7話 スキル分け、何が正解か
一旦は全員に分配するで決まりかけた話し合いだったが、再び紛糾し始めた。
「攻撃系スキルは全部男子に振った方が良くないか?」
「女子は特殊系スキルか」
「いや、でもさ、ポチャコンビに戦闘が務まるか?」
うわっ、みんなの視線が僕と太郎君に集まった!とりあえず首を横にブンブンと振ってみる。
あぁ!太郎君が『俺はやるぜ』的なポーズをしてる!
僕らを見たみんながタガセンに目を向ける。
「私らも頑張るよ」
振り返った女子達(背の高い女子達)がなんかやる気を見せた。タガセンから何の合図が出たの? 僕の戦闘却下の合図をタガセンが出した?
タガセンを見ても全くわからない。だって動いてないし。
「どっちだ? このまま男女均等に戦闘職を分けていいのか?」
「男子が前に出ろって言われるか」
「男子だから女子だからってのはNGだっけ?」
「身体的に可能な選択にした方が……」
「戦闘はやはり男子に全振りにするか?」
話が堂々巡りっぽい。みんながタガセンをチラ見。タガセン無言。
「うちら女バレをなめんなよ。パイプ椅子持ち上げたタガセンにいつも追いかけ回されてるんだからね」
「女バレの副顧問だからな、タガセン」
「バレー部の男女両方の顧問じゃないのか」
「メインが男バレ。女バレは副顧問位置」
「とりあえず、動けるやつ得意なやつが前に出ていこうぜ。男女関係なく」
今度こそ、みんなの意思はひとつにまとまった、のかな?
タガセンは動かない。
-----(田川視点)-----
今、俺は、狂喜乱舞している。心の中で。
もちろん、中学の担任教師である立場は忘れていない。だから心の中で踊り出していても、身体も表情も微動だにさせていない(はずだ)。
長い教師人生、辛い事、報われない事が多かった。それでも続けてこれたのは、現実逃避出来る趣味があったからだ。
俺の趣味、それはラノベを読む事。
特にここ数年は無料で読める小説サイトがいくつもあってありがたい。
ほんのちょっとの開いた時間で読めるんだ。身体を使う趣味はそれなりにまとまった時間が必要だし金もかかる。
だが、タダで読める小説は良い。ほんの少しの時間でも小説の中に逃避出来るんだ。
特に最近は異世界ものを読み漁っている。異世界へ行けたら、そんな想いを胸に、小説を楽しんでいた。
だから俺にはすぐにわかった。
これは異世界転移だと。いや、転移ではない。おそらく『召喚』ではないだろうか。
それも『クラス召喚』だ。
教室の床が光り始めた時に、俺は確かに見た。そこに召喚陣が光り浮かび上がるのを。
そして、出たのは白い床、白い壁、白い天井の部屋。おそらくここは『神からスキル貰う部屋』ではないか、と。
俺たちはここでスキルを貰い、召喚された国へ旅立つのだ。そう思い、俺は部屋の中を探した。
案の定、宝箱らしき物を見つけた。中には筒状の紙。
もうこれはスキルスクロール以外の何ものでもないと確信した。そしてその筒には読める謎の文字、スキル名が記されていた。
飛び上がりたかった。まさか、本当に異世界へ行く事になるとは。
ただひとつ、生徒と一緒なのは『俺の夢』としては想定外だ。子供達を連れての異世界は、おそらくかなりの重荷になる。
だがそれもいいだろう。と言うか、そういうラノベもあった。だいたいは生徒が主役だ。先生が主人公の話はまだ読んだ事がない。もしかすると俺は今回の召喚ではオマケなのかもしれない。
それもいいだろう。俺はモブとして異世界をエンジョイする。
もちろん、生徒達を見捨てると言う意味ではない。しかし口は出さない。子供は頭が柔らかい、カチカチの大人になる前に自分で考える脳を育てるのが大事だ。
親、学校、周りの大人の言う通りに動く人間にはしたくない。自分で選ばせ、道を間違えそう時に少しの方向修正。俺は現実でもそうやって生きてきた。
異世界でもそれは変わらない。
宝箱の中のスクロールを見つけた時、思わず独り占めしたい気持ちに襲われた。堪えるのに時間がかかった。
25本あったから、1本は貰えるだろう。一応大人の余裕を見せて『お前らで使え』と言ってしまったが、嘘だそ。全員公平に分配しろ。ひとり1枚だぞ? 心の中で何度も唱えた。俺にもくれよ?
まだ、決まらないのか?
大丈夫か? この部屋に居られる時間に制限があるのではないか?
早くスキルを取得しないとこのまま異世界へ転移をしてしまう。
やはりここは大人として、クラスを仕切るか。




