142話 やってきた梁井さん
僕と爺ちゃんは、今、ブリンクランドに向かっている。
その前に、『境の頂』の塔の、例の2階の召喚陣で召喚を完成させた。
一か八かだった。
ごめん、やないさん。
今もあるのか不明の8番目の国の場所を探すため、とりあえずブリンクランドに戻り、書庫の文献を見直す事にした。
本郷中のスキル持ちのみんなは僕らと一緒にブリンクランドへ行きたがった。
けれど長い道中になるのが予想されるので待っていてもらう。置いていくみんなに何かあると大変。スキル持ちはみんなと一緒に村に居てもらうようお願いした。
ただ、山崎君だけは同行してもらった。
何か発見してみんなを連れにくるのに、山崎君の魔法移動が頼みの綱になるからだ。
僕と爺ちゃんは村から南へと進む商人ロードを移動する。
徒歩と、たまに出会う商人一行の馬車に乗せてもらい沿岸部へ。
砂漠地帯や山岳地帯と違って、東側、南側は商人ロードも数多く、通りかかる商人もあっちとは比べ物にならないくらい多かった。
大変な道のりには違いないけれど、僕らの旅は順調に進んだ。
沿岸部へ向かい、進む。ちょっと進みすぎて海まで出てしまった。
「こりゃ、沿岸沿いにコスタルへ向かうほうがいいじゃろ。ブリンクランドには遠回りになってしまったがの」
「でも、馬車が多いね」
「ま、魔物も、結構いるね」
商人の馬車からを顔を出した山﨑君がおっかなびっくりで僕にしがみついている。
それでも山﨑君は弱音を吐かずに頑張ってた。僕の方が弱音吐きまくりだった。
村に置いてきた皆の所には定期的に戻るようにしていたんだけど、馬車に乗れた時にはどこかに到着するまで村には戻れない。
それはみんなにも伝えてあるのに、戻るのが遅くなるとみんなに責められた。山﨑君が。
「利用されとるようでいい気はせんのう」
爺ちゃんがぼそっと言った。山﨑君に言ったのかな? 僕に言ったのかな。
「仕方ないよ。魔法移動のスキルがあるのは俺だけだから……」
山﨑君は下を向いたまま答えた。
山﨑君も弱音を吐きたかったのかな、爺ちゃんはそれをわかったのかも。
「山﨑君が移動スキル持ってるから僕達は安心して旅を出来るね。一緒に来てくれてありがとう!」
「使うほどスキルがレベルアップするぞ。使え使え! どんどん使って残ったみんなに有り難がらせればいい」
「そうだよ。山﨑君がいなかったらみんなはどこにも出られないんだから」
「……。だよな、うん。そうだよな」
休憩や夜にするイチクミの話で、山﨑君は笑い転げていた。そんなに笑える話はしてないんだけどな。
「俺もイチクミに入りたいな」
「ろく中の? 本郷中の?」
「ろく中のイチクミ。みんながやる気に溢れてて楽しそうだよな」
「そ、そお? 僕みたいな出来の悪い人間は居心地が……あれ? 別に居心地は悪くなかった。と言うか居心地良かったな」
「だろ? 話を聞いただけでもいいクラスだなって思うよ」
「うん。クラスは良い人ばっかだけど、タガセンが居るんだよ? タガセンだよ? 毎朝校庭5周だよ?」
「はは、そうだな。それがなぁ」
山﨑君は嫌そうな口調の割に顔は楽しそうに笑っていた。
そんな日々を送りながらブリンクランドへの旅は続き、とうとうブリンクランドへ辿りついた。
懐かしい………ってほどではないけど、見覚えのある門が見えてきた!
あれ?
門の前に……めちゃくちゃ見覚えのある顔が???
何で何で何で???
やないさんが居た。
「ちょっとおおおお! ポチャ次郎お、よくもあんな場所に召喚したわね!」
あんな場所=多分、8番目の国……、国あったんだ。良かった。
怒ったやないさんが飛びついてきた。
ぶたれるかと思ったけどギュギュっと抱きついたまま大泣きが始まったので、びっくり。
やないさんはいつもクールで他人を見下ろしている感じがした。
笑う時も口の端っこがちょっとだけクイっと上がる。
大笑いしたり大泣きしたりするイメージじゃなかったんだ。




