法がかけられているので、薄れた頃に上掛けしているようです。まぁ、何十年に一度、ですが」



 道路整備を魔法で……。意味がわからない。

 森に住む謎の美形国家、しかも魔法を使う民族? ファンタジーだわね。でも、顔を見ると魔法が使えても頷けるわね。美形は何でも有りだもんね。

 


 ようやく国境に到着した。

 そこで使者一行を乗せて、馬車は中央へととって返す。





 泣いてしまった。我慢しようと決めていたのに、気持ちが一気に溢れ出てしまった。


 だって、だって普通の顔の、それも日本人顔! 身長も私より低いおじさん!!!

 確実に私より年上っぽい。大人よ! 私以外の大人ぁ!


 嬉しくて我慢出来るわけがない。

 色々話したくて同じ馬車に同乗したけど、言いたい事が喉に詰まってただただ嗚咽しか出なかった。



 皆で生活している屋敷に戻り、部屋も私の隣に用意してもらった。でも今日は疲れているから話は明日と言われてしまった。

 そうよね、遠い他の国から来たんだもんね。


 そう言えば、ブリンクランドからの使者は3名で、あの男性の他は子供が2人居たわ。うちの生徒と同じくらいの。……まさか、中学生?

 まぁ、それも明日、わかるでしょう。




 翌日。朝食を一緒にとお誘いした。

 うちの生徒達もブリンクランドからの使者に興味深々だ。

 いつも食事をいただいている部屋に3人の席を作った。


 普段なら生徒達は全員一緒に食べたりしない。適当に時間差で食べてそれぞれが動き出している。私が食べる時は数人残っていればいいほうだった。

 でも今朝は全員が席に着いている。そしてこちらをチラチラと見ている。


 まずはみんなに紹介をと思い立ち上がると、私が言うより早くに3人が立ち上がり自分で紹介を始めた。



「千葉県、流山市立緑陽中学の田川だ」

「ろく中、2年1組の千谷です、よろしくお願いします」

「同じく1組の船橋です。よろしく」



 3人は挨拶をすると席に座った。



「あ、あの、ブリンクランドから……あの、ブリンクランドに、召喚された方達です。食後に色々話しましょう。ではいただきます」



 いつもは「いただきます」なんて号令をかけた事がない。でも、それを言わないと誰も食べ始めない気がして言ってみた。

 皆がこっちを見ながらだけど食事を始めた。見るとろく中の田川先生達も食べ始めていた。





 今日は食事が終わっても生徒達がそれぞれ外出する事はなかった。どうやら私の指示をまっている?


 どうしよう。まずは田川先生とふたりで話した方がいいのか、それともろく中の生徒ふたりも交える?

 でもうちの生徒達も参加したそうにこっちを見ている。



「どこか寛いで話せる部屋はありますか? 生徒も一緒の方がいいでしょう」



 田川先生から申し出てもらえて助かったわ。

 休憩ルームにしている部屋へ案内をした。テーブルと椅子は2セットしかない。4〜5人用の丸いテーブルに椅子が4つずつ。

 だけど、床にクッションを置いたりして、生徒達は適当に座った。



 テーブルは4人分の椅子があるのに、そこには田川先生と私だけが腰掛けた。ろく中の生徒ふたりは田川先生より少し下がった場所に椅子を置いて座った。



「率直に話しませんか。佐々木先生はこの世界の事、この国の事をどこまでご存知ですか?」



 なんか、田川先生、怖い。眼力が凄いし圧も凄い。



「狼に睨まれたウサギ……」

「タガセン、取り調べ中のデカか……」




-----(田川視点)-----


 ウッドランドに到着した翌日の朝食後に話をする場を設けてもらった。

 まどろっこしいのは嫌いだ。率直に腹を割って話したい。ウッドランドに置いてきている生徒が気になるから、無駄な時間を取りたくない。



「狼に睨まれたウサギ……」

「タガセン、取り調べ中のデカか……」



 背後から千谷と船橋が小声で何か言っている。チラリと2人に目をやった後、視線を佐々木先生に戻すと、何故か涙ぐんでいた。

 昨日からよく泣く先生だ。大丈夫なのか、境井戸中学。


 だが、ざっと数えて生徒は24名いる。25人で召喚されたのなら生徒はまだ誰ひとりも欠けていないという事だ。

 ぱっと見、怪我をしている者も見当たらない。表情も明るい。暗いのは目の前の佐々木先生くらいだ。



「佐々木先生?」



 もう一度声かけるとビクンと肩を揺らした。



「もしかして、話したらダメと言われているのか?」



 千谷の言葉に部屋を見回した。一応、今、この部屋には俺たち日本人しかいない。しかし、どこかで聞かれているのか?それを懸念して話せない?



「違うんです。佐々木ちゃんはシャイだから」



 床座りしていた生徒のひとりが立ち上がった。

 そうなのか? シャイな教師が1人で24人の生徒の保護か、それは大変だっただろう。



「それは大変でしたね」



 思わず労いの言葉かけると、テーブルに突っ伏して泣き出してしまった。本当によく泣く先生だ。



「タガセンが女を泣かせた」

「犯人がとうとう落ちた」


「おいっ」



 人聞きが悪い。振り返り、千谷達を諌めた。



「あの、佐々木ちゃんより俺らの方が色々知っていると思うので、話にくわわっていいですか?」



 そうだな、その方が早そうだ。頷くと数人の生徒が立ち上がり近くまで来た。



「知っていると思いますがもう一度名乗りますね。野田市立境井戸中学2年1組、東風谷と言います。一応学級員長です」

「私、副委員長で稲子と言います。あの、流山の緑陽中学ってろく中ですよね。田川先生ってろく中のタガセンかな」


「あ、そのタガセンでーす」



 背後から千谷が答えた。



「やっぱり。もしかしてって思ってた」

「稲子、知ってんの?」

「ろく中は有名だから。バレー部とか陸上部もバスケ部も」

「あ、あのろく中か!」

「関東では有名よ。もしかして今回召喚で来たのって、ろく中イチクミ?」


「そうでーす」

「うっす。俺らイチクミっす。でもまだイチクミになったばかりだから俺たちが凄いわけじゃないよな?」

「境井戸中学って、さか中だよな? そっちも駅伝で有名じゃん」



 千谷達がさか中の生徒と上手く交流をしてくれたので話が進み始めた。



-------


 残念ながら、この世界の情報はうちほどは持っていなかった。こちらの話に驚いていたくらいだ。

 そして1番知りたかったスキルの話になった。



「そっちスキル分けはどうした?」


「うちはクラスが男女12人ずつだろ? だから男女3、3で班を4つ作って、ジャンケンでスクロールをとっていく、班内で6つのスクロールを分ける。それで残り一個は佐々木ちゃんだ」


「あれさ、酷いよな。何であそこにスキルがあったのか、どんな世界へ行くのか、全く情報が無い状態でスキル取得じゃん? こっちに来てからあれこれ後悔とかあったなぁ」



 ジャンケンでスクロール分けだと?



「宝箱はいくつみつけた?」


「いくつって、ひとつだろ? えっ、ろく中って宝箱ふたつあったのか?」

「え、うっそ。ふたつあったの?」



 千谷と船橋が顔を見合わせた後、俺を振り返る。話していいのかを目で聞いてきたので、瞬きで答えた。



「あー、えとな、うちは6個見つけた。宝箱……6個」



 一瞬の沈黙、その直後に沈黙を破る叫びがこだました。



「ろっっこぉぉお?!」

「宝箱6個? どゆことよ!」

「6個って有りえないだろ!」

「ろく中欲張りすぎだぞ! 宝箱6個ってなんだよ!」



「な、なんか、ごめん……」



「あそこに6個とか、無かったよな?」


「いや、別の部屋にあった。白いから壁に見えるけど廊下に出れる扉があって部屋が12個」


「うっそだろう、他にも部屋があったのかぁ」

「俺ら、しくったな」



 と言う事は、さか中は宝箱がひとつ。スキルも25種が1枚ずつか。

 聖壁を作るのにワンセットしか出来ないのか。いや、付与スキルが1枚だから、それも難しいのか? うちの余りと上手く組み合わせて……か。



 生徒の名簿を作ってもらいスキルを記入してもらった。


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