34話 肉食べたい
食堂へ行くと、もう他の部屋の人達はお昼ご飯を食べている最中だった。
通りがかりにお皿を覗く。やっぱり野菜か。肉が無い。ビーガン城め。あ、僕ナイス! このお城にあだ名を付けた。今後はビーガン城って呼ぼう。
それにしても……。
「僕、痩せちゃう……」
食べながら、ちょっとだけ嘆いた。
「大丈夫だ、ポチャ次郎。そんだけ食ってたら痩せねえよ」
「山盛りね、ポチャ次郎君」
「そうだけどぉ、野菜ってどんな食べても食べた気がしないし、カロリーゼロでしょ?」
「いや、するだろ。お前、そのどんぶり皿におかわり2回は行ったよな?」
「確かに、かなりのダイエット食よねぇ」
「女子はほぼ全員、痩せたよね、このひと月で」
やないさんも鈴山田さんも、嫌そうな言い方だけど顔は笑ってるんだよ。僕にとっては深刻な悩み。
身体より心がダイエットしちゃってる。ガッツリした物が食べたい。ドッシリ甘い物も食べたい。
「トンカツ食べたい、カツカレー食べたい、唐揚げ食べたい、ハンバーグ……ハンバーガーとポテト、ポテチ、アーモンドチョコ、バターどら焼き……、それと」
「ちょっと、ポチャ次郎、やめてよ! せっかく我慢しているのに、食べたくなるじゃないよ!」
「ポチャ次郎、一年我慢だ。日本に帰ったら一緒に食い倒れようぜ!」
「太郎君! うん、うん。コンビニのハシゴしよう」
僕はサラダをつつきながら太郎君と誓い合った。
そう言えば、お城の食堂でお肉はあまり(ほとんど)出ないけど、街のスーパーでも売ってないのかな?
国自体がビーガンなのか、このお城だけがビーガンなのか。どっちだろう。
「僕……バイト代入ったら、街のスーパーに行ってみたい」
「ポチャ次郎、市場な。この街にはスーパーもコンビニもないそうだ」
「市場……。何があるんだろ?」
「うーん、市場は……異世界も日本変わらないだろうな」
「そうだな、たぶん、野菜が積まれたテントとかがありそうだな」
「そうねぇ。野菜とか、野菜とか、野菜ね」
「え……、果物、は?」
「ああ! ありそう。あるかな、あるよね、きっと」
やないさんも異世界に詳しいのかな?
「パン屋さんはあるかな? あと、ケーキ屋さんとか」
「そう言えば、食堂のパンってどこかで買ってるのかしら」
「厨房で焼いてるって言ってたわ」
「それにしては硬くない? あーでも、そう言う種類のパンかな。フランスパンみたいな感じの」
お城の厨房でパンが焼けるなら、ケーキも焼けるのでは? 後でおばちゃんに聞いてみようかな。
あ、そうだ!やないさんが食べてた焼き鳥! あれも聞いてみよう。焼き鳥屋さんで買ったのか、ビーガン城の厨房で焼いたのか。
「ポチャ次郎、何かを決意した顔してるけど、行動する前に班に話せよ? 個人行動するな?」
「あ、うん……」
食堂内だからひとりで聞きに行っても大丈夫かなって思ったけど、日向君に怒られた。日向君には僕の考えてる事はお見通しなのかな。
「あ、あのね、おばちゃんに……これ食べ終わったらおばちゃんに聞きたい事あって」
「なんだ? こないだの実の事か? あれ、美味かったな。なんだっけ、名前忘れた」
「ヤマボウシの実な。美味かったな」
うん、美味しかった。2個しかなかったけどD班で分けて、ひと口サイズになっちゃったけど食べた。
見た目はキウイみたいに毛が生えていたけど、桃と蜜柑を混ぜたような味だった。そうか、桃も毛が生えている。毛が生えている実は総じて美味しいのかも。
「ヤマボウシがどこで採れるか聞きに行くのか?」
「違う違う。ビーガン城でケーキが焼けるか聞いてみたい。それとやないさんが食べてた焼き鳥、どこの焼き鳥屋さんかも聞きたい」
「ちょっ、ポチャ、お前、ツッコミどころ満載だな。なんだよ、ビーガン城って」
「いや、合ってる合ってる、まさにビーガン城じゃん」
「それと、何? 梁井、焼き鳥いつ食べたんだよ」
「昼のメニューに焼き鳥あったか?」
「あ、ほら、祝賀会の時の」
「董明も食べたのか!」
「B班のテーブルにあったの。この世界に来て初めてよね? お肉」
「うんうん、美味しいかったねぇ」
「と言う事はB班のやつらも食べたのか。くっそう」
「日向先生が食べてないって事はA班のテーブルにも無かったのか。俺らが付いたC班にも無かった。……B班だけ肉を」
「いいなぁ……。早く市場の焼き鳥屋さんに行きたい」
「待て、ポチャ。まずはおばちゃんに確認だ。鶏肉だけを手に入れて厨房で焼いたのかもしれねえ」
「だとしたら、肉の入手先を聞き出す! D班全員でおばちゃんとこに行くぞ? 早く飯食え、ポチャ次郎」
僕より、太郎君と日向君が行く気満々になっている。それと鈴山田さんも? 女神のような鈴山田さんが、今はタガセンみたいに腕を組んで立っている。え?早く食え? かしこまりました!
僕はサラダを口に突っ込み頬張った。
モッシャモッシャモッシャ、スキル高速咀嚼!
食べ終わった皿を下げながら、おばちゃんを見つけて声をかけた。
日向君がおばちゃんに色々と聞いてくれた。
結果。
街にケーキ屋さんは無かった。けれど多分厨房で作れるそう。多分、と言うのは、この世界(国?)はあまり甘味が発達してないようだった。
材料とレシピ(作り方)さえあれば、作ってくれるって。
「焼き菓子なら簡単に作れそうね。材料もそこまでこらないし。小麦粉と砂糖はあるし、あとは市場でドライフルーツがあれば出来そう。私、作れるわ」
「私もパウンドケーキとかマドレーヌなら作った事ある」
うわぁ、鈴山田さんと董明さんはお菓子が作れるんだ。神様はどれだけの才能を限られた人に与えるんだろう。美人で勉強も出来て運動もそこそこ出来て、お菓子も作れる!神か!
「わた、私……も、クッキーくらい、なら」
やないさん、無理しないでいいからね。僕なんか何も作れないから。前に綾香さんと挑戦して、『人に作ってもらった物は最高』と言う結論に辿り着いた。僕、食べるのは好きだけど、一生『作る側』にはいかない(いけない)。
「俺もクッキーは作れる。バレンタインのお返しは手作りクッキーだ」
日向君まで?
「俺はクッキーかな。小学校の時家庭科で作って、美味いと周りから賞賛された。流石、俺」
た、太郎君まで!
「大丈夫、大丈夫だよ? やないさん」
「失礼ね! 私は、クッキーが(多分)焼けるわよ!」
今、途中で『多分』が聞こえた……。
うん、話題を逸らそう。
「それで、焼き鳥屋さんは?」
「それも厨房で焼いたそうだ。肉はたまたま手に入ったんだと」
「市場でか?」
「そうらしい。やはり一度、市場には行っておくべきだな」
「まだお金無いわよ?」
「買わなくても、市場調査だ」
「市場だけに、な」
みんなは笑ってた。けど、僕には笑いのツボがわからなかった。
市場のしじょー調査の何が面白いの?
「ポチャコンビにさ、スキル生産の『狩猟・解体』があるだろ? 太郎にも次郎にも、狩猟を頑張ってほしいな。俺らの食生活のために」
「そうよねえ、一年もビーガン城にいたら、私、本当にビーガンになっちゃいそう」
「女子には必要だから、頑張って」
「おう、まかせとけ」
「うん、頑張るね」
女子には必要? 男子だって必要だよ。




