24話 ハンドサイン
A班はバレー部のハンドサイン使う事になったんだって。班での戦闘時のサインにするって言ってる。
「千谷まで回すサイン」
「おう」
「クイックはこれ」
「オッケー」
バレー部女子の方も3人で同じサインで練習をしている。ちょっと気になったので赤城君に声をかけた。
「ねぇ、バレーって6人だよね? 何で3人ずつ分かれているの? 男子部と女子部って仲が良くないの?」
聞いたらダメな事だったかな、シーンとしちゃった。
「あ、ごめ……」
「そうだよ!」
「そうだな」
「そうよ! つい部活のくせで別れてやってたけど、試合じゃないのよ」
「敵の魔物が男女別とか3人で対戦にくるわけじゃないし」
「審判もいねえ」
「魔獣の雄雌もわかんねえぞ」
「たしかに」
A班が変わった。今まで男女分かれて練習していたのが6人で組むようになった。
「試合じゃないんだから固定位置でいいよね」
「何かあって下がる事も考えてメインポジとサブポジは練習しとこうぜ」
「得意なポジとやや得意なポジで決めよう」
凄いな、流石はバレー部。
得意なポジとやや得意なポジ。不得意が無いんだ? 羨ましい。僕なら、『不得意』『物凄く不得意』『ダメ』『無理』『やっても無理』『出来そうにない』『絶対出来ない』『やるだけ無駄』『たぶん出来ない』……マイナス系ならたくさん浮かぶ。
うーん、『得意』が思い浮かばない。
運動以外で勉強でも芸術でも。
それでも僕は別に気にならないんだけど、学校って枠の中にいると、出来ないとダメで出来るまで頑張らないといけないのがキツイな。
出来ないものは出来ないのだ。
頑張らないでもササっと出来る子は偉くて、頑張っても出来ない子はダメ、それが納得できない気もするけど、綾香さん(叔母)は『そんなの気にするだけ損よ。好きに生きたもん勝ち』って言う。
だから僕も気にしない。
言いたい人には好きに言ってもらう。
『でも、たまに、極々たまにだけど、物凄くいい事を言う人がいる場合もあるから、人の話には耳だけ傾けておきなさい。他はほぼ聞き流していいからさ』
そうだ!僕の『得意』な事あった。
聞き流し、時々キャッチ。
バレー部の話に専門用語が出てくると僕の耳は聞き流しに突入した。
「前3、後ろ3、ただし少しズレる」
「ズレるって横に?」
「ま後ろに立たないって事か。敵が見えづらくなるからな」
「千谷が前列中央、ミドルブロッカーの位置、セッターが馬場で、オポジットが俺と……羅木。アウトサイドヒッターが百野、リベロが呉崎、いいか?」
うわー、バレー部が何言ってるかわからない。うん、流そう。
「待った、俺、ブロックって敵の何をブロックするんだ?」
「…………」
「……」
「敵の……攻撃?」
「相手がどんな攻撃をしてくるか……にもよるんじゃない?」
「どんな?」
「魔法攻撃、向こうもファイアボールとか水攻撃とか。体当たりとか物理攻撃の敵もいるかもだし。大きな岩を投げてきたら……」
「俺、ブロック出来ないぜ?」
「試合のようにはいかないな」
試合のようにはいかない……僕の耳がキャッチ。
「試合じゃないなら先手必勝、打って打って打ちまくり?」
「ナイス! ポチャ」
「ポチャ次郎の言うとおりだ」
「待つ必要なかったな」
「敵認定したら速攻だな」
「サーブも威力のあるやつ練習しようぜ」
「百野の弾丸サーブ!」
「呉崎のジャンプサーブもね」
「トリプルファイアボールが俺らのメイン攻撃になるかな」
ふと疑問が口から出た。
「6人いるんだから……あれ? 3人でトリプル、4人でカルテット、5人は……なんて言うんだろ?」
バレー部がコート(?)の中から全員こっちを見た。
「ポチャ次郎、で?」
え、知らない。
「5人はクインテット、6人はセクステット」
隣にはいつの間にか竜崎さんが立っていた。
「流石、吹奏楽部」
あ、久遠さんも居た。C班の女子ふたり。
「セックステッドぉぉ」
「マジかぁ、俺らセックステッド」
「違う! セクステット!」
竜崎さんが怒鳴る。
「えええ、男子はよくても私らちょっと、セック……もにゃはねえ?」
「だから! セクステット! 6人組とか6人編成って事よ!」
「クイーンテットの方が良くない?」
「ひとり余るけど」
「それ、クイーンじゃない! クインテット。5人組、ラテン語よ」
竜崎さん、キレまくってる。
「クインワン攻撃とかどお? 名前決めて、6個のボール合体攻撃はラスボス用にするとか」
「そうだな。敵の強さで確個攻撃で倒すか、コンビ、トリオ、カルテット、クイン、クインワンだな」
「なんか超ぉ格好良いな」
「練習しようぜ、練習」
A班の練習に力が入った。
あ、ハンドサインの事を聞きにきたんだけどな。いいや、今度で。今、A班は止めちゃダメな気がする。




