41話 コスタル国
宰相さんの話は続いた。
「召喚に関しては私たちもよくわかってはいないのです。残された伝承も少なく、それを元に手探りでした。手の内を見せない国も多い。今回私どもの国を入れて7ヶ国が同時に召喚を行いましたが、第1第2条件を合わせる事に同意をしたのは、最初は我が国を入れて3ヶ国のみでした。ですがその後、他の国も渋々と行った様子で合わせてきました。しかし第3条件は開示しないと頑なでした」
「あれ、でも中2が25人ならタガセンがいるのおかしくないか?」
うん、僕もそれ、すっごく気になっていた。もしかしてタガセンって僕らと同じ中2なの?……おじさんに見えるけど、まさかのクラスメートぉ???
僕の誤解はすぐに解かれた。
「ああ、条件の優先順位の問題でしょうか」
「優先順位?」
「はい。優先されるのが第1条件。25人という人数です。それからチュウニという条件に近い者を出来るだけ多く。そして第3条件のバランス。つまり確実に25人、出来るだけチュウニを、そしてバランスが良ければなお良い、そんな感じなのだと思います」
なるほど。3つの条件を完全にクリアして召喚されるんじゃないのか。
第1条件の25人を優先するとして、あとは中2っぽい人でいいのか。例えば……身長とか? そういえばタガセンってあんまり背は高くない。赤城君達よりずっと低い。中学2年の平均身長っていくつなんだろ?
それか、中2の平均体重……それは、ないな。だったら僕は召喚されていないはず。
「じゃあ他の国、6ヶ国で150人が来ているけど、中2とは限らないし、第3条件に何を入れたのかは不明だから、どんなやつが来たのかも実際は不明なのか」
「そうなりますね」
「ヤバイやつじゃないといいな」
「ヤバイやつって?」
「例えば犯罪者とか、変質者とか」
「ヤクザ25人とかだったらマズイな」
「それはないでしょ。第二条件が中2だから」
「もし中2が厨二だとしてもそれはないな。ヤクザの厨二とかいないだろ」
「たまに居るかもしれないぜ」
「それでも25人は集まらないよw」
「それ、ヤッベェ。厨二ヤクザの事務所w」
「中学生の変質者25人はヤバイな」
「いやいやいや、変質者が25人揃ったクラスの学校なんて無いだろ」
「そもそも召喚陣の広さに居る25人、なんじゃない? 第2条件が中学生だからそこまで変なのは来ないと思うわ」
凄い、さすが董明さん。なるほど、召喚陣の広さ。って事は、タガセンは僕らのオマケかな?
「でも、他の国の第3条件は気になるよな」
「それは我々も気になるところではあります。普段全く交流の無い国ですから、その、不安はあります」
「あ、でもコスタルと、もうひとつ森側の国とは行き来があるんですよね?」
「あると言うほどではないんですよ。あちこちの国を渡り歩く商隊を受け入れているくらいで……。彼らから他国の情報も入手しています」
「一般人の行き来はないのですか? 入れないのか……」
「入れないのではなく、辿り着けないのです」
「あ、魔物か」
「ええ、そうです。個人で国を渡るのは難しいですね。かなりの数の護衛や傭兵を連れていかないと。その点、商隊は商人ギルドに守られているので、常にそれなりの護衛がつきます」
「それって、個人の商人はいないってことか」
「おりますが、個人の商人はその国から出ませんね。ギルドの依頼で商人ギルドの商隊に混ざる事はあります」
つまり、国の外はかなり危険って事なんだよね? 僕ら……そこに魔物討伐に行くの?
それで、360日目には貯まった魔石持って何とかの塔まで行かないとならないんだ。えぇぇ、それって前途多難じゃない?
「国同士の戦いとかはどうなんでしょうか。攻めてくる、戦争をしている国はあるんですか?」
タガセンの言葉にギョッとなった。
そっか、魔物だけでなく国同士が揉めてる事もあるよね。地球でもいまだに揉めあってる国も少なくない。
何となく日本からの召喚って考えちゃってた。
けど、もしも、外国のどこかの国で『25人』『中学2年』そして『戦闘特化の兵士』みたいな条件だったら、14歳で銃を持たされている国とか外国にあった気がする。
なんで平和な日本の中学からの召喚って思い込んだんだろ。
「まぁ、いまのところ何処の国も周りの魔物討伐に手を焼いているのですぐさま攻めてこれる国はないと思います」
宰相さんは苦笑いしながらそう言ったけど、それってすぐには来ないけど、いつか来るかもしれないって事?
そしたら僕らは戦争に駆り出されるの?
「うちの生徒は戦争には参加しません。させる気もありません」
タガセンがハッキリと言った。みんながホッと肩の力を抜いたのが見えた。僕もだ。
「せめて隣国の条件とか考えは知りたい」
タガセンの言葉にイチクミのみんなが頷いた。
「コスタルと交渉って可能かな? 今回召喚したあっちの生徒達に会いたい。向こうから招くかこちらから行くか」
「どうせコスタルには行く予定だったし、早めるか?」
「いや、まずは魔力石集めが優先だろ」
「そうよ。360日に間に合わなくなったら笑えないわよ」
「今、この状態で他国へ出向くのはダメだ!」
タガセンの目が三角になった。三白眼。タガセンは僕らが今動くのは大反対みたい。
「確かに。まだスキルも使いこなせていないからな」
「今動くのは尚早か」
「うーん、向こうから来てくれないかなぁ。交換留学とか」
「馬鹿か、交換留学だったらこっちも行く事になるだろ」
「そっかー」
「私、行かないわよ! そんな怖い道通って……。いくら外国語部だからってコスタル語なんて知らないからねっ!」
なんか急に漆原さんが激オコ。留学でなんか嫌な思い出でもあるのかなぁ。
とにかく僕らが動くのは絶対にダメだとタガセンから念押しされた。
でも気になるよね。他の国に召喚された子達。
-----(田川視点)-----
クラスごとの異世界召喚は、やはり物語とはだいぶ違う。
俺が教師でなかったら、ただの厨二を拗らせたニートなら良かった。それならそれでさっさと城から出奔して好きに動ける。異世界を堪能出来たはずだ。
しかし、教師として誇りを持って生きてきた俺には生徒達を放り出す事は出来ない。するつもりもない。
なので生徒達に目を光らせながらも、城の中を動き回り情報を入手していた。
生徒に怪我をさせず、帰還に必要な魔力石を入手するために魔物討伐をおこなっていかないとならない。
それも360日という期限付きだ。
今は、ゲームでいうところのチュートリアルのようなものだろう。城の近くでようやく動物程度を狩り始めた。
だが、ゲームと違い、油断すると怪我をする。死んでもゲームのようにリセットは出来ないだろう。だから慎重に進むしかない。
だが13、4の子供だ。現実とゲームを区別させるのは難しい。目を離すと何をしでかすかわからない。
24人の生徒を無事に日本へ送り返す、それが俺の、この異世界での第一目標であり、俺はそれを絶対に完遂する。
とは言え、正直、弱音を吐きたくなることもある。相談出来る大人が、もうひとりでいい、欲しい。
コスタル国にはどこの中学が召喚されたのだろうか。近ければ俺が行きたいぞ。
クラス会議の後に宰相から情報を入手した。
いや、行かないけどな? 今は、行かないぞ? でも、今後のために、な?
コスタル国への情報をな。
コスタルは隣国なので、『境の頂』ほどは遠くないそうだ。
召喚を行った『境の頂』までは往復20日ほどだそうだ。距離的に遠いのではなく、大型の魔物を避けて遠回りをしたり、隠れながらの移動なのでそのくらいかかるそうだ。
コスタル側の国境までは商隊の通り道があり、4〜5日で行けるという。とはいえ、それも大型魔物が出なかったらの場合らしい。
宰相にコスタル国の召喚人と連絡を取り合いたいと伝えてみると返事はすぐにもらえた。
「ただ、次の商隊に合わせてになりますので、すぐには無理なんです」
それで了承した。商隊がブリンクランドに到着したら、コスタル国の王家宛ての手紙を持っていってもらうそうだ。
向こうからの返事がくるのにかなり時間はかかりそうだな。
それにしても『チュウニ』が謎だ。
もしもコスタル国に召喚されたのが25人の厨二だったら、即、交流をお断りしよう。
いや、俺ひとりなら、コスタルに馴染めるかもしれないな。ふふ。




