62話 書庫
僕たち城之内班は、今日はスキルの訓練はせずにお城の書庫で探し物をする事になった。
日向班と鈴山田班は、城塞都市の内側で魔物討伐をするんだって。
-----(その頃の鈴山田班)-----
「倒すのに時間がかかってこっちがやられたりするのは本末転倒だ! 小さい魔物をどんどん倒すぞ。小さくても帰還に使えるかもしれないからとにかく獲ってくぞ」
「だな。バリバリ狩りまくって量を集めようぜ」
「そうよ。ゲームじゃないんだからレベルアップしたり、ボスを攻略する必要はないんだから」
「なぁ、レベルアップってほんとに無いんかな」
「無いじゃない? だってどこにも出てないし」
「ステータス画面とか無いし、俺の頭の上にレベルとか出てるか?」
「出てないけどさ、うーん」
「どした? 赤城、言いたい事はズバっと言え。お前らしくないぞ」
「だな。うん、俺さ、レベルアップしてる気がする」
「はぁ?」
「はいはい。そりゃ、魔術が使える奴らは強くなった気はするよな。魔術スキル持ちが羨ましいよ」
江崎が呆れたように赤城をいなした。
「赤城の言う事、わかる気がする」
「久遠……」
「私、ダンスやってるじゃない? 学校のダンス部だけじゃなくてダンスは2、3歳の頃がやってるの。中学に入ってちょっと行き詰まってたって言うか、小学校の時は軽々出来た技も背が伸びたり、その、邪魔な肉がついてくると思うよう動けなかったりしてたんだけど、この世界に来て変わってきた」
「そりゃあ、スキルがあるからだろ?」
「そうなんだけど、赤城のように魔術が使えるわけじゃないし、江崎のように剣や体術を使うわけじゃない。私は付与系だし武器は弓オンリー。だけど、集中力とか動体視力とか以前とは段違いなのよ。弓を構える速さも、矢をつがえるスピードも、どんどんあがってる。ダンスしてたせいかと思ったけど、実はちょっとこっそり踊ってみたらありえないくらいダンスが上達しちゃってた。今ならダンス甲子園に出れる。ってごめん、話が逸れちゃった。ねぇ、ファリちゃん、気づいてる? 剣振る速さがどんどんアップしてるよ?」
「え……」
「赤城達も魔法の威力が上がってるよね? これって、レベルが上がってるって事じゃない?」
「どこかに表示されなくても、俺たち、訓練や実践でレベルアップしてるって事か」
「たぶんね。だけど、だからって強い敵にむかえって言ってるわけじゃなくて、あえて小物だけを倒さなくても、目の前の敵をビシバシ倒していこうよ」
「そうだな。よっぽど強いやつが出たら、テレポートで撤退すればいいか」
「そうよ。だって鈴山田班にはテレポート使えるのが3人もいるんだから。千谷、ファリちゃん、リカちゃん」
「だな。ゴリゴリ行こうぜ!」
-----(城之内班)-----
僕らはお城の図書室へ来ている。
結構広い。それに奥に深い。
立派そうな硬い表紙の本がズラっと並んでいる。けど、日本の本屋さんとか学校の図書室みたいに薄い紙の本ではない。
分厚くて重くて、でもページ数はそんなになさそう。
そんで迂闊に触ると壊れそうで、本棚から取り出したくない。
僕らの世界は本棚に並んだ本の背表紙にタイトルが書かれているので、何の本なのかだいたいの想像は出来る。
でもこっちの本は背のところにタイトルが無いんだ。抜き出して本の表紙を見ても、そこにも書かれてなかったりする。
これじゃ、読みたい本を探すのは無理じゃない? この世界の人ってあまり本を読まないのかな。
てか、大きいし重いし、気軽に読む感じじゃないな。
僕らは今回、ちゃんと偉い人のオッケーをもらって中央書庫と言う場所に入らせて貰った。
城之内君も董明さんも漆原さんも、あのやないさんも、めちゃくちゃ楽しそうに書庫内を徘徊している。勉強好きな人達にはこれって楽しい作業なのかな。
…………僕、眠くなりそう。
あ、僕達が今、取り組んでいる作業は、昔の召喚の事を載せた資料がないか探しているのだ。
「召喚の情報が少なすぎるわね」
「国が隠している事も考えられるが、どちらかというと元から知られていない、知っている人が少ないって感じがするな」
「そうなのよね。頻繁に行われるわけでないって事もあるけど、でも過去の資料はあると思うの」
そんなわけで城之内君と董明さんが偉い人に話してこの書庫の使用許可を貰った。
「ポチャコンビ、くれぐれも、書物を壊すなよ」
僕と太郎君は城之内君から何度も釘をさされた。
わかってる。でも壊すなと言われると壊しそうで怖いな。
だってさ、背表紙に何も書かれていないってことは、本を棚から取り出さないとならないわけで、その本が重いしボロいしで、マジ壊しそうなんですが。どうしよぉぉ、無理ぃぃ。
「俺はマンガを探すぜ! この世界でも過去にマンガを描いた人のひとりやふたりはいるはず!」
太郎君はそう言ってどこかへ行ってしまった。
戻って来ない。
もしかして見つけたマンガを読んでいるのかな。
それにしてもこの部屋にある全ての本を一冊ずつ開いて、召喚に関係する本を探すの、無理じゃない? 何度も言うけど無理じゃない?
僕はすでに諦めたというか飽きていた。
触って壊すのも嫌だし……、そうだ! 本の背表紙の色とか模様を楽しもう。
うーん? 楽しくないな。
向こう側からやないさんが棚の本を眺めながら歩いてきた。
「ポチャ次郎、こっちの棚は私が見てるから裏へ行って」
「うー。見てるって見てるだけ? 背表紙に何も書かれていないよ?」
「バッカねぇ。私達には鑑定があるじゃない。鑑定スキルを使うのよ」
「あ……、うん」
「鑑定、召喚関係ってやれば、表示されるはず」
「あ、なるほど!」
「見つけたら、ほら奥に城之内と漆原がいるから、その本を渡して。中身は城之内達が確認するから」
「なるほどぉ。よかったー。僕が中を読むと一冊で日が暮れちゃうから。城之内君が確認してくれるのかぁ」
僕が鑑定スキルを使用しながら棚を渡り歩いていると、太郎君に出会った。
「鑑定、マンガ! 鑑定、マンガ!」
ちょっと、太郎君、目的が違っちゃってない? それだとマンガを探してるよ?
しかたないので、太郎君の後ろを僕が鑑定して歩いた。
鑑定召喚、鑑定召喚、鑑定召喚、鑑定漫画、かんて……たまに、太郎君に釣られた。
「鑑定、召喚、かん、あ、ヒット」
壊さないようにそっと本を棚から抜き出す。
分厚く立派そうな本と本の間に、意外と薄い、数ページを紐で閉じた物が出てきた。
二番目に発見した物も薄かった。
城之内君のところに持っていくと、そこに置かれていたのはやはり薄い物が多かった。
「漆原ぁ、これもお願い」
やないさんが手に持っていた本を漆原さんに渡していた。
「ゴージャスな分厚い本に紛れて、召喚系は薄い本ばかりね。恐らく、作ったのは日本人。しかも同人誌関係が趣味の……」
「たまたまだろw」
城之内君が苦笑いしていた。同人誌関係って薄いの?
「あながち間違いとは言えないわよ。召喚関係の書物は日本語で書かれているのが多いのよ、ほら」
漆原さんがやないさんから受け取った本を開いて見せた。
確かに日本語だ。
僕らはこの世界へ召喚されてきて、この国の言葉も理解できるし、文字もわかる。そう、わかるんだ。
でも、そこに書かれていたのは、『この国の言葉でそれが理解できる』ではなく、あきらかに日本語で書かれていた。
「こっちも割とそうだな。全てじゃない。けど、この国の言葉で書かれていても、ところどころ日本語訳が付いている」
城之内君が見せてくれたのは、この世界の言葉が綺麗に日本語に変換された文章、それはきっと召喚のチート能力で変換されて読めるのだろう。
ただそれとは別に、欄外に読みづらい文字の日本語があった。汚い字で逆に読みづらい。でも、日本語だ。
なんだかんだでそれなりの数の召喚について書かれた書物(やないさんは同人誌と言いはった)が出てきた。
だいたいが薄くて文字も大きく、内容的には少ないって城之内君が言ってた。
「けど、思った以上に情報はゲット出来たぜ」
僕らは3日、書庫に通った。
他の図書施設にも行くべきか、その話し合いは、戦闘班が戻ってからになった。




