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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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57話 釣り

 そんなこんなで、その日は日向班も鈴山田班も戻ってこなかったので、僕ら6人だけの夕飯となった。

 タガセンも忙しいようで「先に食っとけ」と言ったまま戻って来なかった。


 班ごとに行動しようってクラス会議決まったけど、やはりみんなが居ないと寂しいし不安だ。



「ねぇ、今夜はさ、クラスの間に集まって寝ない? 女子3人だけだとちょっと怖い」


「賛成。3人だけって不安よね」


「だな。クラスの間に余ったベッドがいくつか置いてあっただろ?そこで寝てもいいし。とにかく同じ部屋に居ようぜ」


「クラスの間ってトイレと洗面もあるからちょうどいいわね」



 タガセンのベッド以外に、余って隅に置かれていたベッドがふたつあった。城之内君と太郎君と3人でベッドを横から押してふたつをくっつけた。



「女子はここに寝なよ。俺らは床に寝るから」


「そうだね。男子部屋からシーツとか枕を持ってこよう」



 僕らはしばらくはソファーで喋っていた。



「気になるね」


「うん、気になる」


「蒼井君の事?」


「あー、それもあるけど、どっちかってえと本郷中の奴らの事」


「それとディサート国もな。あっちじゃ召喚されてきた人間を大事にしないのか。なんであんなにぼろぼろで逃げて来たのか」


「蒼井氏に聞けば早いんだろうけど、タガセンが私達に合わせてくれるかな。タガセンはきっともう聞き出しているわよね」


「僕らも他の国に召喚されてたらあーなってたのかな」


「俺らブリンクランドで良かったな。とりあえず大事にはしてもらえてるもんな。食事も3食出るし、寝る場所もある。ある程度の自由も与えられている」


「うーん、自由はどうかな。監視されてる感はあるな」


「でも、マルティナさんやリリンさんは良い人よ」


「マルティナ……」



 誰だろ?



「ポチャ次郎君、私達のお世話をよくしてくれているメイドさんよ。長い髪をてっぺんで縛っているのがマルティナさん、癖っ毛のショートカットがリリンさん」



 そうなんだ。個人的にメイドさんと話した事ないし、僕、名前も聞いた事なかった。



「リリンさんは通いで街で家族と暮らしているって。マルティナさんは城内に住み込みですって」


「なぁなぁ、小腹空かないか?」



 えっ、さっき夕飯食べたばかりだよ? 最近みんなの食欲が凄くない? その割に太らないのズルい。



「そうねぇ。フルーツでも持って来てもらう? マルティナさんに」


「そうだな。お願いしよう」


「ついでに、蒼井氏がどこに確保されているかも聞いてみようぜ」


「僕、お腹いっぱいなんだけど……」


「バカだな、ポチャ次郎。みんな腹はいっぱいだよ。何のために亜空間倉庫や収納ボックスがあると思うんだ」


「何のためって……荷物をしまうため?」


「ポチャ次郎くーん、残念」


「荷物もしまえるけどね。私達城之内班は亜空間持ちが4人と収納ボックス持ちが2人。全員大丈夫ね」



 何が大丈夫なの?



「マジでポチャ次郎、気が付かなかったのか」


「え……」


「倉庫や収納は荷物だけでなく、食い物もしまえるんだ」


「それは知ってるよ?」


「しかも腐らない」


「それだけでなく、温かいものは温かいまま、スープとかしまうと作りたてのまま取り出せるわ」


「え、そうなんだ……そうなんだっ?」


「遅えわ。ただし、亜空間倉庫と収納ボックスのみ。収納ポーチは、ポーチ内も時間が進むみたい。冷めるし腐る」


「だから、最近、みんな事あるごとに食い物をしまいまくってる。入れとけば、遠征した時や何かがあってこの国離れる時に役に立つ」



 知らなかった。最近やたらとみんながご飯をおかわりしているから、大食いになったんだと思ってた。あと夜食。



「ぼ、僕、どうしよう、少ししかしまってない。夜にお腹空いて食べっちゃって、食べた分は僕の肉になっちゃってる」


「梁井ぃ、ポチャ次郎がフルーツだけじゃ小腹が満たないってさ。サンドイッチも頼んでやって」


「わかったー」



 やないさんが扉の近くへ行き、ベルを振っていた。

 さほど待たずにメイドさんが来た。あ、頭のてっぺんでポニーテールの人だ。えと、マルティナさん。


 やないさんはフルーツとサンドイッチの他に飲み物も頼んだようだった。

 ほどなくしてそれらが乗った台を押してマルティナさんが部屋へと入ってきた。


 ソファーの前のテーブルにセッティングしてくれているマルティナさんに城之内君が何やら話しかけていたが、僕の頭には全員入って来なかった。

 僕が3食プラス夜食を食べていた時、本郷中のアオイ君達は何も食べてなかったんだ……。


 もしかしてディサート国って貧しい国なのかな。


 


「ポチャ次郎、目の前やつ、しまっちゃえよ?」



 太郎君の声に我に返った。マルティナさんはもういなくなっていて、みんなはテーブルの物を倉庫や収納にしまったみたいだった。

 とりあえずもサンドイッチもしまっておこう。



「あの、サンドイッチってお皿ごとしまう? それともサンドイッチだけしまえばいい?」


「お皿ごといれちゃいなさいよ。出す時に剥き身のままとか嫌だから。収納スキル無い子の分もしまうんだからね。自分の分だけじゃないのよ」



 漆原さんが嫌そうな顔をしていた。

 見るとみんなの前にはお皿コップ食べ物も、何も無くなっていた。



「あの……、お皿泥棒にならない?」


「細かい事は気にすんな」



 そうなの? そういうものなの?



「タガセンに苦情がいってないといいけど……」



 僕がボソリとそう言うと、みんなが慌ててお皿を取り出していた。



「コップは無理だ」

「スープ皿も無理ね」

「よし。大丈夫そうな皿だけ返そう」



「ところで、マルティナから蒼井氏の居場所を聞き出せた」


「ナイス、城之内」


「訓練所の近くにある休憩個室に居るそうだ。そこは鍵がかかる。話せるようになるまでそこに軟禁するみたいだ」


「そうね、仲間がテロ事件起こしちゃってるしね」


「また来るんじゃない? ええと木田と瀬戸だっけ、本郷中のふたり」


「来るかな? 罠に掛かった仲間を置いて逃げたやつだぜ?」


「どこに逃げたんだろう」


「まだこの国に居そうだよな。城砦都市のどっかの街に」



「もっと近く、このお城の近くに隠れてる気がする」


「ポチャ次郎、何でそう思う?」


「だってさ、ディサート国ってすごく遠いんだよね? ここまで3人で逃げて来て、ここで置いていくかな」


「そもそもどこへ行く予定なのか」


「蒼井なら知ってるだろ。タガセンや城の人はもう聞き出してるかもな」


「きっと、罠が外せなくて、それで城の周りをウロウロしてたんだと思う」


「見つかって慌てて土魔術を使った、か」


「うん」


「ポチャコンビ、あそこに罠は幾つセットしたんだ?」


「んー、とりあえず持ってただけだから、5、6個か?」


「うん。蒼井君が掛かってた周りに6個セットした」


「かかるかな、罠に」


「それよりも、蒼井君がここに居る事を書いた看板を立てておいたらどうかな」


「いつ、どこから来るのかわからないよりも、さっさと来てもらった方が安心しない?」


「安心するわね」


「そうね」


「それは、タガセンの許可が出てから、だな」


「そっか……」



 僕らはなかなか眠れず、深夜まで起きていた。

 タガセンが『クラスの間』寝に戻って来た時、僕らが居て驚いていた。


 みんなは眠れずにいたみたいだが、僕はかなり眠いのを我慢して起きていた。いや、ほとんど寝ていた。


 城之内君らはタガセンと話したみたいで、翌日、僕らは看板を立てに行った。あ、タガセンは他の2班が泊まりになるかもしれない事は事前に聞いていたんだって。


『蒼井は預かった。壁を壊した事は罪を問わない。さっさと自首しろ』

 看板にはそう書かれていた。



「ねえ、これで来るかな? 私だったら絶対行かないわぁ」


『蒼井君はお城の保健室にいます。建物の壁を壊した事は誰も怒ってないよ? 出ておいで。ろく中 2年1組』



 董明さんが僕の言うとおりに書き直してくれた。



「これで出てくるんか?」


「保健室ってどこだよ」


「ろく中のろくが何でひらがななのよ! 漢字の方がよくない?」


「え、でも、ろく中って読めないかもだし……」


「読めないのはポチャ次郎だけよ!」


「いや、俺、緑陽(りょくよう)中学って最初読んだ。よく聞く『ろく中』は別で、そっちは六中かとか俺思ってたぞ」


「そう言えばそうね。よく、りょく中って言われる事もあるね」



 よかった。太郎君とやないさんが味方になってくれた。

 釣れてくれるといいな。

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