8話 話し合いは紛糾する
うーん、クラス会議が揉めまくってる。話が同じとこを行ったり来たり。
『ひとり1本、全員に』と『出来るやつに集中』の2択の戦いかな。
僕はどっちでも良い。どっちにしても先頭に出て戦闘するタイプでないのは自分でわかっている。それにゲームとかした事ないし、テレビ(アニメ)も殆ど観ないから、スキルとかどう使うのかもわからない。
もし、スキルを貰う事になったら、こっそり太郎君に教えてもらわないと。
みんなは相変わらずタガセンをチラチラ見ながら正解を導き出そうとしているのかな?
でもタガセンがピクリとも動かないから、答えを出せずにいる。
なんだろ、タガセンを動かすゲームになってない? タガセンを動かす意見を出した者が勝ち、みたいな?
暇だ。
特に意見もないし決まった事に従うつもりだ。
だから、急に指されても意見は言えない……意見はないから、みんなの背に隠れるように後ろへ後ろへとズリズリ移動した。
後ろから見ていると、やっぱりイチクミって凄い人が集まってるってわかる。
クラス会議って朝会(朝のクラス会)とどう違うんだろうと思ってたけど、全然違う。
4組、1-4の時も朝会はあったけど、『何かありますか?』シーン、『なければ、今日も一日頑張るましょう』で終わってた。
それが毎朝の、お決まりの呪文のようになってた。
でも、イチクミの朝会は『クラス会議』って名前のとおり、みんながどんどんと発言してる。
頭の良い子ばかりじゃなくて、運動部もバンバン意見言ってるし、女子も黙っていない。
凄いけどやっぱり僕に『イチクミ』は重い。
僕は口に出す前に頭の中であーだこーだと捏ね回すので、僕の意見が言葉になる時には、みんなの話題はとっくにズレちゃってるんだ。
だから、話さない。それに、みんなのスピードに着いていけなくて、途中から眠くなったりしてくる。今もそうだ。
ヤバイ……眠い。このままでは寝てしまう。だが、流石にそれはまずいって事は僕にもわかる。
よし、眠気を覚ますために別の何かに集中しよ。
何か……何かないかな。
この部屋の真っ白い床を触る。色は白で統一しているけど、ツルツルしているタイルと若干ザラつくタイルがある。同じ白だから見ただけでは違いがわからなかった。
床も壁も天井も白いね。
そう言えばタガセンが見つけてきた宝箱も白かった。アレは木材で出来た箱だけど白く塗ってあったのかな。白い部屋に白い箱が置かれていたら見つけにくいよね。
なるほど。僕はわかってしまった。
この部屋にはまだまだ隠し宝箱があるはず。天井に照明とかが無いから、何かが置かれていても影が出来ない。
照明が無いのに部屋が明るい謎は置いておいて、白い何かがまだ置かれてる可能性は高い。
床に手を滑らせながら、まずはみんなから離れた後ろの方へと這って進む。
さわさわさわ、ゴンっ!
いたた。
壁も白いからうっかりすると激突する。もっとゆっくり進もう。
方向を壁沿いにしてハイハイで進む。
さわさわさわさわ、さわさわさわ、
んん?
床のタイルが…………下がってる?
床のタイルは30センチ四方のが、ツルツルとそうじゃないのが交互に敷かれていた。そのツルツルしないタイルの一枚が、ちょっとだけ、本当にちょっとだけど位置が下がってる。
顔を近づけて確認。今までずっと同じ高さだったのに、タイルの一枚が2〜3ミリだけ低い。
こ、これは! このタイルで躓いて転ばせる罠っ!
ふふふ、僕はそんな罠には引っかからないよ。
でも、何でこのタイルだけ?
指でタイルを押しても何も起こらない。そりゃそうだ、床だもんね、指で押す人はいないよね。
立ち上がり、僕の全体重を乗せてみた。
シュン
ん?
今、なんか音がしなかった?
キョロキョロ周りを見たけど、ただただ真っ白で特に変わったとこはない、ようにしか見えない。
白すぎるんだよ! なんか目が痛い。
壁に捕まって目を擦ろうとしたら、壁が無かった!
うおっ!
さっきまであったはずの壁が無くて、壁についたはずの手が宙をかき、僕はそっちに倒れていった。
痛ってぇ……。
壁だった所の壁が無くなって、新たな部屋が現れた。……部屋、だよね?
これまた真っ白い部屋で、もう、部屋だか壁だかなんなんだかわからない。色、色をください!
ただ、さっき僕らが居た部屋とは別物。だって、みんなが見えない。慌てて這いずって後ろに下がったらみんなが見えた。
進むと見えない。ここに入るとみんなが見えないから、みんなとは別の部屋だよね?
壁一枚分の穴があいた……というか、扉が開いた?
その開いた扉の部分を何度か出たり入ったりしても壁が閉まる事はなかった。ので、探検を続ける。
だって、みんなはまだ話し合いに夢中みたい。
僕が発見したその空間は、さっき居た部屋みたいに広くなかった。
床を触りながら進むと、細長い空間なのがわかった。ええと、廊下みたい?
部屋がある(僕らが居たとこ)、廊下がある。そしたら、その廊下には、出口があるんじゃない? つまり玄関が!
僕はまた床をさわさわしながら進んだ。
あったあった、僅かに沈んだタイル発見!
きっとここに乗っかると玄関が開いて、元の世界に帰れるんじゃない?
そんな事はなかった。玄関はなかった。けど代わりに別の広い部屋を発見した。
そこには、さっきタガセンが発見した木の宝箱が置かれていた。
ひとりでは重くて持ち上がらない。
みんなの部屋へ戻って報告してこよう。
「なんだと!」
「おおお!」
「グッジョブだ、ポチャ次郎!」
クラス会議は中断になり、みんなはなんか大喜びをしている。
もちろん、僕らの部屋へ運んで行った。(運動部の人達が)
その宝箱にも紙の筒が25本入っていた。
「おーう、これでスクロールが50枚か」
「他の部屋にも宝箱があるとはな。俺たちこのゲームで勝てるぜ」
「これがゲームかどうかは別として、ポチャ次郎のおかげだな」
「なぁなぁ、さっきの廊下、あそこ、かなり長い廊下だったわよね。部屋がふたつしかないってある?」
「そう……だな。呉崎の言うとおりだ」
「えっ、まだあるのか?」
「探そうぜ!」
凄いなぁ、イチクミのみんな。会議で意見をバンバン言い合うだけじゃなくて、フットワークも早い。
みんながワッと散っていった。
部屋の中を這いずっている人、廊下を探索に行った人たち。ボォっと立っているのは僕だけだった。
全員(僕除く)での探索の結果、廊下にはこの部屋を入れて12の部屋があったんだって。
でも、全部の部屋に宝箱があったわけではなかった。宝箱があったのはこの部屋も入れて6部屋。半分の確率か。
「スクロールが25枚×6宝箱で、150枚か」
「でもさ、全部スクロールって芸がなくないか?」
「そうだよな。ゲームの宝箱なら金貨とか宝石とか出てくるよね」
「あと、武器とかも出てくる」
「しかし、どの箱もスクロールだけ。しかも同じ種類ってさ、芸がないな。このゲームを作ったやつ」
そう。6つの宝箱の中身は全部同じだったんだ。だから25種類のスクロール×6になった。
「なぁなぁ、同じスキルを重複して取るとどうなるんだろ」
「実験しよう」
「失敗してもいいように要らなそうなスキルで試そうぜ」
一瞬、沈黙になった。
「誰が試す?」
「被ったら体が爆破したりしないよな?」
「え……誰、が、試す?」
2度目の沈黙が訪れた。
そしたら今まで固まっていらタガセンが動き出したんだ。
「そんだけあるなら俺が2枚貰っても問題ないだろ」
-----(田川視点)-----
草凪、グッジョブ!
よくやったぞ。
この先、異世界に転移する展開が待っているはずだ。
スキルスクロールが150枚。
生徒は24人。
どう考えても、それぞれが複数のスキルを取得する以外ない。担任として真っ先に実験体を名乗り出た。
これで俺もスキルを貰える事が確実になった。
一刻も早く、スキルを取得しておこう。




