44話 乱れた関係
「窓の側には寄らないほうがいいな」
城之内君が皆を壁際へと誘導した。
窓と入口の中間くらいの位置の壁に背をつけて立つ。
「爆弾魔が窓とドア、どちらから侵入してきてもすぐに逃げられるように」
「おう」
「ポチャ次郎は真ん中に入れておけ」
「だな」
僕の前に身長190センチの壁がそそり立った。左右も180センチある。
ちょっと皆さん、中学でその身長は高すぎませんか? 体重なら負けていないんだけど。
扉が開いたのでタガセンが戻ってきたのかと思った。けど、ゾロゾロと入ってきたのは他の部屋のみんなだった。最後にタガセンが居た。
小声だけど少しだけ騒がしくなった。
「びっくりした」
「何があったの?」
「地震じゃなくて爆発?」
「魔物の攻撃かな」
「魔物って侵入出来ないって言ってなかった? 城砦の周りにバリアがあるって」
「じゃあ攻めてきたのは魔物じゃなくて人間?」
「この国って戦争中だっけ?」
「静かにしろ」
タガセンのひと言でシーンとなった。
「スキル班ごとに集合、各班いつでも動ける防御態勢を取れ」
スキル班。あの、ABCDの班の事だ。因みに寝る時の班は『部屋班』と呼んでいる。
俺を囲っていた城壁が無くなり、代わりに日向君や太郎君がやってきた。
「ポチャ次郎、大丈夫か?」
「うん。太郎君も大丈夫?」
「俺は平気」
「ポチャ次郎、大丈夫か?」
「うん、日向君」
「ポチャ次郎君、大丈夫?」
「ありがとう、董明さん。平気だよ?」
「ポチャ次郎君、怪我はない? 地震びっくりしたね」
「そうだね、驚いちゃった。鈴山田さんも平気だった?」
「ポチャ次郎、荷物持った?」
「持ったよ、やないさん」
「ポチャ次郎、忘れ物ないかもう一度確かめなよ」
「うん、わかった」
って、みんな僕を子供扱いしてないか? しかも漆原さんまで!
タガセンはドアの近くに居る。外に聞きに行こうか悩んでいるみたい。
それにしてもひとクラス25人が入っても窮屈でないとは、流石はお城の部屋だ。
広さに感心しているとドアがノックされた。どうやらお城の警備の人が知らせに来たようだ。
タガセンが話している間、僕らはジッと待つ。
A班が窓方面に身体を向けて、B班が入口方面へ向いて、その後ろにC班、一番奥の壁際の僕らD班(何故か僕を囲むように)、全員が緊張していた。
あれ?
漆原さんが両手をグーにして胸の前で構えている。
ファイティングポーズ? 戦う気満々? 見ると横の鈴山田さんも同じポーズだ。
あれれ? 隙間から見えた百野さんとファリタさんも同じポーズだ。
女子で流行っているダンスかなにかのポーズなの? と、千谷君と船橋君も同じポーズだ。
どういう事? 女子だけでなくてクラスで流行り出してるの? 僕が気が付かない間にみんなで振り付けを練習してたのかな。
しくったー。ただでさえ覚えが悪いのに今から振り覚えられるかな。
とりあえず出だしのグーポーズ? 僕もやった方がいいかな?
胸に持っていこうとした僕の右手のグーを太郎君が、左手のグーを日向君が握った。
え、待って、まだ最初の振り付けが完成してない。
ふと見ると、鈴山田さんの腰に董明さんが手を置いている。女子同士だから問題ないけど男子がやったら痴漢だ。
あれ?でも逆はいいの?董明さんの空いてる手は日向君の腰に。
僕より少し前に日向君と太郎君が立っていたから見えたんだけど、もしかして日向君と董明さんって付き合ってるの? カ、カ、カップる?
待って。太郎君の手、僕を掴んでない方の手がやないさんの肘を掴んでる。
え? えええ? 太郎君、僕に内緒で実はやないさんと付き合ってる? うちの班にカップルがふたつも?
待った、C班!!!
漆原さんの肩に井伊君の手、井伊君の背中に久遠さんの手、久遠さんの肩に剛力君の手が、その剛力君の肘に竜崎さんが捕まり、その竜崎さんの肘を城之内君が掴んでいる!!!
C班、6人が入り乱れての六角関係? 乱れすぎてる! カップル通り越して、その、乱行すぎない? 異世界に来たからって羽目を外しすぎじゃない?
まさか、A班やB班も?と隙間から探ると、良かった、A班もB班も男子3人女子3人で別々に手を繋いでいた。
いや、男子3人の手繋ぎもなんだかな、なんだけど。
なんかいつの間にかクラスの人間関係が濃くなってるな。
僕が地味にショック受けているとお城の警備員と話が終わったタガセンがこっちに来た。
「大丈夫だ。魔物でも戦争でもない。ただ、侵入がありちょっとした戦闘が起こったそうだ。侵入者は確保された。だが念の為、今夜は各部屋、窓とドアをしっかり施錠して休むように。絶対に個人行動はするな。朝は俺がノックするまでドアを開けるな。合図はタタタターンだ」
そう言ってタガセンは壁を叩いて見せた。
いつの間にか乱れた関係はバラけて、女子同士でくっ付いて部屋へ戻っていった。
「次郎、またな」
太郎君も隣の部屋へと帰った。




