148話 大事件?いや、異世界ありがち事件
本郷中学の帰還に伴い、同時に帰還をした自衛官から報告を受けた。
『彼方にある十二の召喚陣のうち、八番目の召喚陣により召喚され、そこを利用して本郷中学の生徒十七名及び、緑陽中学の生徒一名、芽木つくり中学の用務員一名を救出、帰還の運びとなった。
彼方の召喚陣は八番まで使用済みを確認。九番から十二番まで残り四回の召喚・帰還が可能である事を確認した。
ついては八番で召喚に参加をした緑陽中学の生徒四名及び教諭一名は、作業に参加の為、帰還を次回九番まで延長』
「子供をあちらに残したのか?」
「はい。向こうでの作業に必要との事です」
「作業? 情報の引き継ぎはこちらで十分行ったのではないのか?」
「それがですね、こちらの報告書にあるのですが、どうやらあちらでスキルが復活したようです。スキル復活の場合、隊の速やかなる活動の為にある程度の補助の要請をしておりました」
「復活したのか」
「はい。初回の召喚時に取得したスキルが出現したようです」
「そうか。……なるほど。だが、隊員のスキル取得はならなかったか」
「ええ、残念であります」
「四名の親御さんは大丈夫なのか?帰還が延長された事で苦情がくることはないだろうな」
「はい。前もって予想される件に関しては事前にサインをいただいてあります。それにそれほど長くはなりませんので」
「次の帰還で戻る、か。九番目の召喚は?」
「はい。25名全員自衛官です。その後の帰還に生徒四名、田川教諭が入ります。『魔法移動』スキルがいなくなると彼方での移動に時間がかかりますが仕方ありません。子供を長く彼方にはおけませんから」
「そうだな。……隊員のスキル取得を期待していたんだが。誠に残念だ」
と言う事で、9回目の召喚で自衛隊員が向こうへ飛び、それからさほど長くは待たずに、タガセンと城之内達4人が帰還してきた。
事件は帰還した五人の身に起こった。
「あら。あららら? 亜空間倉庫が使えるわ」
「え? うっそ、やだ! マジ使える!!!」
「何だってええ?」
「何だと?」
普段冷静な城之内もタガセンも、声をひっくり返して驚いていた。
董明同様、亜空間倉庫を持つ梁井が入れっぱなしだった薬草を手のひらに出したりしまったりしている横で、漆原と城之内も収納ボックスを試している。
「他のスキルはっ!」
「鑑定っ! 鑑定っ!」
「回復!」
その場で使えるスキルを試している生徒を横目にタガセンだけは唯一持っていたスキルがテイムなので、試せないでいた。
「野良猫、野良猫はいないか? チッ、いや、この際、虫でも……アリ、どこかにアリは……」
タガセンがしゃがんで地面の上を探しまわっていた。
一瞬ポカンと見ていただけだった自衛官が、いきなり駆けていった。上に報告に行ったのである。
その後は、前代未聞の大騒ぎであった。
が、組織の人間、国の上層部は疲れていた。
13歳、中学二年生の子供(若干名大人含む)175名の、神隠しのような行方不明事件が発生したかと思えば、今度は突然戻ってきた。だが、全員ではなく小出しで戻ってくる。
そして戻った子供らは皆が口を揃えて『異世界へ召喚された』と言う。
学校の教室で起こった白昼の神隠し、そして同じく昼日向の人目もあるその場所へ突然戻る生徒達、漏れ出る情報は止められず、行方不明者の家族への対応、学校への指導、マスコミ、世論は容赦なく言いたい放題。
「神隠しとはもっと密やかなものではないのか?」
高齢の政府関係者がそう愚痴りたくなる気持ちも理解できた。
「時代かも知れぬ」
「若い者に任せるさ」
「わしらは外(海外)を、抑えましょう」
組織の上層部から何人かが体調を理由に降りた。後任を任された者は言いたい事を飲み込んだ。
『わしだってもう初老だあ、異世界なんか知らん!』
よくわからないが、『異世界』がある体で組織の活動が進んでいく。
『異世界』とはなんぞやと頭を抱えたが、孫に教えてもらった。
その世界、地球ではない異次元の別の国、のようなものか。行方不明の子供の救助が済んでしまえば、次は『利用価値』があるかどうかだ。
行ける回数が限られているのなら、その間、有効活用しない手はない。
そして、向こう(その異世界)で使えたと言う漫画のような能力が、なんと、なんとこちらに戻った5名が、こちらでも使えると報告が来た。
もう、どうにでもしてくれ。
ささくれる気持ちに蓋をして、すぐさま現地入り、自分の目で確認を………、はぁもう面倒くさい。
-----(その頃のイチクミ、ポチャ次郎視点)-----
「大変大変大変だああ!」
休憩室でお菓子を摘んでいたところに、太郎君が飛び込んできた。
「どうした? 太郎」
「城之内達の様子を見に行ったんだよな?」
「董明さん達、今朝、無事に戻ってきたんだよね?」
「そうなんだけど、なんか隊員達に囲まれてどこかに連れていかれたから気になって探りに行った」
「まさか……。城之内達が謎の病原体を持ち帰り……ゾンビに」
「ゾンビにはなってねえよ!」
「ん? ゾンビには? って事は別の何かになったのか?」
「あー、ええと。俺が見たわけじゃないんだけど……」
「いいから話せ。何になった?」
「あ、いや、なった……んじゃなくて、いや、なったのか?」
ええっ! 城之内君、ゾンビになっちゃったの?
「ゾンビって、元に戻せたっけ? 解呪? 解呪スキル誰だ?」
「いやもう誰もスキル持ってねえよw」
「違う違う、ゾンビはおいとけ! 城之内達、スキル持ってるって」
「えっ?」
「はあ?」
「すまん、もう一度頼む」
「だぁかぁらぁ、城之内達スキル持ったまま帰還したってえ!」
「「「「「はああああああ?」」」」」
びっくりした! みんなが一緒に叫んだ!
「落ち着け、みんな!」
「落ち着いたから、もう一度言ってもらえるか?」
「城之内達が、こっちでも、スキルを使えるらしい!」
太郎君のそのひと言で、いきなりみんなが振り返った。
「ポチャ次郎、そうなのか? スキルが使えるのか?」
「え……? 知らない、知らないよ、使えないよ。あ、あっちでは使えたけど……」
「ちょっとお前、倉庫か鑑定を使ってみろ」
「どう言う事だ?」
「いや、もしかして長く向こうに居てスキルが固定されたとか……。俺ら360日ぴったりで戻っただろ?」
「そうなのか? ポチャ次郎」
「え、知らない知らない知らない」
「ほら、これ倉庫に入れてみ」
赤城君にチョコを渡された。
亜空間倉庫ってどうやって使っていたっけ? 向こうでは何となく自然にやってたから、今、改めて、倉庫に物を入れろと言われるとやり方が……。
ええと、いつもお腹の前あたりに持っていくと、入れたい物が消えたはず……。
ポトリ
消えない。しまえない。
チョコは床に落ちた。
拾ってくり返すけど下に落ちるだけ。
「あの……しまえない、ん、だけど……」
「そっか。じゃあ、それ鑑定してみてくれ」
「……かんてぃ……、鑑定、かんて…い。特に何もわからない。見た感じチョコ?」
「まぁ、チョコだな」
「チョコだからな」
「ポチャ次郎はスキルが使えないのか」
「太郎、スキルが使えたのは城之内だけか?」
「あ、いや。城之内と董明、それと多分漆原達も」
日向君が名探偵みたいに顎に手を置いてる。僕が同じポーズをするとヨダレを拭いてるみたいになる。
「もしかすると、再召喚、再帰還が関係しているのかもしれない」
「再帰還……」
「俺たちは異世界に召喚された。スキルを取得して向こうでは使えた。けれど帰還後は使えなくなった」
「そうね。異世界だけの特権だったって思ってた」
「地球に戻ってスキルは無くなったのではなく、身体の奥深くにしまわれただけ、かもしれない」
「なんかカッコいいな。身体の奥に封印されしスキル!」
「それが再召喚で呼び起こされた」
「また地球に戻った時にしまわれなかったん?」
「呼び醒まされしスキルは、我が身体に深く刻み込まれた!」
「太郎、お前ちょっと黙れ」
「太郎君……」
「太郎、お前のスキルはまだ眠ったままだかんな」
「あれぇ?」
太郎君が飛び込んできた後に、僕らを呼びにきた自衛隊の人に連れられて、また健康診断みたいなのをされた。
それとなんか沢山質問もされた。
僕は2度目の健康診断だけど、みんなは何度もやったんだって。男子も女子も怒ってた。
「おい、採血とか言って血を抜くなら、今日の晩飯は分厚いステーキにしろよな!」
「もうマジやめてほしいんだけど! 見て、腕が穴だらけよ」
「ねぇ、城之内と漆原って回復スキル復活したかな? 採血のアザだらけの腕、綺麗にしてくれないかな」
「担当さあん、城之内達に会えるのいつぅ?」
-----(組織)-----
帰還した五人にスキルが現れた。向こうで使っていたスキルだそうだ。
同じクラスの生徒達も念の為、検査と聴き取り調査を行った。スキルはやはり、今回帰還した五人だけだった。
まだ理由は不明であったが、『再召喚・再帰還』の線が濃厚ではとの意見がある。
試すのは簡単だ。
召喚はあと3回残されている。
計画では残り3回で、自衛隊、学者、組織上層部が彼方へ渡る予定であった。
組織上層部は、未知の世界の未知の資源を期待していたようだが、たった3回では何も出来ない。人も作業に必要な物資を送る事も不可能だ。人ひとりが持てる荷にも限りがあるからな。
実は9番目の召喚で自衛隊を装甲車に乗せたらしいが、召喚後に車は残されたらしい。人間だけが向こうの世界へと渡った。ただし身につけた荷物は一緒に行ったそうだ。
結局その事もあり、『未知の資源をこちらに』という夢は消えた。せいぜい、謎の世界の調査、程度にとどまった。
だが、である。
だがしかし、こちらの世界で、彼方の魔法が使えるとしたら、話は全く変わってくる。
一度は消えた計画が、むくむくと起き上がり始めた。
今回、スキルを所持したまま帰還した5名。以前に提出されていた書類をファイルから取り出す。
今回、組織内でパソコンの使用は禁止されている。今の世の中、データはどこからでも盗まれまくるからだ。
全て紙での使用になっている。まぁ、紙でも漏れるので隠す意味もないがな。
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担任教師 田川 生産(育)
城之内 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス
漆原 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス、魔法移動
董明 鑑定、生産(採)、亜空間倉庫、生産(育)、マッピング
梁井 鑑定、生産(採)、亜空間倉庫、生産(育)
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亜空間倉庫があれば、装甲車どころか何でも彼方へ運び放題だろう。あちらに日本の基地を作るのも可能だ。
衛星を飛ばすための材料も送れる。
とは言え、あとたった3回か。
急遽、会議が開かれた。
「計画の変更を伝えたいが、向こうに連絡出来ないのが厳しいな」
「次の第十回召喚日は既に決定している。第九回の召喚者に予定表を持たせたからな」
「第十回のメンバーと召喚日は変えられない。せめて残り2回の召喚のメンバーを変えたい」
「それは……まさか」
「召喚経験者を、再度、向こうへ送りたい」
「子供ですよ?」
「だがスキル保持者ではある。今は表面に出てはいないが保持している事が確定した今、それを使えばこの先どれだけの事が可能となる事か」
「ですが、未成年者ですよ? 強制は出来ません。それと保護者の承諾も必要になるでしょう。ようやく戻った子供を再度未知の世界へ出す親が居られるでしょうか」
「説き伏せに時間はかかるだろう。だが、第十回の召喚日はもう決定している。向こう側に連絡が取れない以上、その日時までに変更計画書を作り、向こうへ行く者に持たせる」
「手元の資料を見てくれ。緑陽中学の生徒、残り20名のスキル一覧だ」
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赤城 火、水、風、土、魔法武器、マッピング
馬場 火、水、風、土、魔法武器
千谷 火、水、風、土、魔法武器、魔法移動
呉崎 火、水、風、土、魔法武器、マッピング
羅木 火、水、風、土、魔法武器
百野 火、水、風、土、魔法武器、魔法移動
百目木 体術、剣、槍、双剣、投技術、ポーチ、マッピング
江崎 体術、剣、槍、双剣、投技術、ポーチ
船橋 体術、剣、槍、双剣、投技術、ポーチ、魔法移動
夏原 体術、剣、槍、双剣、投技術、ポーチ、マッピング
大野 体術、剣、槍、双剣、投技術、ポーチ
ファリタ 体術、剣、槍、双剣、投技術、ポーチ、魔法移動
剛力 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス
井伊 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス
久遠 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス
竜崎 弓、付与、体力回復、回復、解毒、解呪、収納ボックス
日向 鑑定、生産(採)、亜空間倉庫、生産(育)、マッピング
善哉 鑑定、生産(採)、亜空間倉庫、生産(狩)×3
草凪 鑑定、生産(採)、亜空間倉庫、生産(狩)×3
鈴山田 鑑定、生産(採)、亜空間倉庫、生産(育)、魔法移動
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「う、うむ……」
「やはり、亜空間倉庫と魔法移動は外せない。回復に付与か。どれも魅力的だl
「草凪は外した方がいいでしょう」
「何故だね? 亜空間倉庫はあるだけ欲しいぞ。複数箇所で同時に作業が可能になる」
「この生徒は先日戻ったばかりですよ。それに、例の、草凪家の直系末子です」
「ああ……あの」
「ええ。もう施設内で当たり前のように一族が闊歩していますよ」
「まぁ、聞くだけ聞いておけ。軽くだ。聞くだけで良い」
なるべく多くの人間のスキルを顕現させたい。
だが、選び違えると後々騒動になる。時間をかけて人選したいところだが、その時間がない。
第十回チームがあちらへ移動する前に、次の召喚メンバーの変更を伝えなくては。
スキルを所持しているのは緑陽中学だけではない。
だが、この一年の生徒達の行動、言動を見てきて『緑陽中学』への評価は高い。
やはり次の第十一回の召喚は緑陽中学の20名……草凪を除き19名か。
25名枠をギリギリまで使いたい。
他の中学のスキルリスト及び、評価表に目を通す。
麗朋学園と千秋中学は、ノースキルか、取得出来たのかも不明、あちらで全くスキルの使用はしていなかったそうだな。
本郷中は見所のある者が数名いると聞いたが、帰還したばかりで身内に承認を得るのはまず無理だろう。それに例の事件が未解決だ。
第十一回は緑陽中学のみで、第十二回の召喚25名は、境井戸、芽木つくし、埼玉第五から抜粋するか。




