48話 侵入者はまだいる
宰相さんから昨夜の事件について説明があった。
爆弾犯は、お城を攻撃するために爆弾を使ったわけではなく、見つかって逃げるために通路のどこだかを爆破したそうだ。
逃げながら何度か壁やら扉を爆破して破壊したそうで、たまたま僕らの居た棟に近かったのでかなり響いたみたいだった。
魔法で。
「今は捕獲して、別棟に監禁しております。そこでは魔法が無効かされるので壁を破って出てくる事はありません」
「では、一応、我々の安全は確保されているのですね?」
「はい」
「その侵入者の目的はわかっているのですか? 我々を狙ったという事はないでしょうか?」
タガセンはてっきり僕らの知らないところで宰相さんとの話を済ませていると思ってた。僕らが聴いていい話なのかな。僕らは誰も口を挟まずただ聞いていた。
「残念ながら、目的はまだ不明です」
「そうですか。自分達が住んでいた世界は平和な国でした。日常生活ではこういった事もまず起こらない。我々はどの程度の警戒をすればいいですか?」
宰相さんは僕らが居る区画の見回りを強化すると言った。タガセンは僕らが狙われたと思っているんだろうか?
「近日中に東の棟に移動をしていただく事になります」
「ここだと、また狙われるって事か?」
「いえ、実は……、侵入者は1人ではありませんでした。複数であったようなのです。夜間で暗かった事と人が少なかったので、はっきりとした目撃証言が得られていませんが、捕獲した一名以外にも居た……と。一名はどうやら街へと逃げ込み紛れたようです」
タガセンは慌てるように宰相達を伴って部屋から出て行ってしまった。
「なんだ? どうしたんだ、タガセン……」
「俺らに聞かれたく話か?」
「だったら最初からうちら抜きで話せばよかったじゃん?」
「そうだよねぇ。うちらに聞かせておいて何で慌てて出て行ったんだろう」
「予想外の話……が、出たって事か」
「あ、侵入者が複数いた事?」
「いや、それは別に何人居ても別に不思議じゃない。問題は、逃げた奴がいるって事かも」
みんな凄いな。名探偵が沢山いる。僕にはタガセンは急にトイレに行きたくなった、くらいしか思いつかない。僕は名探偵にはなれないな。
「ねぇ、私たち狙われたのかな?」
「どうだろう。違う気もするのよね」
「董明はどうして違うと思うんだ?」
「んー。異世界人を召喚した事は別に秘密にはしていないみたいじゃない? お城の人達も、街の人達も気軽に話しかけてくるし、私たちの見た目もかなり違うじゃない?」
「そうだね、うちら完全に日本人顔だもんね。こっちの人はラテン系? 濃い顔だよね」
「召喚反対派とかがいたのかな?」
「でも、私達が召喚された理由ってさ、この世界の増えすぎた魔物を倒して欲しいからでしょ? 異世界人が持っているというチートスキルで」
「そう。だからもし反対派が私達を襲ったり拉致したりしたら、結局は自分達の首をしめる事になっちゃうんじゃないかなって思ったの。だから、昨日の侵入者は私たちが目的ではない気がする」
「じゃあ、何が目的だったんだ?」
「さあ? 捕まったのがどんな人かも知らないし、何しにここに侵入したかも、私にはわからないわ」
「董明先生にわからないなら、俺らもお手上げだな。日向先生は何か考えあるか?」
「侵入者が何者かは俺も知らねえけど、タガセンの行動はちょっとわかる、かな」
日向君も僕と同じく、タガセンはトイレに行ったと思ったのかな。僕がそう思った時、日向君がくるりと僕を振り返った。
「タガセンはトイレじゃないぞ? ポチャ次郎」
えっ、違うの?
「タガセンはさ、侵入者の話を俺らに聞かせたかったんだと思う。俺らスキルで浮かれていたとこもあったし、少し締めたかったんじゃないかな」
「そうだな。ここは日本と違う、危険だらけだと口で言われても、やっぱあんま実感なかったしな。昨日の地震……爆破で、ちょっと現実味が出た」
「たしかに。でも、何で急に出ていったんだ?」
「多分だけど、侵入者がひとりだと思ってた、それが掴まったから安心した。でも逃れてどこかに隠れているやつがまだいる。私らの安全が確保されなくなって慌てたのかな」
「タガセンが?」
「タガセンが」
「タガセンなのに?」
「タガセンでも。うちらの担任でもある。いつも言ってるじゃん、ひとりも欠けずに全員で帰還するってさ」
「じゃあ、今、宰相から情報仕入れているか、俺らの安全について話しているか……」
「何にしてもタガセンは俺らに話すべき事は話すし、隠したい事は言わないだろうな」
「ふうむ」
「どうすっかな。俺らも動いた方がいいのか、大人しくしていた方がいいのか、タガセンの考えが読めないな」
「だなぁ。タガセンもさぁ、普通の学校生活なら『自分で考えて動ける生徒』を指導するんでいいんだろうけど、ここは異世界だぜ?」
「異世界だな」
「異世界なのよ。地球でも日本でもないの」
「俺ら、普通の中学生のままだと生き残れなくねえ?」
「てか、普通じゃないしな。チート貰ったからな」
「ヘタするとタガセンより強いじゃん? このまま黙ってタガセンに従っていていいん?」
「いや、でも、タガセンよ?あの」
「うん、タガセンだしなー」
「タガセンかぁ」
「そもそも『タガセン』って何?」
みんなが一斉に振り返って僕を凝視した。




