42話 全員行動
翌日、中庭5周を走り終わり、朝食も済んだ。いつもだと午前中は全員で勉強なんだけど、今朝はタガセンも居ない。
日向君に「自習」と告げてどこかに行っちゃったんだって。それで僕らもクラス会議を開く事になった。
たぶん、昨日の件。修学旅行でどこの国を回るか?
「今日の議題は、俺らの行動について」
あれ?違った。日向君が僕らに投げかけた議題は修学旅行についてではなかった。
「俺らの行動って、どういう意味だ?日向先生。もっとわかりやすく言ってくれ。ポチャコンビが悩む」
「お前もな」
太郎君が言い返していた。太郎君、意外と負けず嫌いだよね。
「俺らの行動、俺らはタガセンに言われて、今は全員行動をしている」
うんうんとみんなが頷いた。
「中庭でのスキル訓練、最近ようやく街の外へ出たけど、あくまで城塞都市の外だ。まだまだ、城からはそれほど離れていない」
「そうだな。こっちの世界って車とかバスが無いから移動に時間がかかるんだよ」
「それに、ギルドの依頼を受けてからは班で動いているよな?」
「全員行動……じゃ、ないわよね?」
「タガセンも何も言わなくなってきてるし」
「それ、それなんだよ。タガセンが何も言わない理由はふたつ。ひとつは、俺たちがそれほど城から離れた依頼を受けていないって事。もうひとつは班行動と言ってもABCD班は割と近場で行動している事。だからタガセンも目こぼししてくれているんだと思う」
「でもさー、俺、ちょっと無理を感じてる。日向先生もだろ? だから今朝の議題にしたんだろ?」
「そう。そのとおり。俺らは今後、この国のあちこちへ魔物討伐に行く事になる。それどころか、国の外へも行くかもしれない。だからスキルをガンガンと上げて魔力石をバンバン入手していく」
「そうなんだよなぁ。俺、全員行動って無理があると思うんだ。いつでもどこでも24人でゾロゾロだろ?」
あ、ようやく日向君に言いたかった事が見えてきた。『全員行動は無理』が今日の議題かな?
「でもさぁ、タガセンは『全員行動』一択でしょ?」
「どうだろな。タガセンも無理を感じているから、俺らが多少離れても何も言わないでいるだと思う」
「完全に別行動だと『NO』と言われそうだな」
「タガセンが俺たちに全員行動を強いる理由は、俺たちの安全性だよな? 全員で動いている方が確かに安全性は高い」
「つまり、全員一緒でなくても班行動で安全が確保出来ればいいのか」
「安全確保の手段を、どんどん出してくれ」
「はい!はーい!」
「井伊」
「えとさ、ゲームの話なんだけどいい?」
「どうぞ」
「安全、つまり死なないための方法だよね? ゲームだとさ、ヤバイ敵と出会ったら即帰還。つまり、街へ帰還する魔法とか道具があるわけよ」
「それって、スキルの魔法移動の事か? そのスキルは各班に居たな」
「C班の付与の宿地とか跳躍も?」
「そう。だけど問題は、咄嗟の時にそう上手く使えるかどうか、それが俺らの今の課題。俺らがもっとスキルを使いこなして、危険に対処出来るってわかれば、タガセンも俺らの班行動を許可すると思う」
「魔力石を集めるのには魔物を倒さないとならない。魔物を倒すには城の外に出ないとならない。私達、ちょっと焦っていたかも」
「そうなんだ。もっと情報を手に入れて色々と練ってから動く事にしないか? もちろん城の中庭や、近場の街の討伐は続ける。でも基本をしっかり作ろうぜ」
「そうだな。ゲームだって事前に攻略をじっくり考える。いきなり敵に突っ込んだら死ぬのはわかってるからな」
「バレー部だって他の部だって、試合のために作戦を立てるだろ?それと一緒だ」
みんなが「おおー!」とか、肩組んだりしている。けど、僕にはよくわからない。ゲームもしないし、部活の試合もない(合唱部だから)。でも、太郎君と赤城君に挟まれて背中をバシバシ叩かれた。
一応、「おおー」と、小声で参加してみた。
ええと、班行動したいけど、タガセンの了解を得るために基本をしっかりさせようって事?
そしたら僕は……具体的に何をやったら……。
「大丈夫だ、次郎は俺を真似してろ。俺らは基本、鑑定と石拾いだな」
太郎君に頷いた時、みんなの前に立ってた日向君から大きな声が飛んできた。
「高速鑑定をまだ未習得のふたり、今日明日中には覚えろよ」
ぎゃっわーん、僕と太郎君の事だ。




