5話 謎の空間
教室に一歩踏み込んだ時、眩しさで目を開けていられなくなった。
クラクラ、グニュグニュがようやく治ったのでゆっくりと目を開けた。
なんだったんだ。盲腸のせいかな。やっぱりあと1ヶ月は休んでもよかったんじゃない?
尻餅をついて床に座り込んだまま、まだチカチカする目を擦った。
それにしても教室が明るすぎない? 2年の教室ってこんなに明るいの? それとも何かのイベント???
あ、もしかしてタガセンのクラスの朝会……何だっけ、クラス会議だっけ?そのクラス会議でフラッシュを浴びせるとかかな。
僕が遅刻したからフラッシュ攻撃の刑?
一年の時も「陰キャ陰キャ」って呼ばれてたけど僕が陰キャだから明るく照らすって事?
照らしすぎだよ。まだ目がシバシバする。
ちょっとパニックなってたけど、耳は何ともないので周りの声が聞こえてきた。
「何だよ! 誰の仕業だよ!」
「まっぶしー」
「ちょっとやめてよ」
あれ?僕に当てたフラッシュだけど、みんなも巻き添えくっちゃったの? 申し訳ないです。
やっと、目の焦点があってきた。早く席に座らないとタガセンに怒られる。僕の席、どこどこ? 僕の席がどこかわからない。
ひとつあいてるとこだよね。
目を擦りながら尻餅から立ち上がって見回した。
けど、何故かみんなも床に座っている。机も椅子もない。掃除?これから掃除?
あ、イチクミのクラス会議って床座りでやるのかな?キツイなぁ。僕みたいなデブは体育座りが苦手なんだよ。安定感を保てないんだ。(転がりがち)
「おおおお落ちつけ!」
「お前が落ち着け!」
「そ、そそそうだな」
なんだかみんな、慌ててない? びっくり顔で固まっている子もいる。教壇……あ、教壇もないや、そこに立ってるタガセンも立ったまま動かない。
もしかして、イチクミのルール?
朝会の時ライトが眩しくても動いたり喋っちゃいけないとか?
僕、新学期の初日2日間休んだから、イチクミルールがわからない。とにかくジッとしておこう。
「いや、これ、落ち着けないぞ?」
何君かな? そう言いながらタガセンをチラチラ見ている。
タガセンも動き出して、後ろを3回振り返った。入ってきたはずの教室のドアが無くなった。廊下も無い。てか、教室自体も無い。
机も椅子も無いから、自分の席がどこかわからなくても仕方ないよね、だって席自体が無いから。
そう、今気がついたけどさ、僕らは何も無い白い床の上に座り込んでいた。
教室よりかなり広いけど一応壁はある、真っ白な壁の部屋。
ここって学校じゃない……よね? って、じゃあどこ?
その広い真っ白な空間に、2年1組の教室から一瞬でここに?
これ、どんなイリュージョン?
「とにかく落ちつこう」
「落ち着いたけど、何だよ、ここ! 何が起こった?」
「わからん。誰かわかる者いるかー?」
誰の手も上がらない。
ただ、みんながチラチラとタガセンを見る。でもタガセンは動かないし何も言わない。タガセンもさっきみたいにびっくりして止まっているんじゃなくて、腕を組んで何かを考えているみたい。
「ええと、多分全員驚いていると思う。あー、とりあえずクラス会議するぞ」
今話しているのが誰君か名前はわからないけど、多分学級委員とか日直とかかな?
みんなが彼の周りを囲むように輪になって座った。座った……。椅子欲しい。床座り苦手。お腹の肉が邪魔なんだよ。
「ポチャ次郎、座りづらかったら胡座でも足崩しでもいいぞ」
誰? ポチャ次郎なんて名前、まさか本名じゃないよね?あだ名だよね? …………本名もありか。ぽちや次郎、保地屋次郎……。
「ポチャ、足崩せよ?」
近くの男子に小突かれた。
えっ?えっ? ポチャ次郎って僕の事? 僕、草凪陽一郎なんだけど?
太っているから『ポチャ』はわかるけど、何で『次郎』? 太郎じゃないの?もしくは名前から一郎をとって『ポチャ一郎』とか。
「あ、俺がポチャ太郎な」
僕を小突いた男子が自分を指さしていた。
「イチクミでポチャ系は俺とお前のふたり。で、俺が太郎でお前が次郎な」
「は、はい」
僕の呼び名、ポチャ次郎に決定してたんだ?
「とりあえず、一昨日から始まった新学期、新クラスのイチクミですが、ポチャ次郎こと草凪が今日から登校してきました。退院おめでとう。これで全員揃ったな」
「ふたり転校したんだよな。春休み中に」
「ちっ、逃げやがった」
「まぁまぁ。彼らは私立に転校したんです」
「金持ちはいいよなー。私立に行けてよ」
「俺らは2年間イチクミだな」
「みんなあっ! 現実から目を逸らしすぎだよ! ここどこよ!」
なんかキレてる女子が居る。
「はーい、今日の議題。ここはどこ?」
「とりあえず状況整理しましょう」
僕らが『何が起こったか』について話している間に、タガセンは部屋の隅から隅へと移動して壁を叩いたりしている。
出口を探しているのか。
「おい」
タガセンの手招きで男子3人が素早く走って行く。と思ったら、4人で大きな箱を引き摺ってくるのが見えた。さらに数人の男子が手伝いに走った。運動部ってフットワークが軽いなぁ。
運んできたその箱は跳び箱くらいの大きさ。跳び箱と言っても高さは2段くらいだけど、重そうな木材の箱。
タガセンが手振りで近くにいた男子を下がらせた。
「宝箱か?」
「開けたら爆発とかしないよな?」
「お前らもっと下がれ、あっちの隅まで行って全員伏せろ」
タガセンが僕らを下がらせた。
え、開けるの? その謎の箱、開けるの? 開けたら爆発するの?
箱は簡単に開いた。そして爆発もしなかった。
そこから出てきたのはクルクル巻かれた筒状の紙。紐で結んである。
「スクロール……? あの、ファンタジーゲームとかでよく見るスクロールじゃないか?」
「スキルスクロールか?」




