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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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61話 他国

 -----(田川視点)-----


 俺は宰相と話し合いを重ねていた。

 全く、自分らのクラスを無事に連れ帰るだけでも難儀しているのに、他校の生徒か……。


 とにかくまずは情報だ。というわけで宰相にあれこれと質問をするが、返ってくる答えはどれも曖昧だ。

 『知らない』というのもおそらく9割がた本当なのだろう。この世界はあまりに国同士の交流がないのだ。


 この国、ブリンクランド自体は閉鎖的ではないようなのだが、周りの国全てがそうではない。

 あまり深くに入り込むと国同士の戦争に発展してしまった事も、過去あったそうだ。


 そして、何よりも、国と国の外の地帯がかなり危険な土地であるのが国交が発展しない大きな理由だと言っていた。

 そう。魔物のせいで気軽に訪ねる事は難しいのだ。


 だが、今回ディサート国から逃げてきた本郷中の生徒の件は捨てておけない。

 見なかった振りで緑中だけ帰還するわけにはいかないだろう。


 蒼井達本郷中が召喚されたディサート国は、正直、良い国とは思えない。

 あちらに残された生徒をどうすべきか……。


 下手に口を出すと国家間の戦争に発展するかもしれないと、宰相は危惧している。だが、元からのディサート人ならともかく、蒼井達は日本人だ。日本へ帰る権利がある。


 俺は緑中の教師だ。まず優先すべきは自分の生徒24人の無事な帰国。

 だが、ひとりの大人として、他校の生徒を置き去りにして帰る事が出来るのか……。



 頭の中で同じ問答を何度も繰り返す。答えが出ない。

 それでも、一歩でも前に進まねば。



 今回の召喚に参加した国を聞き出した。


 アンブリア国、フォーレスタ国、ウッダレジオン国、ディサート国、ウッドランド国、コスタル国、そしてここブリンクランド国。


 召喚に参加したのは7ヶ国だが、どこの国がどこの中学を召喚したかまでは不明だ。果たして中学なのかもわからないな。



「我が国を挟む、コスタルとウッドランドとは多少の国交がありあす。とは言えそこまで密な関係ではありません。コスタルからは海の物を、ウッドランドからは森の物を買い入れています。我が国の領土は森林部分もありますが、7割が平原です。森でしか手に入らない物もあります。逆に、国の全土が森林のウッドランドは平原で採れる物を欲していますし、海に面したコスタルも同様です」



「7ヶ国が今回の召喚に参加したと言う事は、その7ヶ国どの国も魔物の増加に苦しんでいると言う事ですか?」


「土地は違えど、森には森の、海には海の、そして平原には平原の魔物が出ます。そしてそれが増加を辿る一方でした。実を申し上げますと、最初は我らブリンクランド、コスタル、ウッドランドの3国で召喚を行う予定でした。が、どこから漏れたものか……密偵はどこにでも潜んでいるのでしょう。今まで交流のなかった4ヶ国も召喚を行う予定であると、境の頂の塔で鉢合わせたのです。結果7ヶ国で同時に召喚の儀を執り行うことになりました」


「国交が無いのによく7ヶ国が同時に行う事になりましたね」


「実は……召喚を行う境の頂の塔は、一度使用すると次に入れるまで数百年かかるという言い伝えもありまして……。実際には、使用しても塔に入れなくなる事はありませんでした。が、恐らく他の4国はこちらの情報を掴み、慌てて塔へときたのでしょう」


「入る事は出来た、と?」


「ええ、ですが、召喚は不可能でした。同時に出来て良かったですよ。もしもどこかの国が先にやっていたら……」


「それは、試されたのですか?」


「ええ、いや、うちの国ではありませんが、アンブリアが連続で召喚を行おうとしていましたが、全く反応がないと言ってました」



 なるほど。7ヶ国で『25人』の協定は結んだが、召喚を繰り返して行わないとは言っていないということか。

 アンブリアは25人を何度も召喚しようとしたのか。もしかすると他の国も。



 宰相が棚から取り出した大きな布をテーブルの上に広げた。それはこの世界の地図であった。



「ここが、我がブリンクランド国」



 指さした場所が大地だとしたら、この世界の大半を海が占めているのか、それともいまだ未開のままなのか。

 もしくは地図自体が未完なのかもしれない。



「ずいぶんと大陸の端っこなんですね」


「ええ、我が国の上にウッドランド国、ここらが森林地帯になりますね。そして下、沿岸部がコスタル国。コスタルは沿岸部とその一帯の島々を総じて国となっております」


「この向こうは? 全て海、でしょうか?」


「舟技術に長けているコスタル国でさえ、この先の海へは行けずにいるようです」


「それは海の魔物のせいで?」


「どうなんでしょうね。大陸から離れるほどに海は荒れ狂い舟では難しいようですね。それに食糧もそこまで保たない」


「未踏の血、他の島や国があるのかもしれない……」


「そうですね。そもそも、我らが住む大陸内でもお互いがほとんど交流がないのです。海の向こうまではどうにも……」


「こちら側はどうです?」



 俺は地図の上、木の絵が描かれている辺りを指さした。



「森林は海同様、中々に足を踏み入れ難い地です。ウッドランド国のさらに北方の森にフォーレスタ国とウッダレジオン国があるのですが、彼らは自国の場所を決して明らかにしない。ウッドランド国は知っているのかも知れませんが、必要以上に関わりたくないという感じでしたね。で、平原のこちら側に乾いた地があり、砂漠の中央にディサート国があります。その砂漠の向こう側、山岳地帯にアンブリア国」



 なるほど。コスタル、ブリンクランド、ウッドランドの密集した三国は多少の行き来はあると。

 それ以外、森林地帯、砂漠地帯、山岳地帯とは全く交流がない。


 しかし、召喚の儀が行われる情報はもれていた。他国の密偵はブリンクランド国内にいるのだろう。だが逆にこの国の密偵もそれぞれ国へと送り込んでいるのではないのか?


 いや、送り込んでいたら、他の国の位置ははっきりと知れているか。となると一方的にスパイされているわけか。

 俺の考えがわかったのか、宰相どのは苦々しく笑った。



「他の国に召喚された学校の情報を得る事が出来なくて申し訳ない。我が国も過去に何度か森林や山岳に人を送ったのですが、ひとりも戻ってはきませんでした。今回の召喚の儀もあちら側からの接触でしたから……」


「そうですか……」



 地図を見る。

 本郷中の生徒3名、実際に向こうを出た時は5名か。


 よくこの距離を、しかも魔物がいるなか、ここまで辿り着いたもんだ。聞けばスキル持ちは2名だったとか。


 しかも本郷中は25名全員が生徒。大人はひとりもいなかったと。

 25人のうち、早々に5名が殺された。残り20人中、脱走が5人、うち2名は死亡か。という事はあちらにはまだ15人が残っているのか。


 召喚されたクラスが男子15、女子10だったそうだ。死んだ者と逃げて来た者を引くと、向こうには男子7人、女子8人か。


 どう考えても俺ひとりではどうに出来んな。

 自分の生徒を投げ出すわけにはいかない。何がなんでも1人も欠けずに元の世界へ戻すぞ。

 いくらうちの生徒が優秀でもアイツらを投げ出して他校の生徒を助けに行くわけにはいかない。



「あの、ウッドランドとコスタルへは手紙を送ってあります。3国なら『境の頂』まで出向かなくても我が国で会合を開けます」


「そう言えば、境の頂の塔というのはどこら辺にあるのですか?」



「境の頂は……ここ」



 宰相が地図の一点を指した。草原、森林、山岳の中間地点辺りだ。



「そこに塔が……」


「はい。召喚の儀は遺跡の塔で行いますが、実際に召喚される場所は各国の領土内になります。どういう仕組みなのかは知る者はおりません。神の御わざでしょうか」


「コスタルとウッドランドは近日中にも、この国まで来ていただけるのでしょうか?」


「はい、明日、明後日には両国とも到着されると思います」



 助かる。両国から誰が来るのかはわからないが、少なくとも召喚した学校名はわかるかもしれない。出来れば召喚した中学の先生が来てくれるのが望ましい。大人で今後の話をしたい。

 だがまぁ、それは無理だろう。あちらも生徒だけを残す事は出来ないだろう。


 自分達の学校の生徒の事、それからディサートの、本郷中の事も話したい。


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