45話 愛の行方
僕を置き去りにクラスの親交が深まっていた事がショックだった。
いいんだけどさ。別に僕に断ってからお付き合いをしてほしいとか全然思ってないけど、除け者にされたみたいでなんかちょっと悲しかった。
「どうした? 大丈夫か? ポチャ次郎」
僕がぼんやりしていたのに気がついたのか赤城君が僕の顔を覗き込んできた。
「あ、うん。平気……。何でもない、かな」
何でもなくないけど、そう答えた。
そう言えば赤城君はさっき馬場君と千谷君と手を繋いでいた。
「バレー部って仲がいいんだね?」
「んん? まあ?」
はっ、もしかして……赤城君、馬場君と付き合って……。
「ポチャ次郎どうしたんだ?」
千谷君もやって来た。
そうだ! 千谷君とも手を繋いでいたよね。バレー部内で三角関係……。それも男子バレー部。男子……あ、いけない、これって差別になっちゃう。
「何でもない……」
差別以前に、子供の僕にはよくわからない世界だ。(←同い年!)
ベッドの近くで江崎君と船橋君が話している。江崎君達B班男子はさっき肩を組んでいた。
肩を組む……、仲の良い男子ならするよね。すごぉく仲の良い男子……は、どうだろ?
「片付けは明日で、今日はもう寝ようぜ」
「そうだな、なんか疲れた」
「千谷ぁ、別に何もしてねえだろ」
「緊張疲れだよ! この世界に来て初めて危険を実感した」
「そうだな。スキルがある世界なんだから平和なわけねえよな」
「ほら、ポチャ次郎こっち来い。真ん中でもう寝な」
ぼんやりしていたら城之内君に呼ばれた。
「さっきからポチャ次郎が調子悪そうなんだよ。城之内、回復スキル持ちだろ? かけてやれよ」
「そうなん? 大丈夫か?ポチャ次郎」
「盲腸が治ってないんじゃないか?」
「傷が痛むのか?」
「あ、ううん。それは今まで忘れてた」
慌ててシャツを捲ってお腹の右下あたりを見た。いや、見ようとしたけどお腹の肉が邪魔で見えなかった。だいたいのあたりを手で触ったけどちょっと引き攣ってるみたいな場所があったくらいで特にどうもなかった。
「とりあえず回復かけとくな。怪我回復!」
「ありがと。城之内君」
そう言えば城之内君はさっき竜崎さんの腕を掴んでいた。竜崎さんは剛力君が好きみたいなんだよね。
「ん?どした? まだどこか痛いか?」
「ううん。…………あの、城之内君はその、竜崎さんとその、アレなの?」
「んんん? どれだ?」
「その、好きとか付き合ってるとか」
ブホッ ブハハっ
誰かが吹き出した。
「何だそれ」
「城之内、おまっ、竜崎といつの間に」
吹き出したのは千谷君だ。けど、赤城君達もゲラゲラ笑っていた。
「ポチャ次郎ぉ? 何で、そう思ったんだ? 言ってみ?」
城之内君が眉間に皺を寄せて詰め寄ってきたので、さっき見た事を話した。
そしたらみんながもっと爆笑し始めた。どこが笑うとこなのかさっぱりわからない。
謎は解けた。
あれは緊急時の合図だったんだって。
両手を胸の前でグー、それを斜め上に持ち上げたら……逃げる合図。魔法移動スキル持ちがそのポーズをしたら班のメンバーはすぐにメンバー同士で掴まる事に決まったって。(あー……聞いていなかった)
スキル魔法移動の集団移動は、移動メンバーのどこかに触れていれば一緒に移動出来るそうだ。
「こないだの夜会で決まっただろ。さては聞いてなかったな」
え、や、あの。ヤバイ。話が長いと気が遠くなるっていうか、眠くなって右耳から左耳へと突き抜けちゃうんだよね
タガセンに叱られる!と思ったけど、タガセンは廊下の方を向いたままだった。
「ごめん、今、そっと教えてぇ」
城之内君に耳打ちした。
沢山は覚えられないな。不安だったけど、決まっていたのはまだほんの少しだけだった。
「魔法移動のスキル持ちがこういうポーズをしたら、集まって掴まる」
「そのスキルって誰が持ってたっけ……」
「千谷、船橋、百野、ファリタ、鈴山田、漆原だ。班行動中なら班内のスキル持ちに、そうでない時は近くに居るやつに掴まれ」
「そう。例えば今、この部屋なら千谷だな。班行動中ならポチャ次郎はD班だから鈴山田か漆原だ」
ええぇ……覚えていられるかな。近くに誰も居なかったら……。
「ポチャ次郎、タガセンが個人行動するなってよく言うだろ? 常に誰かと居れば、そいつと一緒に動けば大丈夫だ」
「う、うん。あと、どこに掴まったらいいの? 女子だと変なとこに触ったらダメだろうし」
「そうだな。今日のポチャみたいに、付き合ってると勘違いする奴が出るかもしれないからな」
「ご、ごめんなさい」
城之内君、意地悪だ。さっきの勘違いをまだ根に持ってる。
今のところ決まっているのは『魔法移動で逃げる』時のポーズだけだった。
部屋のベッドは大きめのが6台、普段からくっ付けてあった。タガセンのベッドだけ少し離れて置かれている。
いつもは適当に転がって寝ているんだけど、今日は中央に寄り集まって寝た。窮屈かと思ったけどくっついている安心感からかすぐに寝てしまった。




