68話 壊すと問題ある?
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ここ数年いや数十年、増え続ける魔物に対して、どの国も四苦八苦していた。だが原因を探ることに重い腰をあげる国は少なかった。
その中で7国中、3国が目の前の問題を処理するために、動く事を決めた。
だが残りの4国は召喚に参加はしたものの、結局楽な方へと長され、現状維持を唱える。
王族貴族だけを優先して平民は疲弊し減るばかり。
このままでは国は徐々に回らなくなり衰退への道を辿る。
-----(ウッドレジオン国)-----
「今回の召喚は失敗でしたな。まるで使い物にならない。新たに召喚を行うべきです」
「それなのだが、実は先日、ウォット公が『頂』まで出向き儀式を行ったそうなのだが、陣は沈黙であったと」
「なんと。もしやまたしても百年ほど待たないとならないのでしょうか」
「そんなに待てんぞ。我が国が滅ぶわ」
「……まだ召喚人が残っているのが問題なのでは?」
「始末……しては?」
一部の貴族からそんな声があがる。
「新たに召喚をやりなおしましょうぞ。どこぞの国は既におこなったと聞きましたぞ? 今いる召喚人を全員処刑して新たに召喚の儀を行なえばいい」
何故今まで魔物討伐に取り組まなかったのか。それは、魔物を防ぐ聖壁があったからだ。
その壁があったおかげで人は安心し、そして慢心した。200年前から徐々に人々から魔力が減り、逆に魔物は力を蓄え強大になっていった。
気がついた時には壁の外は危険な状態になった。魔物の力は強大に膨れ上がり、人は脆弱になってようやく気がつく。
昔は魔物から守ってくれていた聖壁、今は人が近づけない壁になった。
-----(ブリンクランド国)-----
今日は3つに分かれて活動している。
城之内君達付与スキルのコスタル行きグループ、付与が抜けた日向班と鈴山田班は合同で城塞都市内での魔物討伐(魔石集め)、そして僕ら4人(董明さん、やないさん、太郎くん、僕)は、お城の書庫でまた資料探しをする予定。
「でもさぁ、中央書庫はだいたいチェックしちゃったよね」
「そうなのよねぇ」
「別な書庫に行かない?」
「別なとこ、あるの?」
「だって、『中央』って言うくらいだから中央でない書庫もあるでしょ」
「そうよね」
「流石、董明先生だな」
「じゃあ、書庫の場所を聞くのと許可を取るまでここにいよう」
僕らがクラスの間で寛いでいたら大きな音で扉が開いた。びっくりしていたらタガセンが入ってきてビビった。
「付与チームは? もう出発したか?」
「はい、でも今日は検証なので1時間程で戻ってきます」
『計画書にも書いたよな?』
太郎君が小声で僕の耳元に囁く。
「戻ったら、今日の検証は中止してここで待機するよう伝えておけ。他のチームは?」
「城塞都市に魔力石集めに行ってます。戻りは……夕方だっけ?」
「ううん、お昼に一旦戻るって言ってたわよ。魔法移動って便利よねぇ」
「ではそいつらも戻ったらここで待機しろと伝えろ。お前らもだ。計画について話がある」
そう言ってタガセンは部屋から出ていった。
「何だったんだ?」
「検証中止って事は計画に変更があるのかしらね。もしかするとウッドランドに先に行く事になるかもしれないわね」
「もしくは、やってきた使者と話が拗れて決裂した、とかな」
ええ、それ、大丈夫なの? 戦争になったりしないよね?
「うちらはみんなが戻るまでここにいるしかないかー」
「そうだな。どうする? 暇だな」
「私、気になった事があるのよ」
董明さんがノートを開いた。何か細かくいっぱい書かれている。勉強が出来る人のノートっぽい。
僕らは集まってそれを覗き込む。
凄いなー。色ペンとかも使われてて見やすい。
「200年前の聖女が作った壁の話」
「うん、あちこちにメモで走り書きあったね」
「この世界の人はあまり気にしていないみたいだけど、私達みたいな召喚人は塀に近づくのを注意する文言が結構見られたの」
「あれだろ? あの壁は魔力を吸うみたいだから、魔物は近づかないけど、元からあまり魔力のない人間は近づいた。それでなけなしの魔力を吸い取られたってやつ」
「聖壁ってさー、魔物避けになるけど、実は人間も避けちゃう諸刃の剣よね」
「そうなの。それで長年かけて付近の魔力吸い尽くして、200年経った今はかなり『ただの壁』に近づいてるみたい」
そっか、ただの壁になっちゃったから、最近は魔物が壁を壊して村や町に入り込んじゃうのか。
「聖壁は壊す? そんで普通の壁に建て直す?」
「ポチャ次郎君、小さい魔物ならただの壁でも防げるけどちょっと大きくなると壁くらいなら壊して入り込んでくるのよ」
そっかぁ。それは難しい問題だなぁ。
聖壁で魔物を防ぎたいけど、自分達の力を吸われちゃう、どうしたらいいんだろう。
「そもそも、俺らに聖壁は直せないだろ? 土魔術と何だっけ?」
「土魔術、付与魔術、回復、解呪の4つ。ウッドランドで複数の宝箱をゲットしていたら、可能かもしれない」
「だから、タガセンはウッドランドを優先しようとしているのかな?」
「そうか、もしかしたら俺らよりもっと沢山の宝箱をゲットしたのかも」
うーん、うーん。でもそんなにスキルを欲張らなくてもいいんじゃない?
だって、赤城君達がさ……。
「僕らにも聖壁は直せる……かも。あ、僕には無理だけどっ!」
「ポチャ次郎君、何か良い案があるの?」
「あ、んと、その4つそどういう風に混ぜるのかは知らないけど、ひとりで全部のスキルを持ってなくたっていいじゃない?」
「どういう事だ?」
「だって赤城君達バレー部って合体技とか、凄いの作ってるよね?」
「あっ!」
「あああ!」
「そういう事!」
「そうよ、赤城と馬場、千谷で合体ファイヤを放ってたじゃん、あの当たると爆発する技!」
「おう、そっか、なるほど」
「付与のスキルと土魔術の合体技ね」
「うん。4人で合体魔術とか出来たら、聖壁が出来そう」
「お前天才かっ! ポチャ次郎のくせに!」
太郎君に頭を抱えられてグリグリされた。
「あ、でも、それじゃダメなのよね。聖壁が作れたとしても解決はしないわよ。200年前と同じ事の繰り返しよ」
「でもさ、今回はちゃんとわかってるから大丈夫じゃない?」
「そっか。聖壁の近くに人が住まなければいいのよね」
「うん。聖壁から離れたとこに普通の塀を立てれば、人が安心して暮らせるよ? 二重壁」
「もう、ポチャ次郎君、凄いわ!」
「この件、ちょっと纏めておいて、みんなが戻ったら話そう。それとタガセンの話を聞いた後にタガセンにもね」




