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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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63話 聖女

「なかなか面白い情報が手に入ったぜ」



 久しぶりに全員が揃ったクラス会議で、城之内君が報告をした。



「宰相さんらから聞いたのは、召喚に関する実質的な情報だな。書物に残っていたのは、過去の話が多かった」



 城之内君は掻い摘んで、でもわかりやすく話していく。



「まずは、召喚に至る理由だな。どの国も最近魔物が急増したのは何故か、その理由が召喚へと繋がるんだが……」



 そう前置きして始まった話。


 200年ほど前の召喚でどこかの国が行った召喚。その中に『聖なる力』に特化した者がいた。

 かの者は『聖女』と呼ばれた。

 聖女一行が各国をまわり国を聖なる力で保護した事で、魔物はある程度国から離れた位置へと追いやる事に成功した。


 それが実は、後に国の『魔力』を著しく落とす原因となったのだが、じわじわと減っていった事で気づく者はいなかった。

 同時に人間の持つ魔力も最低限となった。


 やがて聖なる保護の領域が少しずつ減退していき、国の領土へ魔物が現れるようになる。

 100年ほど前の召喚では聖女を招く条件付けをした国が多かった。しかしそれは失敗に終わった。



 そこで数人の手があがった。



「聖女って」

「人間全員に魔力があったの?」

「100年前の召喚……」


「待て待て、質問は全部話してからにしてくれ。まだ続きがある」



 城之内君は話を続けた。なんだろ、凄くドキドキする。怖い映画を観ているみたい。そう言えば城之内君って演劇部だっけ。なんか話し方が、本当にその時その場所にいるみたいなんだ。



 城之内君の話は続く。


 200年以上昔のこの世界では、魔力を持たない人間はいなかった。

 現在では貴族に魔力持ちは居ても平民には少ない。

 だが当初は平民にもそこそこ魔力はあり、魔力を生活に役立てていた。


 何故、人々から魔力は消えていったのか。人々から魔力を失わせたのは何なのか。答えはこの200年にある。



 200年前召喚された聖女により、国や村は『聖壁』で守られるようになった。


 『聖壁』は魔物を立ち入らせないというメリットがあったが、実は誰も知らなかったデメリットもあった。

 それは、壁の聖なる力を永続させるため、聖壁は地から魔力を吸い続けた。


 魔物が壁に近寄らないのも体内の魔力を吸われてしまうからであった。

 それは人も同じだ。聖壁は人間からも少なからず魔力を吸い続ける事となった。


 王族や貴族は聖壁から離れた国の中央に居たので、現在でも多少魔力は残った。

 が、平民からは根こそぎ吸い取られた。聖壁は国の衰退のキッカケになってしまった。



「さて、100年近く経ち聖壁も力を失いつつあった。当然、魔物は国の領土へと近づいてくる。……どうしたと、思う?」



 どうしたの? 何をしたの?

 日向君が手を挙げたけど城之内君は首を横に振った。えっ?日向君、まだ何も言ってないよね。言わなくて『違う』ってわかったの?



「すまん、続けてくれ」



 あ、まだ、言うなって事か。

 城之内君はみんなをゆっくり見回してから話しだす。



「今から100年ほど前にも召喚が行われた。参加した国は5ヶ国。そして5ヶ国全てが条件に『聖女』をあげたんだ。だが失敗に終わった」


「そう。聖女は来なかったの」



 董明さんが城之内君を見ながら話に加わった。



「そもそも『聖女』に該当する者が居なかったのか、それとも聖女として召喚されたが力が著しく弱かったのか。そこが書かれた書物は見つからなかった。が、その5ヶ国が滅んだ、と言う書物は見つかった」



 5ヶ国が滅んだ?

 100年前に聖女を召喚した国が滅んだ?



「一旦ここで、質問を受け付けるぞ。あ、ちなみに今の話は全て書物に載ってたわけではないんだ。あちこちに記載されてたものを繋ぎ合わせて、推理と想像を混ぜた」


「ちょっと整理させてくれ。ええと、200年前の召喚で聖女が来た」


「ねぇ、200年前の召喚では聖女が来たのに100年前は何で失敗したの?」



「それね、かなり想像が入るけどいいかな?」



 やないさんが立ち上がって城之内君と董明さんの横に並んだ。格好いいな。さすが『保健室の魔女』と呼ばれていただけある。あ、『保健室の魔女』は漆原さんから聞いた。やないさんのクラスの女子はそう呼んでいたんだって。いいなぁ、かっこいいなぁ。



「200年前の召喚では別に条件を『聖女』にしたわけではないみたいなのよ。その時に10人が召喚されたってあった」


「25人ジャストでなくてもいいのか」

「何で10人……」


「その時の国が何で10人を召喚したかまでは不明。それと条件も不明。でも面白い記述が残ってた。10人のうちのひとりが『スキルを独り占めした』って。そのスキルを組み合わせて『聖壁』が作れたみたい」


「えっ! じゃあ、俺たちも聖女が作れるのかっ!」


「ちょっと、井伊、その言い方!」

「井伊ぃ、聖女を造るとかエロいぞw」


「ちがっ、違う! そう言う意味じゃ」



「はーい、聞いてくださーい。エロい皆さんもそうでない皆さんも! 残念ながらイチクミでは聖女は作れません」



 あ、赤城君達数人が地面に手をついて項垂れている。赤城君、聖女になりたかったのかな? あれ?男子の聖女って何て言うんだろう?聖男???



「イチクミが無理ってわかってるって事は、聖女のスキルの組み合わせはわかってるのか!」


「そうなのー。残ってた」



 その言葉で項垂れていた赤城君達が顔を上げたら目が爛々としていた。



「土魔術、付与魔術、回復、解呪、その4つ。これらを複雑に組み合わせた魔術で聖壁を作れるみたい」


「ぐわあああああ、惜しい! 元C班に土魔術があれば!」

「そうだな、井伊! 俺たち聖女になれたのに!」

「剛力ぃぃぃ」



 井伊君と剛力君が抱き合っている。聖女になりたかった男子、多いな。



「井伊と剛力は置いておいて、200年前も居たんだ、独り占め。本郷中のジャイアントと似たやつ。しかも、女子!!!」


「まぁ、どの時代にもいろんなやつが居るよ。って、今から200年前って日本は何時代だよ」


「江戸時代か?」

「うっわぁ、江戸の女、怖ええ」


「んー、確証は無いんだが、ここと俺らの世界では時間が並行しているとは思えないんだよな」


「理由は?」


「書物に書き込まれた文字」


「うん、現代の日本語だったよね」


「少なくとも江戸時代っぽくはなかった。語尾に『w』とか、絶対ネットがある時代よね。江戸時代から草生えていたとは思えない」



 え? 江戸時代は草が生えてなかったの???




「でもさぁ、今回の召喚で聖女が居なくて良かったんじゃないか。だって聖壁が造れちゃうと魔力を吸われるんだろ?」


「なぁ、他の国……、聖女居ないよな?」


「わからん。居たらまずいなぁ」


「本郷中のジャイアント、アイツ聖女スキル取ったんじゃないか?」


「それは大丈夫だ。『土魔術』は今回逃げて来たやつが取ってただろ」


「そうだった」



「ねえ、100年前に聖女召喚に失敗した5ヶ国は何で滅んだの?」


「それねぇ、召喚条件に『聖女』ってしたらしい。宗教とか女子大生が召喚されてきたから、戦いには向いてなかったみた」


「女子大生……何でだ?」


「学校名ね、◯◯聖女学院とか。第二第三条件を何にしたのかまでは書かれていないけど、ごく普通のお嬢さま達が来ちゃったみたい」


「200年前の時みたいにスキルを独り占めするやつは居なかったんだ」


「もしくはいたとしても、聖壁を作るスキルにはならなかったのか」


「つまり、戦いに無縁のお嬢さま達が魔物との戦いの最前列に出された、と」


「多分だけどねぇ。早い段階で5ヶ国の召喚人が亡くなったという記述もあった。死因は書かれてなかった。逃げていて欲しいわぁ」



「今回の召喚条件が『チュウニ』で良かったな」

「いや、いいのか?それ」


「待って待って、そこまでわかっているなら、今回の召喚ももっと有利な条件があげられたんじゃないの?」



「それは、無理だった。何故なら俺らが書庫で見つけた今回の記述はどれも日本語で書かれていたからだ」


「そうね、この世界の人には読めないわね」


「何となく隠されるように置かれていた薄い書物だったしな。メモ書きに近い」


「ところで今回の『チュウニ』だが、もっと昔の召喚で『チュウニ』を条件にあげた国があった。かなり昔に活躍した召喚人の条件で『チュウニ』というのが残っていたんだ。ただし、国に伝わったのは書物で残されていたのではなく口伝えだそうだ」

 

「そうなのよ、どのくらい昔かも不明。どこかの国を訪れた商人から聞いた言葉が残されて伝わった村があるって」

 

「それで今回『チュウニ』を条件にいれる協定になったって、それは書物じゃなくて宰相さんからの情報」


「活躍した異世界人って事は、『チュウニ』も中2じゃなくて厨二だろうな。厨二が暴れまくったか」


「そうねぇ」



「わかったのはここまでだ」



 チュウニがチュウニじゃなくてチュウニ。全くわからない。みんなの会話が宇宙語に聞こえる。




「そういえば、コスタルとウッドランドが来るのって今日あたりじゃなかったか?」



「タガセンが朝から呼ばれてる」


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