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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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147/159

147話 帰還

 戻った。日本に。



 ここはどこ?

 僕、本郷中のみんなの真ん中に居たので、どこに戻ったのかわからないけど、教室でないのは確か。

 空が青い。嘘。曇っていた。


 一瞬の静けさの後、本郷中のみんなが突然泣き出し、そして四方八方へと飛び出した。

 僕の手を握っていた山﨑君も、手を離して大きな声を出して走り出す。

 周りに居たみんなが声を上げながら散っていく。集まって固まっていたみんなが広がるように外側へと。


 何、何、何、魔物? 何でみんな逃げ……?


 僕は山﨑君とは反対側で繋いでいた爺ちゃんの手をしっかり握り直した。僕をおいていかないで!


 みんなより外側から歓声が聞こえ、人が集まってきているみたい。

 人が、異世界の人ではなく、見慣れた服………見慣れてはいない、自衛隊の服とか、体操服とか。

 大人も子供も。子供、中学生! 見た顔、知った顔だ!



 僕にぶつかるように飛びついたの、太郎君だ!!!

 何かデカくなった太郎君!


 赤城君も千谷君も船橋君も日向君も鈴山田さんもイチクミのみんながぎゅうぎゅうと押しくらまんじゅう。

 気のせいかな、みんな大きくなってる? 前から背は高かったけどもっと高くなってる?


 みんなが一斉に喋るから何を言ってるのかわからない。

 でも嬉しそう。泣いているけど嬉しそう。




 グラウンドが大渋滞だったのは、ほんの10分程度だった。


 すぐに白衣を着た一団がやってきて本郷中と僕らは連行される。


 途中で白衣を着た老人にぎゅうぎゅう抱きしめられた。なんか、懐かしい気がして顔をよく見ると、喜一郎さんに似ているお医者さんだ。


 「貸してっ!」横から婦長さんっぽい看護師さんにむぎゅっとされた。翔子さんに似ている。

 んん? もしかして喜一郎さんと翔子さん?

 仮装イベント? 

 僕たち、イベント会場に帰還しちゃった?




 僕らが連れていかれた先で健康診断をしている間も、コスプレをした喜一郎さんと翔子さんがずっと同じ部屋に居て僕から目を離さない。

 喜一郎さんも翔子さんも普段からあまり家に居ないと思ったら、イベント会場で働いていたんだ?

 だからか。イベントなら忙しくて帰れなくても仕方がないよね。


 健康診断が終わると部屋へ案内された。爺ちゃんとは別になった。棟が学校ごとなんだって。爺ちゃんはめぎ中だったから。

 爺ちゃんは僕の背中の紐を自分の腕にぐるぐる巻きにしていたけど、それをはずして僕に手渡した。そして僕をギュッとした。


 えっ?えっ? 一生の別れじゃないよね? 僕、爺ちゃんの部屋に遊びに行くよ? あと、ご飯は一緒に食べよ?



 僕はろく中の塔。6人部屋なんだって。

 僕、誰と一緒の部屋かな。太郎君と一緒だといいな、とか思いつつ部屋に入るとそこにはイチクミのみんなが集まっていた。



「ポチャ次郎、お帰り」


「ポチャ、遅かったな、何してたんだよ」


「てか、痩せすぎぃぃ、食い物なかったのか」


「食事、貰ってくる!」


「おやつある、クッキー」


「俺、ポテチある」



 みんなが僕の前に食べ物を積んでいく。

 懐かしい。日本のお菓子!



「あ、ありがとう」



 のり塩味のポテチに足がバタバタしてしまった。うまっ!口の中に広がる塩と海苔の香り、サイコー!

 やばい。チョコとポテチを交互に食べると止まらない、エンドレス地獄。あっちには無かったからなぁ。2年ぶりのエンドレス。


 それから、日向君の仕切りでみんなが順番に質問をしてくる。

 食べながらでいいと言われたので、僕はゆっくりと答えた。



 タガセンがいなくなった時の話、本郷中の新堂君と徳野君の話をした。



「ポチャ次郎、そんな奴に『君』なんか付けるな!」

「そうよ!呼び捨てでいいわよ」

「この話、上に伝えた方がいいよな」

「いや、もう高田さんが話しているだろう」


「あ、うん。あと爺ちゃんは自衛隊から手紙も預かってきたはず」


「そっか。タガセンが眠らされた後の話が不明だったからな。まぁ大体の想像で合っていたな」


「新堂達は相変わらず何も話さないらしいぞ」

「自分達も被害者だと言い張っているって。あの嘘つきヤロウが!」

「唯一の目撃者は今回一緒に戻ったんだよな?」


「うん。その……鶴田君。新堂く、新堂と徳野……に刺された生徒」


「けどさあ、ソイツも最初は新堂の仲間だったんだよな。どこまでが真実か、わかんねえな」


「証拠が無いのが厳しいな」


「刺された…鶴田だっけ、今頃、取り調べの最中だな」


「本郷中は3人が亡くなったって事か」


「蒼井達がブリンクへ来る途中に2人、そして本郷中の帰還寸前に1人。7校で175人召喚されて3人しか亡くならなかったのを喜ぶべきか。172人は生きて戻れたのにその亡くなった3人を嘆くべきか」


「砂漠の国、じゃなかったら、生き残っていたのかな。その3人」


「いや、砂漠がどうとかじゃないだろう。普通にクラスで助け合っていたら全員無事だったんじゃないか?」


「だな。俺、イチクミで良かった」

「私も」

「俺も。クラス替えでイチクミになった時は違う意味で『死んだ』と思ったけど、今考えると助かったぜ」

「だなぁ」


「あれ? そういえばタガセン、取り調べか?」


「あ! 違う。あの、戻ってこなかった。あのあの、城之内君もやないさんも董明さんも漆原さんも。タガセンとあっちに残った」


「ああ、そんな予測もあったな。何パターンか想定していたからな」


「どっちにしてもタガセンからはもう情報は出ないだろ。新堂か徳野の犯行」


「タガセン寝ていたから目撃していないしな」


「少なくとも高松を刺したのはどちらが主犯にしても2人とも捕まるんじゃないか?」


「中学生って、罪に問われないのでは?」


「いや、14歳から刑事責任は認められてる」


「まぁそこは、日本の法律の専門家にお任せしよう」


「そうよ。ポチャ次郎君はまずはしっかり食べて寝る事」


「は、はい」



 どうしよう、甘、しょっぱのエンドレス地獄から抜け出せない。

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