146話 帰還まであと少し
僕らは、ブリンクランド城内の敷地ある別棟にお世話になっている。
さほど大きくない建物なので、僕ら日本人の貸切にしてもらったみたい。
1階には食堂と厨房、奥に共同風呂もある。なんか使用人さんが住んでいた建物なんだって。
二階建てのこの建物の、2階の部屋には本郷中が適当に分かれて入った。
1階の部屋に自衛隊やタガセンと爺ちゃん、それと僕らイチクミ5人が部屋をもらった。もちろん2:3で男女別。
相変わらず本郷中の生徒は、すぐにでも帰りたがっている。日本時間では1年だが、召喚された彼らには2年の間、家族と離れていた事になるもんね。
「帰りの分の石は?」
「大丈夫よ。梁井さんと私の亜空間倉庫に相当な魔力石があるの」
「スキルが復活してほんと助かったよねぇ。それだけじゃなくって中の物も全部入っていたの、ほんと有難い」
「鈴山田班も日向班も、帰る間際まで魔力石を集めていたから結構持っているの」
「昨日、自衛隊と塔に行ってきた。2階にセットした。祭壇は灯ったからいつでも帰還可能だ」
タガセン、漆原さんは自衛隊と共に、他4国のストーンヘンジ探しとそのブックマークに出かけている。
「え……? ブックマークしても自衛隊の人は魔法移動出来ないでしょう? スキルスクロール無かったんだよね?」
「ああ、ねっ」
やないさんが城之内君と目配せしている。……ふたり、付き合ってるの?
「付き合ってないからねっ!」
び、びっくりした。心を読まれた。
「読んでないわよ! あんたの生温かい目で想像がついたのよ!」
「ポチャ次郎、今回俺達は帰還しないと決めたんだ」
「え……?」
「もちろん、次郎と本郷中のみんなは帰れるわよ。あと高田さんもね」
と言うのは、再召喚された5名にスキルが復活した事で、あと4つある召喚陣を有効活用する事が急遽、決まった。
タガセンに『魔法移動』があれば生徒をこの世界に残す事はしない。でも、無い。
実は、こちらへ来る前に、自衛隊でもイチクミでも、色々なケースを想定していたらしい。
例えば、もしも再召喚され無事に向こうへ行けた場合。
自衛隊として第一の目標は、向こうに居る日本人(子供)の救出。これが最優先。
だけど他の召喚の使用についても調査をする。
使用可能の場合、どう活用するかなど。
「召喚陣があと4国分、使用出来そうってわかったじゃない? そのためにはストーンヘンジの場所の確定が必須になってくる。だから自衛隊が漆原さんを連れて行ってる」
「俺達のスキルが再発生しなかったら、俺らはただポチャを迎えに来ただけ、だった。でもスキルが出ちゃったからなぁ」
「まぁ、出来る事は手伝おうって話になった」
「それでね、帰れるのなら、今回でなくてもいいわねって話になったの。本郷中は一刻も早く帰りたいでしょうけど、私達はこの世界の事、自衛隊の皆さんにもっと引き継いでしまいたいのよ」
「あ、ポチャ、お前は帰還組だからな。あっちで心配している家族や太郎達と会え」
「こっちに残るのはタガセンと漆原、漆原は魔法移動があるから可哀想だが必須メンバーなんだよな。それと俺と董明と梁井」
「僕も、僕も残る!」
「ダァメ。ポチャ次郎君は、まずは一回帰りましょうね」
「そうそう。太郎もヤキモキしているぞ」
そして僕の亜空間倉庫の中の物を全て、董明さんへ移し替えた。
「あら、皆の魔力石を集めたら、あと2〜3回のくらいの帰還は何とかなりそうね」
今回こっちに残るやないさん達家族は心配しないのかな。
せっかく異世界から戻ったのにまたこっちに来ちゃって、あ、僕が呼んじゃったからだけど、それでまたこっちに残るの、心配しない?
そう聞いたら、家族に『もしも』の幾つかを話して、書面に捺印もらってあるって。ちょっとわからない。何をどう話して何の紙に印鑑もらったの?
ぼ、僕も、次の召喚に呼んで欲しい。紙に印鑑押してもらうから!
自衛隊の人に頼んで見た。
なんか、笑ってごまかされた…………。
明日は帰還の日。
ちゃんと城之内班で会えた証拠写真を撮った。
自衛隊がカメラを沢山持ってきていた。太郎君が写っていない写真。帰ったら右上に太郎君の顔を貼ってあげよう。
今日は城之内班とタガセンと爺ちゃんとで同じ部屋で寝た。
漆原さんも戻ってきている。
みんなから手紙を預かろうとしたら怒られた。
「ちょっと! 私達だってすぐに帰るんだからね! 手紙なんて縁起でもないことやめてよ! 帰ったら甘いもの食べに行くわよ! アンタも行くのよ!」
「漆原ぁ、変なフラグが立つから、『帰ったら……』とかやめとけw」
「ポチャ次郎、体重あと10kgは戻しなさいよ」




