66話 ウッドランドからの使者
僕らのクラス会議がひと段落して部屋へ戻ろうとしていた時、ウッドランドからの使者到着の知らせが来た。
タガセンと高田さんが部屋から出ていった。
「気になるな。ウッドランド、どんな国だろう」
「このままだと眠れないぞ?」
「タガセンが戻ってくるまで待とうぜ」
「ウッドランド国にはどこの学校から来てるのか……」
日向君てば、まるで修学旅行にでも来てる風に言ってる。
「コスタルの芽木中が、春日部だろ?」
「春日部ってどこだっけ?」
「埼玉県」
「うちが千葉県流山市、コスタルが埼玉県春日部市、ディサートが東京都八王子市だっけ」
「全部、関東だな。今回の召喚は関東から集めたのか?」
「いや、たまたまだろ? この世界に日本の情報があるとは思えない」
「ウッドランドって森林の国だっけ。産物とかあるのかな」
「どうだろうな。コスタルは醤油や海産だろ。ウッドランドは森林地帯か。森系の名産ってなんだろう」
「森の種類にもよるな。たとえばカナダとかだとメープルシロップが有名だ。」
「森で想像出来るのって、キノコとか山菜? あと木の実」
「木材か、熊や鹿の剥製」
「それは要らねぇ」
「獣が多そうだけど魔物はどうなんだろうね?」
「獣は魔石が獲れないからねぇ」
「でも肉は獲れる。俺らに必要な肉だ!肉!」
しばらく待ってもタガセンは戻って来なかった。
僕らは男女それぞれの部屋へと戻って寝る事にした。正直ありがたかった。僕はもう森よりも布団が気になってしかたがなかった。
翌日、城庭5周を済ませて朝食を食べ終わり、僕らはクラスの間にいた。
本当は今日から漆原さん達はスキル検証も含めてコスタル方面の商人ロードを飛んでいく計画がスタートのはずだった。
けど昨夜(董明さん達が)作った計画書は、タガセンの机に提出したけど読まれたのかどうか、昨夜も今朝も、まだ誰もタガセンに会っていないんだって。
だから、現在、クラスの間で全員待機中。
やだな……。ウッドランドから来た使者が変な人でないといいんだけど。それとウッドランドに召喚された中学も、良い中学だといいな。……良い中学がどんな中学かはわからないけど。
時間を持て余したみんなが、部屋を掃除したり筋トレを始めたりしていると、やっとタガセンが戻ってきた。
慌てて椅子を戻して全員が着席した。
昨日の用務員、高田さんも一緒だ。
その後ろからは背の高い、欧米人みたいな人が一緒に来た。
金髪のロン毛。
ウッドランドに召喚された中学の先生が来ると、勝手に思い込んでいたけど、まさかの外国人?
ウッドランドには外国の中学が召喚されたの?
と、思ったら違かった。
この金髪の外国人はウッドランド人だった。
召喚は日本の中学だし先生も生徒も日本人らしい。けれど今回この国を訪れたのはウッドランド国の人だった。
ウッドランドからの使者さんとはすでにタガセンが話を色々としたようで、僕らに掻い摘んで話してくれた。
ウッドランド国に召喚されたのは、千葉県野田市立境井戸中学の
2年1組、男子12、女子12、教師の佐々木さん。佐々木さんは担任ではなくて、社会科の先生なんだって。1限目が社会で教室にいた時に召喚が起きたんだって。
生徒を残して隣国へ行く事は出来ず、手紙を預かってきたそうで、そこに書かれていたって。
使者さんから聞いたのは隣国の話。
ウッドランド国は森林が多いだけあって魔物も獣型が多いそう。
そしてなんと魔術特化の国。ウッドランド国民はエルフっぽい見た目だけどエルフではないそう。僕はエルフがよくわからなかったけど、クラスで知っている子は多かった
「エルフって?」
「金髪碧眼、美男美女、耳が長く尖っていて森で生活をしている」
なるほど。でも、使者さんの耳は尖っていない。金髪だけど、へきがんってどんなだろう?
使者さんは色の薄い綺麗な緑色の目。あれをへきがんって言うのかな?
背が凄く高い。細くてスラっとしている男性。
「どっちかな?」
太郎君がボソリと呟く。どっちって性別?
「男の人……じゃない?」
「違う違う、そうじゃなくて、肉を食うエルフか、食わないエルフか」
エルフってお肉を食べない種族いるんだ?
そっか、このお城もビーガンだし、ビーガンエルフがいても不思議じゃないか。
「食べますよ?」
太郎君と僕の話が聞こえちゃったみたいで、エルフさんはなんか高貴な笑顔でこっちを見ていた。
待って、凄い情報をゲット!
ウッドランド国のエルフさん、お肉を食べるって事は、ウッドランド国内にお肉は流通しているんだ!!!
これはもう、ウッドランドにも行くしかない! 僕に縮地と魔法移動スキルがあったら、今すぐウッドランドへ行くのに!
「落ち着け、ポチャ次郎。別にウッドランドまで買い物に行かなくても、この国でも肉は食えるだろ? 毒抜きした肉が少しずつ出回り始めているぞ」
「あ、そっか」
そうだった。お城の食堂ではあまりに出ないからつい忘れてた。
「肉ギルドで毒袋を取った肉を販売しているが、やはり事故は起きているみたいだ」
「ギルドの毒抜き漏れ?」
「いや。ギルドは細心の注意をはらっている。やはり勝手に真似て失敗した一般人だな」
「あぁ、まぁ、どんなに徹底してもやる奴はいるだろうと思ってた」
そのせいでなかなか肉が世間へ回らないんだって。
「あの、あのあの、ウッドランドではどうやってお肉を食べるんですか? あ、どんなお肉ですか?」
肉食エルフさんとの出会いは大切にしないと。聞ける時に聞いておく。
ウッドランドは森林に囲まれた国なので、動物が多いんだって。それも魔物化していない動物。
魔物化していないって事は当然、毒袋もない。どこの部位も普通に食べられるんだって。
動物を獲るのに弓矢を使うという話になった時、あちこちから「やっぱりー」という声が上がった。
みんなの知っているエルフはだいたい弓矢を使う事が多いんだって。そんなにみんなが知っているって、もしかして日本にもエルフって居たの? 千葉県にも居た? まさか、うちの近所にも居たのかな?……流山エルフ。全然知らなかった。
使者さんが部屋から出て行った。高田さんも一緒。タガセンが部屋を出ようとして一瞬戻ってきた。
「計画書は読んだ。検証を進めろ。ただし、無理は禁止、それは絶対に守れ」
タガセンが出て行った後、僕らは計画書を実行に移す。計画書の内容はちゃんと説明されていたけど、内容が多すぎて……。
僕は太郎君にくっついていれば良いと言われた。
かしこまりました!




