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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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64話 コスタル国からの使者

 まず到着したのはコスタル国からの使者だった。その数名の使者の中に、なんと召喚された日本人がいた。

 布をぐるぐる巻きにしたこの世界の服を着ていたのでてっきり現地人だと思っていた。結構なお爺さんだったから。歳とると国籍不明な顔にならない?



 宰相さんはその人を連れて僕らのいる部屋まで来た。



「いやぁ、本当に驚きましたよね」



 その人はちゃんと日本語を喋っていたからやっぱり日本人だ。


 隣の国、コスタルに召喚されたのは、埼玉県春日部市立芽木つくし中学校の2年1組なんだって。

 僕らと同じ1組だ。


 召喚された生徒は男子12人、女子10人、先生がふたり、それと今回ブリンクランドまで来てくれた用務員の高田さんだそうだ。生徒22人と大人が3人。


 コスタル国は沿岸部だと聞いていたけど、陸に近い海に魔物はいないんだって。普通に魚がいるって。


 じゃあなんで召喚を行ったのかというと、平地から押し寄せてくる魔物にどんどんと海側へと追いやられていて困ってるんだって。

 

 あっちは大人が3人もいるので、今回用務員さんがこっちの国まで出向く事が出来た。

 コスタルに残っているのは1組の担任と2組の担任の先生。



「何で隣のクラスの担任が……」



 日向君の疑問はきっとみんなの疑問だと思う。



「自分は廊下を歩いていた所だったんですよ。突然、1組の前の廊下……教室寄りの床が光ったと思ったら、ねぇ」


「そうか。生徒が22人だから近場で召喚されたのかもな」


「25人が第一条件だからな」


「なるほどー」


「どこだっけ? 埼玉の……」


「埼玉のめぎ中だ。関東大会でよく会うな」



 タガセンが嬉しそうだった。えと、表情は特にどう変わったわけではないけど、なんかちょっとホッとしている気がする。

 他にも大人が居て安心したのかな。


 そして喜んだのはタガセンだけではない。イチクミのほぼ全員だ。(僕も)

 だってだって、なんと、用務員さんはコスタル国の魚醤を持って来てくれたのだった!


 その日の食事にさっそく使う。沢山はないからみんなで少しずつ分け合った。

 日本のお醤油とはちょっと違ったけど、満足は出来た。でももっと欲しい。



 食後のクラス会議ではその話題になった。



「もっとほしいな」


「商人ギルドに依頼したとしても、そう簡単には行き来出来ないんだろ? 醤油のせいで誰かが死ぬのはなぁ……」


「待て、考えろ。俺らにはスキルがある」


「あるな。スキル。で? それが?」


「スキルでゴリ押ししながら魔物を倒してコスタルまで行く、とかか?」


「いや。そんな筋肉頼みではない」



 日向君がニヤリと笑った。



「スキル付与の縮地と、スキル魔法移動。」


「縮地と魔法移動? 魔法移動は行った事のない場所へは行けないぞ?」

「縮地も見える範囲に飛ぶだけだよ? コスタルまでは飛べわいわよ」

「それに縮地って本人だけだよな? 例えば馬車ごと縮地で飛ぶとかは無理だぞ?」


「最初だけでいい。コスタル国まで連続縮地で飛び続けてもらう。向こうに着いてしまえば、スキル魔法移動で『コスタル国』をブックマーク出来るはずだ」


「だから日向、縮地は本人だけだから魔法移動持っている人を連れて飛べないってば」


「チッチッチッ」



 日向君が前に突き出した人差し指を振った。



「居るんだよ。縮地……付与と魔法移動、両方持ってる人がね。なっ、漆原さん」



 みんなが一斉に漆原さんを見た。



「ちょ、ちが、いえ、持っているけど! 無理よ。私には無理。そんな知らない所に1人で行くとか、ぜぇったいに無理っ!」



「あー……でもさ、縮地出来る人みんなで行けば怖くないよ?」

「だな。ええと、付与持ってるのって誰だっけ?」



 漆原さん以外で5人が手を上げた。



「剛力、井伊、久遠、竜崎、それと城之内か」


「おう。攻撃は弓がある。いざという時は弓だな」


「いや、出来るだけ戦わずに走り抜けてくれ。元C班だから体力回復や収納ボックスもあるだろ?」


「おう」

「あるわね」

「漆原さん、よろしくね」



 漆原さんが口を開けたまま何も言い返せなくなってた。行きたくない気持ちがわかる。やっぱ怖いよね。でもみんながやる気満々で言い出せない状態。

 行くしかない、んだろうなぁ。



「あぁー。…………わかった。行くわよ」



 偉いよ、漆原さん、尊敬する! ふぁいと!漆原さん!




「つまり、縮地で飛び移動して、コスタルに着いたら漆原の魔法移動でこっちへ戻ると」


「そ。一度ブックマークしてしまえばいつで行けるし、魔法移動は触れていれば何人でも運べる。なので、漆原達が戻ったら今度は魔法移動組を連れてもう一度飛んでもらう」


「なるほど、そしたら6人がコスタルをブックマークできるな」


「やだぁ、気軽に魚醤が買いに行けるわね」

「魚醤だけでなく魚類も買って来れる〜」

「あ、俺、イカと帆立お願いします」

「俺は塩鯖で」

「海岸に魔物はいないんだよな? て事は、海水浴し放題?」



「待った、縮地って一回の使用が60秒じゃなかったか?」


「ああ、そうだが問題ない」


「どういう事だ?」


「攻撃魔術は、魔力が消費されているみたいで使える回数も限られる。魔力が復活するまで魔術は使えない。今は訓練で魔力を上げているみたいだが、魔力が数値化されて見えるわけではないので、各自が何回使えるか覚えてもらっている状態だ。けど、付与魔術は回数制限がないようなんだ」


「でも、60秒ってさ……」


「それは一回の詠唱で連続して使える時間だ。だから縮地をしまくるのに、1分に1回の詠唱になる」


「それは検証済みか?」


「城之内が検証した」


「したぞ。といっても数時間程度だ。それ以上はなんだかんだでやっていない。特に魔力切れで使えなくなったとかはない」


「でも、本番前に試した方が良くない? 途中で動けなくなったらまずいでしょ」


「そうだな。24時間の検証はするか。ただ、もしも動けなくなる事態になったら即こっちへ帰還してくれ」


「あ、そうか。漆原さんは魔法移動もあるから、全員で戻れるな」


「戻る前に忘れずにブックマークをしておけば、次回はそこからスタート出来る」


「あら。じゃあ、毎日食事には戻ってこれるし、夜は部屋で寝れるわね」

「そうね、ありがとう!漆原さん!」

「サンキューな、漆原」

「グッジョブ、漆原」

 


 さっきまで凄く嫌そうにしていた漆原さんが、今はちょっと嬉しそう。良かった。

 そういえばタガセンからストップがかからない。って事はタガセンは漆原さん達がコスタルへ行く事にオッケーなのかな。


 コスタル国は、本郷中を召喚したディサート国みたいに危ない国でないとわかったからかな。

 それとも、タガセンもお醤油が美味しかったから買ってきてほしいのかな。


 タガセンはいつものように無表情で僕らの話を聞いていたけど、用務員さんが違った。

 なんか、もの凄くびっくり顔になっている。




-----(田川視点)-----


 何という事だ。なるほど、縮地と魔法移動でコスタルまで行ける。そして、漆原が一度ブックマークしてくれば、他の魔法移動スキルのやつらも飛ぶ事が可能だ。

 俺にそのスキルがあれば生徒にやらせないのに……。漆原に対してすまないと言う気持ちに若干の嫉妬の気持ちが混ざる。



 馬車や徒歩移動でのコスタル行きなら、断固阻止したが、スキル使用ならそれほど危険なく行ける。

 もちろん注意を怠らないようによくよく言って聞かせるし、危ない時は即帰還だ。


 とりあえずやらせてみる価値はある。商人ルートを絶対に外れないようにも言って聞かせる。

 危ない目に遭ったら即中止だ。


 だが、コスタルと行き来できるようになってくれればありがたい。高田さん(用務員)の話からコスタル国自体はそこまで危険そうではない。それに向こうには教師がふたり居る。

 あちらも、こっちの情報は欲しいだろう。


 そのためにも、まずは行き来のためのブックマークが必須だ。

 新鮮な刺身と醤油……いや、違うぞ? あったらいいなとは思っている。焼き鮭はあるだろうか? もしもあるとしたら米も欲しいな。コスタルの食事情をあとで高田さんに聞いておこう。


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