19話 中庭訓練
僕らはお城の中庭でスキルの訓練をする事になった。それが決まるまでに少しだけ揉めた。
「この国が敵かもしれないんだろ? スキルは隠しておいた方がいいじゃね?」
「でも隠したままだと俺ら自身が訓練出来ないぞ?」
「うーん、確かに」
「ある程度はオープンにするしかない」
「そもそもスキルの使い方もわからないし、魔法とかさ」
「俺、剣術取ったけど、剣だって握った事ないからな」
「それは俺も。みんなそうじゃね?」
城之内君達が振り返ってタガセンを見た。タガセンは建物の壁に寄りかかって座ったまま、微動だにしない。目は開いているから寝てはいないと思う。
城之内君が話を続けたって事は、タガセンは僕らの意見に反対ではない。
で、どっち? オープン?隠す方? 僕にはまだまだタガセンを読む事は難しいな。
「じゃあ、中庭訓練ではスキルをどんどん使って行こう」
あ、オープンの方ね。
『ここから出る事になった時にはスキルがフルに使えるようにするぞ』
城之内君が声を抑えて話した。タガセンに聞こえないようにではなく、建物や中庭のあちこちに立っている警備の兵士を気にしたのかも。
訓練はスキルで分かれた。部屋の班とは別、と言ってたアレか。
え? 白い部屋で決めた班? 覚えて……ない。僕何班だっけ。
「ポチャ次郎はこっち」
太郎君に腕を引っ張られた。連れていかれた場所にいた鈴山田さんに紙を見せられた。
ああ、前衛がどうとかで決めた班か。
「訓練もこの班ごとに行うんですって」
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A班:前衛
赤城 火、水、風、土、魔法武器、マッピング
馬場 火、水、風、土、魔法武器
千谷 火、水、風、土、魔法武器、魔法移動
呉崎 火、水、風、土、魔法武器、マッピング
羅木 火、水、風、土、魔法武器
百野 火、水、風、土、魔法武器、魔法移動
B班:前衛
百目木 体術、剣、槍、双剣、投技、ポーチ、マッピング
江崎 体術、剣、槍、双剣、投技、ポーチ
船橋 体術、剣、槍、双剣、投技、ポーチ、魔法移動
夏原 体術、剣、槍、双剣、投技、ポーチ、マッピング
大野 体術、剣、槍、双剣、投技、ポーチ
ファリタ 体術、剣、槍、双剣、投技、ポーチ、魔法移動
C班:中衛(前衛補助)
剛力 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス
城之内 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス
井伊 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス
久遠 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス
竜崎 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス
漆原 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス、
魔法移動
D班:後衛部隊
日向 鑑定、生産(採)、生産(育)、亜空間倉庫、マッピング
善哉 鑑定、生産(採)、生産(狩)×3、亜空間倉庫
草凪 鑑定、生産(採)、生産(狩)×3、亜空間倉庫
鈴山田 鑑定、生産(採)、生産(育)、亜空間倉庫、魔法移動
董明 鑑定、生産(採)、生産(育)、亜空間倉庫、マッピング
梁井 鑑定、生産(採)、生産(育)、亜空間倉庫
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あ、今度の紙にはスキルが書かれている。誰が何を取ったかがわかる。(よかった、自分が何を取ったのかわかる。つい忘れちゃうからね)
ええと、僕は、鑑定、生産(採)、生産(狩)、亜空間倉庫か……。多いな。
あ、でも、太郎君と一緒だ。スキル名は覚えなくていいや。太郎君といつも一緒にいて同じ事をすればいいかな?
「私達D班は、鑑定と採取系の生産が全員一緒ね。あと、亜空間倉庫」
「そうだな。その3種は同じ訓練が出来る。董明、倉庫使ってみたか?」
「使ったわ。便利よ〜、日向君は?」
「俺もここに着いた晩に早速使ってみた。部屋でこっそり出来るからな」
「私も」
「私も使ったー」
日向君も女子3人とも、もうスキル使ってみたんだ?
太郎君、太郎君は? 太郎君が僕に向かって親指をグッと差し出した。どっち? 使ったの?まだなの?
僕らはタガセンから『個人行動』を禁止されている。それどころか、出来る限り全員で行動するように言われている。
だから、班別の訓練と言ってもあまり場所を離れられない。
中庭は、庭の範疇を超えるくらい広いけど、壁や草木で複雑だ。だから今は広めの場所でA班の訓練を見学している。
あまり近すぎると魔法が飛んでくるかもしれないので、広場の真ん中にA班、そこから残りの班が離れてそれぞれ固まっている。
A班は魔術特化スキルだ。僕ら日本人は魔法なんて使った事がない。それでタガセンから警備の兵士に話してもらい、魔術を使える兵士さんを紹介してもらったんだって。
だから、今はその兵士さんがお手本を見せている。
兵士さんの手の平から、ブワっと炎が的へ向かって飛んでいく。的はそんなに遠くない。5メートルくらいかな?
火は的に当たり消えた。火は消えて的はそのまま。かなり頑丈な的なのかな?
A班のみんなも手から火の玉を飛ばし始めた。人の手から炎が出る光景は凄く不思議。不思議で綺麗、まるで花火みたい。
「あんま迫力ないな。火魔術ってあんなもんなん?」
「どうだろうな。まだ始めたばかりだからな」
「威力ないわね。綺麗だけど魔物なんか倒せないんじゃない?」
「的まで届かない人もいるわね」
僕らが思った事は少し離れた場所に居たB班C班も同じく思ったようで、ヤジがあがった。
「どうしたー! バレー部! そんもんかああ!」
「そんなんじゃ全国に行けないぞお!」
「バレー部の底力を見せてみろ!」
全国……火魔術の全国大会。
赤城君達が的に向かって火を打ち続けてる。でも段々と的まで届かなくなって、地面に座り込んだ。
「MP切れか」
「ゲームなら、そんなとこね。魔力切れまで何発打てるのか」
「あ、私、カウントして記入してる」
「流石、リカちゃん」
「鈴山田さんってリカちゃんなんだ」
「うん。梁井さんもそう呼んで。梁井さんは呼び名ある?」
「名前……は、小っ恥ずかしいから梁井でいいですー」
「そうなんだ。董明さんはユカちゃんって呼んでるわよ」
「うん、私、董明ゆかり」
なんか、女子が仲良くなってる。僕には無縁の世界だけどさ。
とか、思ってたら董明さんがクルリとこっちを見た。
「ポチャ次郎君もユカちゃんって呼んでいいのよ?」
「いえいえいえいえ、ぼぼぼ僕は董明さんで」
びっくりしたびっくりしたびっくりした。
「ポチャ次郎、俺の事は太郎様と呼べ」
「俺の事は日向大先生でいいぞ」
はいはい。
魔術チームのA班が休憩に入り、代わりに広場の中央にB班が出て行った。
B班は剣とか槍の実技チームだったかな。よく覚えてないけど身体をはったスキルだったような。
こっちも兵士さんに剣を借りて振り方を教わっていた。おっかなびっくりに剣を振っているけど、気持ちはわかる。
うっかりしたら自分の足を切っちゃいそう。怖い。怖すぎる。僕、D班で良かった。
「始めたばかりだから仕方がないけどさ、スキルってどれだけ俺らの補助になるんだろうな」
「そうねぇ。少なくても魔法の無い世界の私達が手から火を出せる程度の補助にはなるわね」
「多分、私が剣を持ってもあそこまで振れないわ。もしかしたら持ち上がらないかも」
「結構重いのよね、武器って」
「ってことは、スキルもそれなりに役には立っているのね」
「詳しくは、宰相一行が戻ってからの話になるだろうけど、俺ら城塞の外に魔物退治に行かされるっぽいぞ」
「マジかあ、そんな気はしてた。使い捨て系勇者かな」
「使い捨てる気かどうかはわからないけどな、タガセンが言うみたいにイチクミ全員が生き残るためには、もっとガシガシとスキルが使えるようにならないとな」
日向君、どうやって情報を入手したんだろうと、不思議に思うよりもその話の内容に僕はビビり続けた。
「城塞都市を囲むように塀は作られているんだが、最近はそれを越えて魔物が入ってくる事もあるそうだ。俺らは多分、まずはその魔物退治、もしかすると城塞都市の外側、もっともっと外へ行かされるのかもな」
「それって、魔物もたくさんいるって事だよね」
「そうだろうな。だからスキルを持った異世界人を召喚したんじゃないか?」
「この国の人も魔法は使えるのよね。さっき兵士さんも使ってたじゃない? 何で国民でなんとかしないのかな」
「なんとか出来ないから召喚したんじゃない?」
「スキルを持っている人が少ないのかな」
「使える者も少ないですが、使える力が衰えていってるのです」
びっくりした!
背後から、突然兵士さんがきた。すぐ近くにいたのに気がつかなかった。
「すみません、昼食のお声がけにきたのですが、お話が耳に入ってしまって……」
兵士さんではなくて食堂の人だった。こっちの人の服がイマイチわからない。
みんな布を巻いてる感じなんだ。あとは膝丈スカートみたいのか、ロングドレスみたいの。男性も女性も。
「昔は国全体を包むように結界があったのですが、その結界が薄れてきているのでしょうか、彼方此方で小物の魔物の侵入を許している状態です」
昔は小さい魔物も入ってくる事はなかったんだって。小さいのでも入ってくるって事は、大きい魔物は……。
「小物が入れるって事は、大物なら……」
日向君もそこが気になったみたい。
「大物が結界壁を壊して侵入すると近くの村は全滅します、国の中央から駆けつけた騎士団でなんとか追い返します」
痛そうな苦そうな顔をしている。もしかして、大物が来ちゃった村の関係者なのかな。これ以上、聞かない方がいいかな。
でも……。ひとつだけ、教えて。
「倒さないんだ。追い返すの?」
「倒せればいいのですが、精々が中型までですね。それも2個騎士団、30人ほどでやっと」
「だからお肉が少ないのか」
「いえ。魔物の肉は食べられませんよ。毒なのか、昔食べた人が腐って死んだと言い伝えられています」
「え、うっそ。肉が腐ってたじゃなくて食べた人が腐るの?」
衝撃だったけど、聞いておいて良かった。
「肉の食えない世界」
「召喚された先がビーガンだった……」
「あ、たまに取れる鳥や小動物なら食べられます」
「次郎、やるしか無いな」
「うん。太郎君、僕らがやるしかない」
「タロジロ、お前らにかかってるかんな、俺らの食糧番」
生産(狩猟)! 僕は頑張るよ。(お肉のために)




