20話 鑑定スキル
僕と太郎君が深く誓い合っていた時、中央の広場ではC班がスキル訓練を開始しようとしていた。
が、慌てて止めて、全員で食堂へお昼ご飯を食べに行った。
ご飯は大事。全員が無事元の世界に戻るには、まずは各自の体調管理が最重要だと、タガセンが言ってた。
『食べて動いて頭も使え!』
うわぁ、最後のは苦手。食べて動くまでならなんとか。
待てよ……、頭を使え……、つまり、頭を使って。
頭をグリングリンと動かした。
「ポチャ次郎! それは違う」
「次郎、そっちの使うじゃない」
「あほかっ、ポチャ次郎」
数人から同時にツッコミがきた。
「頭部じゃなくて頭脳を使うのよ」
鈴山田さんが優しく説明してくれた。うん、わかってたよ、多分そっちなんだろうって。でも、ちょっとだけもしかしてと思っただけだから。僕、そこまでおバカじゃないから。
お昼ご飯が済んだらまた中庭でスキル訓練だ。
広場に中央でC班が訓練を始めた。僕らD班はまた暇だ。
「ねえねえ、別に広場でなくてもここで出来る事しない?」
「だよね。見てるだけって時間が勿体無いよね」
「そうだな。鑑定ならここでも出来る。まずは鑑定スキルを訓練しよう」
日向君の指示でD班はその場で鑑定をしていく。そこら中を鑑定。
「あれ? 人は鑑定出来ないわね」
「レベルがまだ低いか、経験が浅いのかもしれないな」
「とりあえず雑草や木、建物の壁を鑑定、お互い同じ結果か擦り合わせるぞ」
「使える回数もカウントしましょう」
「そうだな」
僕らは地面向かって鑑定を続ける。
「鑑定は魔力と無関係なのかな」
「永遠と鑑定出来るな」
「しかも同じ結果。草、草、草、草、草。見ればわかるって」
鑑定は結果が頭に浮かぶ。それをお互い口に出して確認していた。
鑑定より口が疲れた。
しかもかなりシンプルな結果しかわからない。『草』と出るだけ。草の名は出ない。
「草、草、草、石、土、草、草、草……草多いな! ポチャ次郎、少しあっちに移動するぞ」
「遠くに行くなよ」
「大丈夫だ、建物の壁まで行くだけだから、ポチャ次郎、来い」
「はーい。うっ……足が痺れて動けない」
「ちょっとポチャ次郎ぉ、別に正座してたわけじゃないのに何言ってるのよ」
「やないさん! デブを舐めないで! デブはしゃがんでるだけで足が痺れるんだからね!」
「あ、それは、ごめん」
「ちょ、やめて、太郎君っ!」
太郎君が落ちてた枝で僕の足をツンツンしてきた。ビビビリリ!ぎゃわわわー。
「タロジロ、ふざけてるとタガセン来るぞ!」
「はわっ」
「すんません! 枝、枝、枝、草、草……」
僕らは慌てて鑑定を続けた。
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夕飯後は、僕ら1班の部屋に全員が集まりクラス会議を開く。今日1日の反省とか問題を話し合う。
「A班、収納系がないけど大丈夫? 特に女子」
「個人的な物はゆかちゃん達に預かってもらってる」
『個人的な物ってなに? 僕、自分の物って着替えくらいだけど、ベッドに置きっ放し』
小声で近くに居た太郎君に聞いた時、他の人にも聞こえっちゃったみたい。
「着替えは置きっぱなしにしたくないよね?」
「でも洗って濡れたまま収納したら雑巾臭くなりそう」
「ちゃんと乾かしているわよ! 羅木も百野も私も風使えるんだから!」
スキルの風魔術ってそんな使い方が? いいな、便利そう。
「男子は?」
濡れたまま洗濯物を収納している一団が目を泳がせている。僕は、ベッド横のテーブルに出しっぱなし。えと、乾かしているんだよ? しまい忘れじゃないよ?
「おら、出せ、今なら乾かしてやるぞ」
赤城君が言うと、数人が濡れた洗濯物を差し出した。うちの部屋には魔術使いの赤城君と千谷君がいるので有難いな。ふたりとも優しいし良い人だし嬉しい。
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スキル訓練から数日が経った。
初めは『草』としかわからなかったのに、初めて草の名前が判明した。
「スキルが一段階上達したのかな」
「でもまだ名前だけだ」
「とにかく毎日使いまくろう」
「他のスキルも使用しないと最低レベルのままだよね」
「でも鑑定以外だと生産スキルしかない。生産は外に行かないとだし」
「外はまだ行けないっしょ」
「あ、俺と董明さんはマッピングある。それと鈴山田さんの魔法移動」
「え、でも、マッピングや魔法移動、それと収納系は隠しておくのよね?」
実はクラス会議で、スキルの幾つかは秘密にしようと言う話になったのだ。もしもこの国から出ないとならなくなった時、僕たちだけが知っているスキルがあった方がいいって。
「うーん、でも無理があるよな」
「そうなのよね。外で生産系スキルを使用したらいずれ収納も使うはめになるだろうし」
「この世界にはないのかな? 魔法移動とかマッピングとか収納に似た魔法?」
「そのへんも調べてみようか。似たものがあったらオープンにしてもいいんじゃない?」
「日向君、マッピングってどんななの? 使ってみた?」
「いや、実はまだ。詠唱と言うか唱えてはみたけど特に何かが起こったりはしなかった」
「マッピングって結局何なの? 誰か書き写したよね?」
「待って……ノートに、スクロールの詳細を記入した。ええとね、地図作成、レベル把握だって」
「地図作成は何となくわかる。ゲームでよく見るシステムだよな。プレイヤーが一度行った場所はマップが作成されるってやつ」
ふうん、そうなんだ。僕、ゲームやった事ない。
「レベル把握って何かしら?」
「何のレベル?」
「さあ?」
「ゲームだと地図作成だけなんだけど、わざわざレベル把握って書いてあったじゃない?」
「あ、マッピングって、関連付けとか可視化って意味もあるよね」
日向君と、董明さんと鈴山田さんの3人はとにかく頭がいい。
一年の時もテストの上位でいつも名前が貼り出されていた3人だ。あ、董明さんの名前が読めなくて友達に聞いたっけ。
聞いたけどモヤっと覚えてるだけで書けと言われても書けない。
みょうは明るいって字だったのは覚えている。3人はなんか難しい話に突入していく。
てか、マップの菓子かって何だろう。
「董明さん、私をマッピングしてみて」
「あ、ゆかでいいよ」
「あ、そうだった。私をマッピング出来る? ゆかちゃん」
「ん……」
やないさんの苗字も難しい漢字だな。
この世界へ来た時にみんなが着ていたジャージなら胸のとこに名札が付いてたけど、今はこっちの(ヘンテコなローマ人ぽい)服に着替えちゃってるから残念。
あ、いや、服がダサくて残念って意味じゃなくて名札が見れなくて、の意味。まあどっちみち小さ過ぎてよく見えなかったけどね。背中に大きくゼッケンみたいに苗字を書いてくれないかな。
「ああ! わかる、これ面白いスキルだね」
「なになに? 何がわかるの?」
「ええとね、梁井さんは、鑑定、生産、生産、倉庫……って、スキルが羅列して見える。でも簡易版なのか、生産の内容は見えないから『生産』がふたつ並んでいてどっちが何かはわからない」
「なるほど。マッピングも経験値を増やせばもっと細かく見えるのか」
「なんか鑑定っぽいね?」
「レベル把握って割にレベルっぽい数字とかは出てないんだ?」
「うーん、今はまだ見えないだけなのかな? スキルはどんどん使っていったほうがいいって事で」
「それと、使えない時があるのか、どんな時に使えないのかも実際にやってみないとだね」
「今夜の夜会で議題に出そう」
「で俺らはここで今はひたすら鑑定するしかない」
うん、スキルの訓練はする。けど、人のレベルは見たくないな。それに見られたくない。
だってさ、きっとみんなの『人間レベル』が100だとしたら、僕はきっと2か3くらいなんだ。見なくてわかるから。
(人にレベルなどは無い。by作者)




