59話 ディサート国
「蒼井にリジェネをかけてたら蒼井が語り出したんだ。こっちに来た時の話だな。俺らも通っただろ? あの白い部屋」
「宝箱の部屋だな」
「本郷中、荒れてるな」
「だな。新堂って何だよ、そんな奴がこっちに来てるのか。会いたくねぇ」
「ディサート国だっけ。砂漠地方とか言ってたよな」
「結局、スクロールはどうなったの? ジャイアント新堂が独り占めしたの?」
「いや、幾つかはどさくさ紛れに誰かが開いたらしい」
「そのひとりが木田君か。土魔術」
「そうみたいだ」
「蒼井の話に出てきたスクロールのスキルだが、うちと変わらないな。どこの国も同じ種類のスキルスクロールなのか?」
「あ、でもうちと違うのは宝箱をまだ一個しか開けていない。しかも全部のスクロールを開いてもいない」
「そう。おそらくだが、最初のスクロールを開くとこの世界への入口のドアが開く。俺らの時もさ、先頭がドアを潜った瞬間引っ張られたよな」
「引っ張られた。スクラム組んでたからドアに詰まるかと思ったけど、何かグニョーンと自分の身体が伸びた気がした」
「伸びてた。俺、後ろの方に居たけど、井伊が変な形になったところを目撃した」
「え、俺? 俺どんな形?(泣)」
「左上から右下の伸びてた。ゴム人間みたいに」
「船橋も似た感じだったぜ。きっと俺もだな」
「元の形に戻れてよかったー」
「伸びきったTシャツ人間なんて笑えないよな」
井伊君と船橋君が抱き合って喜んでいた。
僕、あの時、みんなの真ん中くらいだったけど、僕も伸びたのかな。出来れば縦に伸びてそのままであってほしかったな。
「でだな、蒼井から聞いた本郷中の話から考えると、あの白い部屋は宝箱からスキルスクロールが貰える。そして誰かがスクロールを開くとこの世界へ通じる扉が開く。さらにひとりでも扉に入ると皆が引っ張られてこの世界、召喚した国へと移動するみたいだな」
「スクロールはどうなった? まだ開けてない筒を持ってたやつもいたんだよな?」
「ボス男……しんどうだっけ? そいつは何のスキルを習得したの?」
「待て待て。質問はひとりずつだ。俺らはあの部屋でスクロールを全て習得したが、こっちの世界に持ってくる事も可能だったのか」
「こっちで決めてもよかったね。うちらはあそこで情報もなく想像で分け合っちゃったから、ちょっと早まった?」
「いや、それで正解。蒼井の話だと、この世界に召喚された時に持ってたはずのスクロールは消えていたってさ」
「つまり、スキルを習得出来るのはあの部屋のみ、だったのか」
「うわっ、俺ら、運が良かったな。あそこで全部開いた」
「それからジャイアント新堂が習得したスキルは不明だそうだ。水魔術があるのは確かだが、何を取ったか子分達にも秘密にしていたらしい」
「蒼井と木田と瀬戸の3人は何でディサート国から抜け出したんだ?」
「それな。かなり酷い国みたいだ。こことは大違い」
「そうなのか?」
「ディサートに召喚された本郷中の2年3組、男子15、女子10。蒼井達が逃げ出す前に、その……5人処刑されたって」
みんなが黙った。
ピシっと張り付いた空気。
処刑って聞こえた。処刑ってあの……処刑かな。
「な……んで? 処刑って何で」
「兵士に歯向かったとか、スキルも持ってなかったから見せしめに……って」
「そんな……」
「それにスキルの無い生徒や女子の扱いが酷かったらしい。隙を見て蒼井、木田、瀬戸、あとふたりの5人で抜け出したそうだ。砂漠地帯だから逃げてもすぐに野垂れ死ぬだろうと思ったのか追っ手もこなかったって。蒼井達逃亡グループに生産(養殖•養蜂•飼育)を取った女子がいて、大きなトカゲをテイム出来たらしい」
「やっぱり。飼育ってテイムも可能なんだ」
「大トカゲ……。女子が……すげえな」
「3メートルくらいの大トカゲで、背中に乗って砂漠を移動したらしい」
「へえ、カッコイイな。うちのテイマーは誰だっけ?」
「タガセンがダブルスキラー、俺と董明、鈴山田、梁井だ」
「大きなトカゲ……テイム出来るかしら」
「うわぁ、無理っぽいぃ」
女子3人は尻込みしていた。
「てか、残りふたりはどこ行った? そいつらも城下に隠れてるのか?」
「あー……それがな。砂地での移動はトカゲが便利だったそうなんだが、土と言うか森林地帯になってトカゲが進まなくなり、森を徒歩で移動している時に熊みたいなデカイ獣に襲われたって。その熊はテイム失敗して、その子は、その……エンド。もうひとりもそこでエンド。で、蒼井、木戸、瀬戸の3人でとにかく逃げるように森を移動したらしい。木戸の土魔法が砂漠地帯では使えなかったらしいんだが、森では役に立ったと」
ふたり、森で、亡くなったんだ。
「何でもテイム出来るわけじゃないのね……」
「怖いわね」
「そんなこんなで蒼井達は憔悴しきってる。リジェネはかけたし、一応数日間は毎日かけるようにタガセンからも言われた」
その日の夕食は珍しくタガセンが居た。食べ終わった僕らは『クラスの間』に召集されてタガセンから本郷中の話を聞いた。
城之内君達が仕入れてきた話とほぼ同じだった。
「いいか。個人行動は絶対にするな。この世界は日本みたいに甘くない。漫画やアニメみたいだ浮かれていると痛い目を見る」
いつも怖い顔のタガセンが、本当に怖い、般若のお面みたいな顔で僕らを見渡した。
大きな声で怒鳴っているわけではないのに、ビリビリと響くような声だった。
「痛い目ですめばいいが、2度と目が開かない事にもなる。油断するな。いつでも深く考えて動け。お前たちは全員、ひとり残さず24名、五体満足のまま日本へ帰す、帰るぞ。いいな、ひとりの油断で誰かが欠ける事になる、なんて事はないように、以上」
タガセンがクラスの間を出て行った。けど、少しの間、誰も喋り出さなかった。
その後、男女別の寝室へと戻った。
その夜はいつもよりくっついて寝た。きついきつい、重い、重いよ。両脇から抱きつかれるのはいつもの事だけど、上から僕の頭抱えて寝てるの誰? 横一列に寝ているはずなのに、右足と左足は別々誰か掴まれている。お腹の肉を摘まないでえ。




