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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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3/15

3話 なぜイチクミに

 3/20にクラス替え発表があった。


 衝撃。


 疑ってなかった、ちょっと前の自分。誰か、誰か嘘だと言ってください。



 3/20、職員室前の廊下に貼られたクラス替え発表の紙。

 廊下に群がる生徒の殆どが受験に受かった人のように大喜び。その中で、寿命が尽きたような顔をした生徒がチラホラ。


 背が高いから運動部かな。背は低いけど僕も同じような顔に違いない。

 

 なんか知らないけど、地獄のタガセンクラス『イチクミ』に僕の名前があるんですがああああ。


 今日、早退していいですか。


 草凪 陽一郎……、草凪陽一郎って僕? 何度見ても『イチクミ』に僕の名前が、ある。


 同じクラスから1組になったのは、僕だけ。味方はいない。恐怖のイチクミ、地獄のイチクミ……。

 どうしよう。不登校になる? それとも家出か、最悪……タヒぬしか。


 4組の教室に戻るとみんながやけに楽しそうに見えた。楽しそうに見えるんじゃない、確実に楽しいんだ。だって4組から『イチクミ』入りしたのは僕だけだもん。みんなには明るい未来が待ってる。

 なんで僕なんだ。僕だけ『イチクミ』なんだよ。



 いつ授業が終わったのか覚えてない。気がついたら家にいた。

 転校したい。

 どうしよう、親に相談?


 それは出来ない。相談出来るほど親と話をした事ないし。僕……、家族とそれほど親しくないんだ。

 一緒に住んでいるけどそれだけって言うか、普通の家族ってこんな時どうするんだろう。


 ベッドに腰掛けて悶々と考える。

 『転校させてください』って言えばいいのかな。でもどこに? 新しい学校に? 理由を聞かれたら?

 正直に『タガセンが怖い』って言う?



コンコン

「陽一郎、どした? もうご飯だよ?」



 ノックと同時に開いたドアから綾香さんが顔を覗かせた。綾香さんは父の妹、だから僕の叔母さん。

 小さい頃から僕は『綾香さん』と呼んでいる。うちは父を聡一郎さん、母を菫さん、兄や姉も名前で呼ぶ。


 家族がみんなそうしている。でも小学生の時に友達に話したら、変って言われた。普通の家では父をお父さん、母をお母さんって呼ぶんだって。

 お父さんだってさん付けじゃん。お父さんも聡一郎さんも同じようなもんだよね。


 そしたら『他人みたいー』って言われた。そうかな? 他人みたいな呼び方だから、家族が親しくないのかな。

 聡一郎さんにも菫さんにも転校の件をどう話していいか、わからない。てか、いつ帰ってくるのかも知らない。はあああ、前途多難。



「陽一郎、ご飯だよ?」


 綾香さんにもう一回言われてハッとした。そうだ、ご飯食べながら綾香さんに相談してみよう。

 僕は夜ご飯はいつも綾香さんと一緒に食べる。朝はひとり、適当にパンとか食べている。綾香さんは働いていて朝は早いんだ。でも残業はないから夜ご飯は一緒。


 食べながら恐怖のタガセンクラス『イチクミ』になった事を話した。タガセンの恐ろしさも話す。と言っても僕も周りから聞いた話ばかりなんだけど。



「噂ばかりだね。自分の目では見てないの?」


「……見た事は、ある。殴られてたとこ。たぶん、バレー部」


「今時珍しいな。ネットで晒されたらアウトじゃん。親とか出てこないのかな」


「なんかね、よくわかんないけど、謎の権力があるんだって」


「なんだそれ。とりあえず新学期に、行ってみてダメならその時に考えよう。一緒に家出するよ?」



 綾香さんが一緒に家出してくれる事になった。けど、イチクミを試してみてからだって。

 うぅ。行くしかないのかぁ。


 やだなぁ。




 やだなぁ、やだなぁと思いつつ終業式も終わり、春休みに突入した。春休みが永遠に続けばいいのに。



 うちの学校は4/5から新学期が始まる。そう、恐怖のイチクミが始まるのだ。

 春休み中、カレンダーを塗りつぶしていく。


 今日で3月も終わり、明日から4月。4/5なんてすぐにやってきちゃう。

 やだやだやだやだ。


 学校に行きたくないあまりに『4/5お腹痛くなれえ』とか考えていたら、なんかお腹が痛くなってきた。まだ3/31なのに。

 そのうちどんどんと痛くなって、とうとう尋常じゃない痛みになり、夜中に廊下を転げ回った。

 通りがかった誰かに痛みを訴えて、そのまま意識がなくなった。




 盲腸だった。

 気がついたら病院に入院していて、手術してた。


 よっし、このまま学校に行かなくてすむ。盲腸って1ヶ月くらいは入院かな。とか喜んだのに、4/5に退院になってしまった。


 まだ痛いからしばらく学校を休みたいとお願いしてみたけど、聡一郎さん(父)に却下された。

 一応様子見で4/6も休ませてくれたけど、7日から行くように言われてしまった。



「新学期には間に合わなかったけど、休めば休むほどクラスに馴染めなくなるわよ? 早くお友達作りなさい」



 普段滅多に会わない菫さん(母)に言われた。



「そうだぞ。明日から行けば、授業もまだ始まったばかりだからな。置いていかれる事もないだろ」



 聡一郎さんにゴリ押しされた。

 授業とか友達とかどーでもいいんだよー。タガセンが怖いの!




 そして4/7の朝はやってきた。

 運命には抗えなかった。

 ゆっくりと靴を履きながら僕は心から願った。


『もう一回、盲腸にならないかなぁ……』


(盲腸はおひとり様、一個である。by作者)


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