↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
140/151

140話 クラス会議

 その頃の日本は混乱していた。

 今までコンスタントに帰還していた失踪中学の生徒達、だが、最後の本郷中学で、たった3人しか戻らないという異例事態が発生した。


 先に戻っていた本郷中学の生徒から何名かが亡くなった話は聞いていた。

 なので、残り22名が無事に帰還するとは思ってはいなかった。


 だがまさかの、たった2名の帰還。本郷中学2年3組の教室に戻ってきたのは3名。そのうち1名は緑葉中学の教師であった。

 本郷中学25名の生徒のうち、20名は帰らぬ人となってしまったのだ。


 子供達の話を信じるとするならば、あちらの世界は文明も遅れている上に恐ろしい化け物がそこら中を闊歩しているそうだ。

 国により違いはあれど、最後の本郷中学が居た場所は、一番生き残りづらい場所であったと思えた。


 政府も組織の人間も、もうあちらで生きている事はないだろうと諦めた。家族や関係各所への説明に頭を抱えた。




 最後の目撃者である本郷中学の生徒、新堂と徳野はそれぞれ個室で保護されている。

 ふたりとも、向こうでの事は話したくないと硬く口を閉ざしている。先に帰還した3人に合わせようと思ったが、新堂側も蒼井側からも拒否された。

 中学2年か……。思春期で一番拗らせている時期だな。



 緑陽中学の田川教諭は、一命は取り留めたものの意識はまだ戻らない。こちらもICUで隔離中だ。

 彼の意識が戻れば、他の生徒の事を聞けるだろう。


 


-----(日向視点)-----


 施設の体育館で走り込んだ後、会議室に皆が集まってくる。うちのイチクミだけでなく、境井戸や芽木の連中も来るので、いつもの部屋でなく広い会議室を借りた。


 次々と入ってくるイチクミの連中は、中央の席に前からどんどんと座っていく。

 芽木や境井戸も中央はイチクミに譲り、両脇の席についていく。


 会議室前方には大きなスクリーンがあり。俺はスクリーン前に立つ。その右横の長テーブルにはパソコンが何台が並べられている。

 パソコンの前には、城之内、董明、鈴山田、梁井、漆原、竜崎、ファリタが座っている。イチクミのシンクタンク達だ。


 パソコンでスクリーンを操作しているのは城之内だが、女子達もそれぞれの前のパソコンを凄い速さで操作している。

 鈴山田と竜崎は国内の情報を、ファリタと漆原は海外の情報を集めている。


「ゆかちゃんと私は深い所を探る」


「頼む。………犯罪にならない程度に」


「私は過去を探るわ」

「私も。あれだけ召喚を行っているんだもの、絶対情報は残っているはず」


「ファリちゃんと私は海外を探る。日本だけとは思えないから」



 前に並ぶパソコンからは尋常でないスピードでキーボードを叩く音が聞こえた。


 スクリーン前、左側には椅子が並び、草凪家親族が座っている。

 この施設の面会室までなら家族の立ち入りは許されている。それも複数の警備同席で、だ。

 しかし、どうしたのか草凪家はいつの間にか施設内を当たり前のように闊歩していた。


 白衣を着た老人、ポチャ次郎の祖父と聞いた。薄いピンクのナース服を着た老女、ポチャ次郎の祖母。他にも施設内の色々な作業着を着込んだポチャ家族や草凪家親族達。

 皆、大丈夫か?仕事や学校は休みなのか?まぁ、うちの親も結構通ってきているからな。


 実は今回の召喚事件はネットでかなり出回っている。

 外のマスコミもそうだが、各学校の在学生やその関係者が流した情報、それと面会に来た家族が警備の目を盗んで撮った動画。

 それらが出回り、世間でかなりの注目を集めている。


 中2になったばかりの13歳の子供が大量に行方不明になったんだ。騒がないはずがない。世間の同情も高かった。

 そして、続々と戻り始め、明らかになっていく真相。

 全員が『夢を見た』では済ませられない。


 国は、隠す気はないのかもしれないと、ふと思った。面会時にスマホが取り上げられないと聞いた。

 どうせどこかから漏れるのなら、思い切り漏らしてしまえと言うことかもしれない。



 と、スクリーンにICUの画像が出て、俺は話し始めた。



「田川先生は未だ、意識不明の状態です。意識が戻れば、ポ……草凪の事を聞ける。それと他の本郷中の生徒の事も」



 ピンクナースの手が上がった。



「だいぶ容態は落ち着いてきたようですよ。意識が戻るのもあと少しかもしれません」



 赤城の手が上がる。

 イチクミは活発な意見を言うため、都度、挙手をしてもらう。でないと皆の声が被ってしまうからだ。

 俺はポインターで赤城を指す。



「誰か、どなたかタガセンの病室に詰めれないかな」


「それは私が」



 ピンクナースが手を挙げながら言った。

 呉崎が挙手。

 ポインターで指す。



「はい。翔子さんひとりだと無理があります。他に交代可能な医療関係者はいませんか?」


「うちの母、以前に看護師をしてたって聞きました」

「うちもです」

「俺の、従姉妹も」



 次次と手が上がり、指すと同時に答えていく。


「では、連絡を取ってもらい、急遽来れそうな方を集めましょう」



「今、連絡を取れますか? 取れた者から翔子さんの所へ。翔子さん、取りまとめをお願いできますか?」


「ええ。大丈夫ですよ」



 研究員のような制服を着たポチャ父が手を挙げた。子供達の連絡と共に、ポチャ父からも依頼の連絡をするという。

 それと謝礼も出すという。


 タガセンの件は翔子さんとポチャ父に任せる事になった。

 パソコンを叩いていたメンバーから、国内・海外の情報をスクリーンに出してもらう。



「殆どが都市伝説やホラーのような情報となっています。どれが召喚と結びつくのか判断は難しいです」


「百年前、二百年前に絞ってみては?」

「いや、時間の捻れがある。常に百年ごととは限らない」


「検索情報を人数にしてみますか? ひとりふたりの行方不明は山ほどある。それよりも数十人単位ではどうだろう」

「そうね。それでやってみる」

「意外とあるものね」


「出来れば生きている人に話を聞きたい。近年での検索で」


「こっちの世界の情報はシンクタンクに頼むとして、俺らは向こうを考えよう」

「そうだ。実際に向こうを知っているのは俺たちだけだ」


「それと、ろく中のイチクミな。向こうでポチャ次郎がどんな行動を取るか」

「そうよ。ポチャ次郎君は絶対に助かっている。向こうで生きている。召喚陣が使えなくなったらどんな行動を取るのか」


「そうね。ポチャ次郎君ひとりだけなら、そのままのほほんと生きていきそうだけど、高田さんが居る」


「でもポチャと高田さんのふたりなら、あっちで余生を満喫しそうじゃないか?」

「そうなんだよなー。タガセンがこっちに戻ったのは痛かったな。タガセンがいたら、絶対にポチャをこっちに帰還させるはずだ」


「本郷中の生徒は?」

「まだ、残りの生徒がどうなったか不明なのよね?」


「新堂も徳野も個室から出てこない。向こうの話も一切しないって聞いた」


「何があったんだろ……」


「ディサートへ行く前に寄ったアンブリアの五中から聞いた時は、ポチャもタガセンも高田さんも元気だったって話だ」


「今日、五中は?」



 部屋の隅で何人かの手が上がった。と思いきや、あちこちから手が上がる。

 固まって座っていなかっただけで五中の生徒は沢山参加してくれていたようだ。



「ポチャ次郎君は元気だったよ」

「うん。楽しかった。ポチャ次郎が来てから、みんながやる気になって」

「アタシ、凄く頑張った。頑張れたのポチャのおかげ。だから絶対にポチャ次郎を取り戻そうぜ!」



 見た目がヤンキーっぽい女子、ポチャ次郎は苦手そうだけど、話の感じから仲良くしていたのが解る。

 まわりからも拍手が湧いた。




「いつの時代の情報も、こちらから故意に行くのは難しいわね。突然の移動が殆ど」

「あぁまあ、怪しい実験とかは数々あるけど、それはオープンにはしてないわねぇ」


「こちらからのアクセスが無理だとして、とすると俺らに出来るのは何だ?」



 そこで手が挙がらなくなる。皆、頭を抱えている。



「ポチャ次郎なら、どうするか……」


「本郷中の生徒が1人でも生きていれば……あ、ごめんなさい」



 言いかけた百野が部屋を見回して本郷中の生徒の関係者が居ない事を確認した。



「ええと、すみません。無神経な言い方でしたよね。ご家族が居なくてもさっきの言い方は不適切でした。ええと、本郷中の生徒さんが無事なら、ポチャ次郎君も高田さんも帰る事を考えると思うんです」


「高田の爺ぃも絶対ポチャを帰す算段をするぞ」


「と、なると、どうやって帰還するか、よね」



 パソコンを叩いていた手を止めた董明が話に加わった。



「董明、何か考えがあるのか?」


「待って、董明さんの頭脳とポチャの頭じゃ全然違うわよ?」


「そうだな。ポチャの頭で考えつく事……」


「梁井、何か浮かばないか?」


「ちょっとぉ? 私とポチャ次郎の頭脳を一緒くたにしないでよ! あ。ご家族の皆さん、失礼いたしました」


「いやいやいや、そうじゃなくて。お前と太郎と次郎で書庫探ってただろ」


「董明さんも居たわよ!」


「待て、さっき董明が何か言おうとしただろ。董明」


「私がポチャ次郎君ならする事、あのね、梁井さん……」





-------


 タガセンの意識が戻った。

 だが、刺された時の記憶がない。


 それはそうだ。あの時、睡眠草入りの食事を食べ、ストーンヘンジで急激な睡魔に襲われたところまでの記憶しかなかったのだ。


 ただ、その時点で本郷中の生徒19人が無事だった事ははっきりした。

 新堂、徳野を含む19人、2人がこちらに帰還した今、本郷中の生徒17名が向こうに残っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。