52話 鈴山田班
班単位での討伐が始まる。ただし鈴山田班、日向班はあまり離れずにスタートする事がタガセンの条件だった。
実践で小物相手は問題ない。こちらに対して攻撃的な魔物なので、躊躇せず倒す事を徹底する。
バレー部の魔法攻撃もキルオーバーなくらいだ。
問題は戦いよりも移動だ。
足場がデコボコな場所や歩きにくい林の中など、移動にかかる時間と苦労の方が生徒にとっては苦痛であったようだ。
「漫画とは違うなぁ」
「だよな。地味に移動が辛い」
「現実なんてこんなもんなのね」
「こんなんで魔力石が貯まるのか不安だよ」
「あ、そのための付与やマッピングよ! ダラダラ歩くのは初めだけ」
「そうか! そうだよな。ありがとうスキルの神さま」
「ここら辺に出るのは小型の獣系魔物だけど、油断しないで! 動きが速いから近接になると辛いわよ」
「ねぇ、どのくらいのダメージをくらうのか一度噛まれておく?」
「誰が?」
「誰かが?」
「噛まれてみたい人ー」
「ジャンケンする?」
「わかった。私が噛まれてみるね」
「いやいやいや。鈴山田さんが噛まれるくらいなら俺が噛まれておきますよ」
「そうだな。鈴山田さんの美しい腕に噛み跡なんかつけられない。千谷、お前、噛まれておけ」
「頼んだぞ、千谷」
「千谷くーん、頑張ってw」
「いや、あの、まぁいいか。回復頼むぞ」
「じゃあ千谷せんせーを先頭に、俺らちょっと下がろう」
「はーい」
「あ、待って。鈴山田さん、あの白牙のやつ、アイツ毒はないですよね? 噛まれても死なないですよね?」
「あはは。まぁ、平気ですよ。痛いですけど」
「痛いのかー。そうだよなー噛まれるんだから痛いよな」
「千谷、犬に噛まれたと思って諦めろ」
「そうだぞ、犬より小さいぞ?」
「いや、どんなデカイ犬を想像してんだよ! チワワよりデカイぞ、アレ」
「ハスキーに噛まれるよりは可愛いもんだ。ほら、あのアニメ。噛まれつつ『ほら、怖くない、怯えているだけ』とかやってみて」
「やっらーん。カプっとしたらファイアぶっ放すからすぐ回復してくれ」
「いっでええええええ」
林の中に千谷の叫び声が木霊した。驚いた日向班が駆けつけたときは回復は終わっていた。
だがわかった事がある。
周りが引いた。回復スキルで傷が塞がっても血みどろの破れた服はそのままだ。噛まれた本人の痛みより、それを目撃したほうの衝撃が大きい事が発覚した。
「痛えええええ」
「痛いのは噛まれた俺だ」
「わかってる。けど俺無理。自分だけじゃなくて仲間の怪我も無理だ」
「ねえ、鈴山田班は基本、遠距離攻撃特化にしない?」
「だねぇ。私も無理かも。バレー部は魔法だからどっちみち遠距離だし、回復持ちの付与スキルの剛力と久遠も弓でしょ? 遠距離攻撃だよね。江崎、ファリちゃん、私らも投技術を磨いて遠距離特化にしない?」
「だよなぁ。近接戦はちょっと……いや、だいぶ怖い」
「江崎、ファリちゃん、私達はバレー部に作ってもらった硬い石で攻撃する。しよ?」
「するする」
「おう」
「じゃあ、魔物を見つけたらまずは剛力さんと久遠さんが弓で魔物を威嚇して」
「威嚇でいいの?」
「当たって倒せたら倒しちゃって。弓が1番遠くまで飛ぶと思うけど、遠ければ遠いほど当てるのは難しいと思うの。だから威嚇でもオッケー」
「なるほど。流石、鈴山田先生」
「それで、魔法の届く圏内に入ったらバレー部赤城君、千谷君、羅木さんの出番。魔法の届く範囲を研究しておいてね。魔法攻撃の範囲を抜けてくる敵に、夏原さん、ファリちゃん、江崎君が石礫攻撃で出来るだけトドメをさしてね。そこでトドメをさせなかったら近接戦になるから、剣に持ち替えてもらうしかないわね」
「鈴山田先生、何気に詳しくね?」
「ふふふ。漫画もアニメも好きよ?」
「ええっ? 鈴山田って美術部だろ? 今年、部長にもなったんだよな。テストも張り出されるのに載ってるし漫画読む時間とかあるのか?」
「うんうん。りかちゃん、学校では美術部だけどプライベートではクラッシックバレエやってるんだよね?」
「そうだけど、漫画読む時間くらいあるわよー。美術部でも漫画描いてる子もいるし、ゆかちゃんともよく漫画の話題で盛り上がってるわよ」
「ゆかちゃん?」
「董明ゆかりさん。そう言えば、りかちゃんとゆかちゃんってよく笑い転げてるけど、あれ漫画の話してたんだ。ゆかちゃん学年1、頭がいいのに漫画読むんだー」
「そうなの。部屋でもD班でも一緒だったから大体漫画の話してたわぁ。班が離れちゃって寂しいな。部屋が一緒だからいいけど」
「人は見かけによらねえな……」
「で、うちの班は遠距離特化で怪我回避でいきましょう?」
「おう」
「そうだな」




