35話 初討伐
僕らはとうとう、ビーガン城の外へ出た。外と言っても城の外であって、城塞都市の外ではない。
だが城からは結構離れた場所までイチクミで狩りに出た。
帰還方法がわかってから、みんなは訓練に熱が入っている。
なんか知らないけど突然召喚されて、なんか知らないけどスキル貰って、なんか知らないけどけどスキルの練習をしてた。
あの時は、なりゆきで動いていたっぽいけど、帰還がわかってからは、みんなちゃんと意識して動いてる感じ。
それで、訓練してくれていた城の兵士さんから、そろそろ魔物に対峙しても大丈夫だろうと言ってもらえた。
僕らは城の外、城塞都市の外側に近い街へと向かったのだ。
その街のはずれに魔物が入りこんできていると言う情報が上がっていたのだ。
そう、冒険者ギルドに。
宰相さんに話してからすぐに『冒険者ギルド』が発足した。もともと別のギルドは幾つかあったので、ギルド立ち上げにはそれほど時間はかからなかったそう。
それどころか、やはり国民は喜んだらしい。
『魔物討伐』をどこかが束ねてくれる。情報を集めやすい、情報が集まりやすい、無駄な死傷者が減って来ている、色んな効果が出てるって。
冒険者ギルドは国の中心、ビーガン城の近くに本部が、それから城塞都市の外側に近い場所に支部を幾つか建てたらしい。
僕らイチクミも全員で登録をした。
そして今回が初めての魔物討伐。
僕らは馬車3台でその街に向かった。街って聞いてたけど、村っぽい。ちょっと寂れている?
ビーガン城に近い街は栄えていたけど、外側へ行くほどなんかちょっと寂しい感じがする。
大きな建物はなくて、一階建ての木の家が増えてくる。レンガの家がたまに。さすがに藁の家はないけど、狼が来たら食べられる系か。
ええと、藁の家、木の家、レンガの家……。
あ、いや、住んでいるのは子豚じゃなくて人間だから食べられる事はないか。
でも僕達、今日は泊まりだよね? 日帰りは無理だもん。
「僕達、今夜はどこに泊まるの?」
「野宿じゃね?」
「そうだな。宿泊出来る施設がある村には見えない」
「野宿かぁ」
「出来れば、女子はどこかに泊まらせたいな」
「私達より、ポチャ次郎でしょ」
え、やっぱり? 僕が子豚っぽいから狼に狙われるって事?
「僕、僕、子豚よりは大きいと思う!」
「何、言ってんの?お前。サイズがどうじゃなくて単に戦闘能力皆無だろ」
「D班は宿でお願いしたいな」
なんだ、僕が子豚だからって話じゃないん……ん? サイズの話? 僕が豚なとこは否定してくれないんだ。
いいけどさ。
「魔物……出るんだよね。この村……。どんなのが出るんだろ。狼かな……」
「ポチャ次郎お、説明聞いてなかったな。ギルドの依頼ではこの街のはずれに小型の獣魔物の目撃が数回あったって話だ」
「小型の獣魔物ってどんなかな」
「もふもふだったら困るー。倒したくない」
「いや、倒せって。やらないとこっちがやられるかんな」
「この世界、カメラとかないからギルドにも映像の資料がないのよね。全てが口伝え、それを描きおこし」
「この街に出る魔物の絵ってあった?」
「なかったな。割とメジャーだからいちいち残してないって言ってた」
「メジャーな小型……ますます、猫か犬っぽいー。無理ー。私には倒せないー」
そ、そっか。狼じゃなくて小型の獣。
もしも犬か猫だったとしても僕に倒せるとは思えない。
大型犬とか怖いし、近所のボス猫はもっと怖かったな。野良だけど『ミニゴジラ』とか近所で有名だった。通りがかりのサラリーマンが血みどろになってた。猫、怖っ。
日向君は、作戦として、『犬猫好き』『小動物好き』は少し後ろに下がらせる事にしたみたい。
けど、実際に現れた魔物は。
「フェレット?」
「カワウソ?」
「オコジョさんじゃない?」
「テン?」
「ハクビシン?」
「いや、ハクビシンは鼻のとこが白くないと。あれは白くない」
「なんかわからんが、イタチ系か!」
前線から若干後ろ気味に居た一団から「かわい〜」とか「もふう?」とか声が上がったが、その声はすぐにおさまった。
こちらを睨んで開いた口から牙がニョキニョキと出て伸びたからだ。尋常じゃない長さと鋭さ、それと目がデカくなったあああああ。
なに、あれ、キモイ。
目玉が、10センチ以上に膨れあがった。目玉が顔と同じサイズってどうなの! と思ったら、黒目がいっぱい現れた。
あんなイタチ、日本に居たら怖いっ!!!
「コロス」
「チネ」
「可愛くない、世から抹消」
下がってた面々が全面へと出た。やる気満々。目玉イタチが少し怯んだ。
「A班、魔法攻撃!」
日向君の指揮で赤城君達の弾丸サーブ(火球)が、目玉イタチを吹き飛ばした。
火力多すぎ?
消し炭になっても魔石って取れるの?
取れなかった。
目玉イタチは、見た目はキモいけど意外と弱い事がわかった。日向君はA班へ指示を出していた。
「あのサイズのイタチだったら、弾丸サーブは1人だけで。もしも外した用時にセカンドは準備を怠るな」
「外さねぇ、けど、怠らない。ふたりひと組で、左がメイン攻撃、右予備。撃ったら後ろに交代。一巡したら左右交代で」
「オッケー」
「わかった」
「オケ」
次は上手く倒せた。消し炭にはならなかった。魔石は身体の中なので解体しないとならない。でも、危険な場所で解体はしない。
亜空間倉庫に入れて持ち帰り、安全な場所で魔石を取り出す。
村の周りを全員で回った。騒ぐと野生動物に気づかれるので、出来るだけ静かに、僕らは目玉イタチを狩った。
村のすぐ横の森の木に、鳥が停まっているのが見えた。イタチが終わったら弓隊に鳥を落としてもらいたい。焼き鳥が食べられるかもだから。
「8匹。ギルドの依頼は達成した。念のため、少し外側をもう2周しよう。タガセ…田川先生、いいでしょうか」
日向君がみんなに言ったあとタガセンに声をかけた。そう、タガセンもいたんだ。あまりに静かで忘れていた。タガセンのスキルも生産だけだから、僕らD班と一緒にいる。
タガセンが頷くと、日向君はA班へハンドサインを送った。
ぐるりと村を2周する間にもう3匹、目玉イタチが居た。もしかするともっと居るのかも。
けど日向君は、村長さんに何かを告げて、今日の狩りは終了。村には僕らが泊まれそうな家は無かった。小さめの木の家ばかりだ。部屋数も少なそう。
なので僕らは村の中央に馬車3台を停めてそこで野宿する事になった。馬車、と言っても木の箱型に布のテントが被ってる感じのやつ。人よりも荷物を乗せるっぽい。
馬車は女子が使う。董明さん達の亜空間倉庫に入れてきた寝具を馬車の中に敷いている。そこに雑魚寝だって。
「ねえ、女子は6人ずつで2台の馬車使うから、残った1台は男子が使いなよ」
「おう、サンキュー。じゃあこっちの馬車に寝具出すわ。俺も一応持ってきた」
日向君が馬車の中に入っていったけど、すぐに顔を出した。
「おい、ポチャコンビ、布団持ってきたか? あるならこっちに出してくれ。一人分だと微妙に足りないな」
「あ、俺、持ってきた。……けど?俺ら馬車で寝るのか?」
「そう。こっちはD班男子で使う。ABC男子、それでいいか?」
「いいぞー」
「おう」
「あ、じゃ、僕も布団出すね。持ってきた」
「いや、太郎ので足りる。3枚敷けるほど広くはない」
男子で僕ら3人だけ馬車で寝られるなんて、申し訳ないな。




