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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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43話 災害?

 あれから数日。僕らは訓練と勉強(この世界魔物について)に明け暮れている。

 冒険者ギルドからの依頼も近場のみ受けているんだって。僕らD班は途中までは一緒に行くけど、依頼元の村で待機だ。僕らは生産がメインなので、討伐に参加しても役に立たないどころか足を引っ張る可能性があるからだ。


 そんなある日の、夕飯が済んだ部屋。こっちの部屋は、赤城君、千谷君、江崎君、船橋君、城之内君、僕、それとタガセンだ。


 赤城君と千谷君はバレー部でA班だし、バスケ部の江崎君と野球部の船橋君はB班、C班の城之内君は演劇部、今はCだけど日向君と交代でそのうちDに来るんだよね。そして僕がD班。


 なかなかバランスの良い部屋割りだね。夜寝る前に各班の情報交換が出来る。タガセンは怖いけど。



「ポチャー、今日は何やってたんだ?」



 赤城君に声をかけられた。

 今日はイチクミは外へは出ていない。ギルドで良い依頼が無かったみたいで全員、城内に居た。



「うーん、草集めと石拾い」


「庭掃除か?」


「まぁそんなとこ。そっちは? 魔法どう?」


「おう、魔法凄いな」


「だよなー、夢が広がる」



 いいなぁ。庭掃除は夢は広がらない。船橋君もいつの間にか近くにいた。



「そうだ! 赤城、魔法でボール出せるか?」


「ボール?」


「おう、野球の球サイズで土魔法で出せないか? C班の投技術で使うのに収納ボックスに入れておくんだよ。昼間はA班は忙しそうだから頼みづらくてさ」


「おお、いいぜ。土ボールか……出せっかな、ふんっ!」



 赤城君は突き出した右手を握りしめて唸っている。開いた手のひらには崩れた土が乗っていた。



「難しいな、もう少し固くか。ふんんっ!」



 手のひらからぐずぐずの土が溢れて床に落ちていく。



「ボールにならねえ! 何でだ? ファイアは普通にボールになるのに土は固まらなねえな」


「イメージが足りないんじゃないか?」



 千谷君も寄ってきて土ボールを作りだした。



「あれ? 意外にムズイな。ボール!アースボール! 土って英語で何だっけ?」


「知んねえ、城之内ー! 学年3位! 教えて城之内先生ー」


「いや、俺、学年3位じゃないから」


「えっ? だって一位が董明で2位が日向、3位がお前じゃないの?」


「ちげーよ。一位が董明はあってる。去年一位はずっと董明だったもんな。日向は3位だよ。2位は高林、ええと今は何組なんだっけ?」


「高林は新設校にいったはず。家があっちに近かった。だから繰り上がりで今後は日向が2位だな」



 僕の通ってる千葉県流山市立緑陽中学はかなりのマンモス中学だったんだって。(誰かが言ってた)


 近所に他に中学がなかったのと、ここ10年で住宅地が急に増えたのとで、学校がパンパンになったんだって。校舎の増築も間に合わないからプレハブ校舎が使われていて、それに当たったクラスは大変だったとか聞いた。


 僕は去年は普通の校舎だった。1年と3年は校舎で2年がプレハブだったかな? だから僕も今年はプレハブかぁとか思ってたけど、何と、中学校が新設した。

 おかげでプレハブにはならなかったけど、本音はそっちの中学に行きたかった……。うん、イチクミのみんなもそう思っているはず。



「日向が繰り上がって2位だとしても俺は3位じゃねえぞ。去年は最高で6位だった。あとは8とか9」



 8位か9位でも僕からしたら雲の上の人だ。

 うちの中学は学年ごとにテストの順位が廊下に貼り出される。中間とか期末テストみたいな大きい試験は50位まで。もっと小さいテストは10位くらいまで。全員が貼り出されるんじゃなくて良かったー。そうだったら僕はたぶん、下から10番以内……、5番以内?


 はっ、僕より下の人が新設校に移動してたら僕が最下位かも?

 そうなったら今年はタガセンビンタが待っている。もしかしてこの世界に転移して助かったかも。少なくとも試験無いよね? お城の廊下に貼り出さないよね?


 タガセンをチラ見した。

 ぎゃっ! 向こうもこっち見てた! すみませんすみませんすみません!勉強頑張ります!



「このクラスじゃ3位だろ。で、先生、土って英語でなんて言うの?」


「んー、アース……で合ってるけどそれだと範囲がデカイのかな? ソイルは?」


「ソイル? 聞いた事ねえな、まいいや。よし、ソイルボール!」



 赤城君の手からボタボタと溢れ出る土……、固まらないね。普通に手で固めた方が早くない?



「あ、そだ! 赤城君、何ボールでもいいけど、片手じゃなくて両手で握って見たら? ほら、羅セン弾みたいに」



 僕が知っている漫画、小2の時クラスの友達が見せてくれたやつで、そんな技の魔法を使ってた。



「おお? なるほど」



 赤城君と千谷君が並んで両手揉み揉みしている。開いたその手には固まった土のボールがあった。



「やったぜ!」


「船橋、どうだ?」



 赤城君からボールを渡された船橋君もそれを何度か握りしめていた。



「バッチリだ。硬さも大きさも問題ない。これを量産出来ないか?」



 どんな硬さなのか気になったので僕もちょっと触らせてもらった。硬い。硬いけどさ、これ攻撃で使えるの? 野球の試合で使うならこれでいいと思うけど、魔物との戦闘ではどうなの? ぶつけられたら確かにアザは出来そうだけど、効果あるのかな。毛皮がフサフサとか皮膚が分厚い魔物には効かなそう。


 でも、僕らはまだスキルを使い始めたばかりだ。僕らレベルではこれで精一杯なのかも。



「これ……ひとりで作ってこの硬さ。ふたりで作ったらどうかな」



 痛っ! 赤城君に肩を強く握られた! ナマ言ってごめんなさい。



「千谷!」


「おう、赤城、いくぞ?」



 待って待って、僕は行かないから! 赤城君離して!



「「羅セン弾!」」



 赤城君と千谷君がお互いの手の中で揉んでいた土を合体させて回し始めた。アースとかソイルとかどうでもよくなってない? 詠唱が羅セン弾だったよ? 何作ってるの?



「おおおう!」

「出来たぜ!」



 ふたりが船橋君に差し出したボールは、見るからに硬そうだった。



「ホントに土かよ、鉄球みたいだ」



 あれが当たったら、当たりどころによっては死ぬかも。



「しかも、鉄球より全然軽いぞ。赤城、千谷、悪いがこれを量産してほしい」



 ふたりが少し嬉しそうに頷いた。ドヤ?



「おい。散らかした部屋は自分達で、キッチリと、片せよ」



 び、びっくりした。いつの間にか背後に立っていたタガセンが床に散らばった土を指差して静かに怒鳴った。


 そう、タガセンは声が大きくないのに怒鳴られた気分になる。とにかく怖い。迫力が半端ないのだ。

 僕?ぼぼ、僕に言った?床を綺麗に?



「はい!」



 赤城君がピンっと立って返事をした。

 その横に千谷君、船橋君、城之内君、いつの間に江崎君も居て、5人が並んで頭をブンブンと縦に振っていた。



「ほ、ホウキ……」



 慌てて掃除用具を取りに廊下へ行こうとした僕の腕を城之内君が掴む。



「ポチャ次郎、ひとり行動はダメだ。部屋班全員で掃除用具を取りにいくぞ」



 そうだった。個人行動は禁止されていたんだった。危うくタガセンビンタ案件に突入するとこだった。



「そう言えば掃除用具ってどこにあるんだ?」



 皆が部屋を見回した。学校だと廊下に掃除用具ロッカーがあったんだ。けど、このお城の廊下は綺麗だけどガランと広くて掃除用具ロッカーとかあったかな?


 部屋の中もベッドと、テーブル、椅子はある。今は端に移動させた小さいタンスも自分達の着替えが入っているだけ。



「この部屋って俺らが留守の間にメイドさんが掃除してくれてるんじゃないか?」


「だったら、城の人に聞かないと掃除用具がどこにあるかわからないな」



 部屋にあるやたらゴージャスな時計っぽいものに目をやった。派手派手だけど一応時計なんだよね?あれ。


 数字はない。けど、棒……時計の針が1日で一周まわる。長針とか短針はない、一本の針。

 3時の位置に針がある時は朝6時、6時のとこにある時はお昼の12時。ややこしいぃぃぃ。今は10時超えた付近に針がある。

 何時? 今、何時なん? 何時なんですかあああああ。



「もう9時半すぎか」



 城之内君がスマホを手にしてた。



「城之内、お前、スマホ持ってたんだ。流石、学年3位〜9位!」


「ほっとけ!」


「メイドさんのところを訪ねるには遅い時間だな。てか、城之内、よく持ってたな、それ」


「てかさ、ポチャ次郎は持ってないの?」



 突然、江崎君が僕にふった。持ってない?スマホの事かな?



「俺らあの時、身ひとつでここに来たからなぁ」



 あの時、つまり教室に召喚陣が出て僕らが異世界、ここへ転移した時だ。1限目が始まる前。


 僕は学校には始業前には着いていたが、どうしても教室に入れなくて廊下でモタモタしていた。

 教室内は1限目の始まり待ちのみんな。


 イチクミは朝に校庭を走らされるのでみんなはジャージ姿だ。ほとんどの生徒が机の上に教科書やノートを出していたけど、手には持っていない。


 あの召喚では身につけていた物が一緒に転移した。だからみんなはジャージでこの世界に来た。


 僕は廊下から一歩踏み込んだ時は制服姿だった。それと鞄と運動バッグを持っていた。僕だけ荷物を持ってたんだ。


 鞄に教科書は入っていない。新学期初日に配布された教科書、僕は欠席していたので僕のロッカーに入れられたらしい。

 らしいと言うのは見てないからだ。なので、鞄にはノートが数冊とペンケース。運動バッグには体育で使う靴と体操着が入っていた。


 体育は形だけの参加で見学予定だったのでタオル等は持ってこなかった。

 それにスマホは元々持ってない。『中学生には必要ない』と言われて両親に買ってもらえないからだ。


 因みに董明さんとか他に数人、たまたまノートやペンケースを手にしていた人がそれを持ったまま転移していた。



「ごめん、スマホ、無いんだ」


「城之内、よく持ってたな」


「俺はいついかなる時もコイツは手放さない」


「ここ圏外だろ? 調べ物も出来ないじゃん」


「いいんだ。時計は生きてるし動画も写真も撮れる。(コソっメイドさんも撮れる)」


「(流石だな!)あ、でも充電はどうするんだ?」


「大丈夫。ソーラー型のモバイルもある。俺は常にポケットに入れている」


「着替えても?」


「もちろんだろ。ジャージに着替えてもだ。ジャージの内ポケットに入れてある」


「ジャージに胸ポケットなんてあったか?」


「無いだろ?」


「作った。俺は努力を惜しまない男だ」



 城之内君、頭もいいのに裁縫も出来るんだ。凄いな。けど問題はまだ解決されていない。床に散らばった土の山だ。タガセンは向こうを向いているけど、見えない目で僕らを見ている気がする。



「どうする?」


「今夜は無理だろ。明日の朝、メイドさんが起こしに来た時に掃除用具を借りようぜ」


「じゃあ朝までこのままか」



 皆がタガセンの後ろ姿を見つめて無言になる。このまま寝たらタガセンが怒らないかな。どうしよう。



「ポチャ次郎、お前のスキルで何とかならないか? お前、生活スキル持ってるんだよな?」



 え、いや、生活スキルじゃない。生産スキル。生産は出来ても掃除は出来ない。って、まだ何も生産出来てないけど。



「ポチャ、なんかやってみろ。とりあえずスキル唱えてみなよ」



 ええ!ええええ?



「ええと、採取! いや、採取は違うよね。狩猟解体はもっと違うし……土、土土……、採掘?採石!」



カタカタ………カタカタカタカタ、ガタガタ!



「ストップストップストップ!今の嘘!」



 やばいやばい、床の土掃除じゃなくて、城の下の地面が掘れちゃった? マズイ!


 揺れが止まった。



「何だ? 地震か?」


「今のだと震度2くらいか? こっちの世界も地震はあるんだな」



 ぼ、僕のせい……じゃないよね? 地震だよえね? たまたま地震きたんだよね? 城之内君が僕をジッと見ている。

 僕のせいなのかな、謝ったほうがいいかな、後からバレたほうがタガセンに怒られそう、そう思っていたら爆発音が3回、それを追いかけるように大きな揺れが3回来た。


ドガン!ドガン!ドガン! グラグラ、グラグラ、グラグラ……カタカタカタ



「噴火?」


「いや、噴火にしては小さいだろ、爆発?」


「爆弾?」



 えっえっ、もうこれ僕じゃないよね! 絶対違う。今何もしなかったし。さっきの揺れも僕無関係だった?



「全員避難態勢のまま待機、そこで待て」



 タガセンがそう言い残して廊下へ出て行った。他の部屋に行ったんだ。



「ポチャ次郎、鞄や荷物は収納へ入れておけ」


「収納?タンス?」


「自分のスキルの収納だ! 赤城、千谷、お前らの荷物はこっちに寄越せ、預かる」


「頼む」



 僕のスキル、亜空間倉庫の事か。うん、そうだね。タンスの物は全部こっちに入れておこう。

 それにしてもお城で爆弾事件か。こっちの世界も大変だね。

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