32話 帰還方法
帰れますよって言った? 今、帰れますよって言った?
耳をホジホジ。聞き間違いかと思ったけど、みんなの慌てようから、たぶん『帰れる』って言ったんだよね?
飛んできたタガセンが宰相さんに食らいついている。『帰還方法』はあるのだそうだ。
「ちょ、ビックリ」
「普通は無いよ」
「普通?」
「あ、小説とかの話だけど」
「だよな? あっても隠されていたり。あ、でも帰還できる結末の漫画もあるか」
「こんな最初に帰れる種明かし、ある? 起承転結の承と転がないじゃん。起、結」
「まあ、とにかく聞こ。呼ばれてすぐ帰れるとも思えないんだけど?」
「そっか」
今夜はもう遅かったので、帰還方法の詳細については、明日の祝賀会の後に話をしてもらう事になった。
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翌日の祝賀会は、みんな気持ちがどこかに行ってるみたいだった。一応、日向君のサインで並べられた料理の鑑定は行っていた。
ちゃんと食べられる物だった。怪しい物は入っていない。肉もほぼ入っていない。この国はビーガンなのかもしれない。
あ、やないさんが焼き鳥みたいなのを食べてる。
「どこでそれを?」
「もうない。あっちのテーブルにあった」
B班の前のテーブルには肉があったのかあああああ。くっそう。
祝賀会はやはり大人だらけ、子供は僕らイチクミだけだった。面白い催しもない、誰かが『政治家パーティかよ』とか言ってた。
誰だろ? 政治家のパーティに行った事あるんだ?
「結婚式の方がまだマシね。料理も美味しいしケーキも出るし」
「あ、私、親戚の結婚式に芸能人来てた事ある。従兄弟達が後ろをくっついて歩いてた」
「えっ、誰?誰? 誰が来たの?」
「どうせ、売れないお笑い芸人とかだろ」
「チッチッチ。それがかなりの大物有名人」
近くで盛り上がっているけど、結婚式は行った事ないし芸能人にも詳しくない。段々と話が遠のいていく。
「ポチャ次郎、寝るなよ?」
「ポチャ次郎君、お腹いっぱいでもう眠いんでしょ。私達、いつまでここに居ないとならないのかしら」
「オヤジの飲み会の最後までとか絶対嫌なんだけど」
「二次会とか三次会とかあるって前に姉貴が言ってた」
「結婚式に?」
「いや、新年会とか飲み会とかそういうの」
「俺たち、先に引き上げたらダメなんか?」
「ダメだろ? 主役だからな、俺たち召喚されし者は」
「おっ、それカッケーな。召喚されし者。ふっふっふ」
日向君がタガセンに聞きに行く前にタガセンの方からやってきた。
僕らは部屋へ下がってもいいって。大人の祝賀会は続くけどタガセンと宰相さんは抜けてきた。
どうにも眠気を我慢出来なくて、立ってるような?座ってるようなで、気がついたらベッドに入っていた。
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「説明!」
自分の声に驚いて目が覚めた。
説明を聞くまで起きていなくちゃと思い続けながら寝たせいで、眠りが浅くて(たぶん)、説明を聞く夢ばっか見てた。
夢だったのか本当に聞いた説明なのかも定かでない。
なので、朝食の時に食べながら太郎君にこっそりと聞いた。
「ええと、昨日の確認なんだけど……。聞いてたけど、確認ね」
「いや。ポチャ次郎、お前は完全に寝ていた。朝メシ食い終わったら部屋で話してやる」
「あ……ありがと」
うん、そっか。僕、寝てたのか。
部屋で太郎君から話を聞いた。
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あの後、僕らの部屋へ全員が集合して、そこに宰相さんがやってきた。みんなが知りたかった『帰還方法』の話を持って。
「我が国、王家に密かに伝わってきた話です。代替わりの際に継承されます。今回、幼い王子の継承にあたり私も立ち会う事になったのです」
宰相さんはそう前置きをしてから召喚について語り出したそうだ。
召喚を行えるのは『境の頂』の塔に行く必要がある。境の頂と呼ばれる場所にある塔だそうだ。
境の頂、そこはどこの国にも属さない場所。
「我が国、ブリンクランドからですと馬車で7日から10日でしょうか」
あ、この国、ブリンクランドって言うんだ。県内にあるドイツ村的なやつっぽい。やっぱりここって日本のどこかにある謎施設なんじゃない? ランドとか付いちゃってるし。僕が住んでいる県ってそういうの多いね。
それなら帰還出来ても不思議じゃないよね。帰りは地下鉄かな。
太郎君は話を続けた。
その塔で召喚の儀を行うと、ブリンクランド国内へと召喚された人が現れるんだって。
で、僕らが1番知りたかった帰る方法。
召喚の儀を行ったその『境の頂』の塔に魔力石をセットすればいいんだって。
あれ? 思った以上に簡単?と思ったが、その魔力石の量がハンパないんだって。
「で、その魔力石は、魔物を倒すと体内から取れるそうだ」
「って事は魔物をたくさん倒さないとならないって事か」
「そうなんだけど、それは大した問題じゃない。どっちにしろ俺たちはこの国の魔物を倒すために呼ばれたんだし、倒して魔石ゲットで一石二鳥だ」
「じゃあ、何が問題なの?」
「時間だ」
「時間?」
「宰相が言うには、魔石集めには期限がある」
「そ。360日」
日向君もいつに間にか横に来ていた。
「召喚陣を開いた日から360日目なら、『元の世界、元の場所、元の時刻へ戻る』と、記されていたそうだ」
「ええと? 360日目に魔石をセットすると……」
「そ。元の世界、日本へ。元の場所、ろく中2-1の教室に。元の時刻、4/7の朝9時に帰れるって事」
え、あの日の、あの朝、あそこに戻れるって事?
「とはいえ、あくまでも伝承にすぎない。確証はないそうだ」
「けど、召喚だってなんの確証もなくやってみたら、俺たちが来たってさ」
「帰れるんだ……、僕ら」
「問題はいくつかある。ひとつは魔力石の量。俺らにどこまで集められるか」
「やるしかないっしょ」
「問題①は魔力石集めだとして、それは皆で協力してなんとかする。だが、問題②」
「問題……2。もしかして、360日を越えた場合?」
「そのとおり。伝わっているのが『360日目』とある。って事は、360日より早くても遅くてもダメかもしれない」
「早めに魔石をプール出来ないのか」
「どうだろな。『360日目』とわざわざ伝えているって事は、そこがネックかもしれないな」
「僕らの召喚の前に、誰か使ってないの? その時の情報とか残ってないのかな」
「それがなあ、俺らの前の召喚は200年以上前だと」
「200年!」
「この世界の人間の寿命は俺らとあまり変わらないらしい。だから、前回の召喚からの生き証人はいないんだと」
「でも、360日で帰還って事は、ほぼ1年で使えるんでしょ?その召喚陣って。何で200年……」
「別にこの国が召喚を必要としてなかったら使わないんじゃ?」
「だよな。用もないのに毎年毎年呼ばれてもなぁ」
「まさか、その360日目を逃したら、次は200年後?」
「やめろよ、ポチャ次郎、怖い事言うな」
自分でも、怖い事言っちゃったって思った。




