14話 これで、いいのか
「タガセンの歯軋り、すごかったな」
タガセンから離れた場所で、太郎君と小声で話す。太郎君はタガセンの歯軋りって言ったけど、あれはタガセンの寝言じゃないのかな。でも僕も直ぐに寝ちゃったからよくわからない。
もしかして僕の歯軋りだったらごめん。
今朝目が覚めた僕らはタガセンの指示で部屋の中を探している。何を探しているのかわからないけど、なんか『変な物』を探すんだって。
「ねぇ、太郎君、変な物ってどんな形?」
「さぁな。俺も知らね。変な物って言うくらいだから見るからに変な物なんだろうよ」
「見るからに……」
「ひと目見て、なんじゃ、これえ、って思う物じゃないか?」
ヒュウガ君達も、テーブルや椅子の下に頭を突っ込んで探している。
ヒュウガ君、ヒュウガ君は1年の時のクラスの友達が廊下で見かけると指差して噂していた。
『ほら、アイツ、学年3位のやつ』
『日向だろ? 理科部の天才』
『頭が良くて見た目もイケメンって、なんかやな奴だな』
うーん、頭の良いイケメンってやな奴なんだ。僕はバカでデブだから良い奴なんだって。でも良い奴って言われるのあまり好きじゃない。体育館横の自販機までジュース買いに行かされたり、トイレ掃除は絶対僕だし、良い奴って割と面倒だよね。
昨日寝る前にこっそり太郎君に聞いた。この部屋に居るクラスメイトの名前。
ヒュウガ君が理科部の天才でいつも学年3位の成績、背が高くてスラリとしている、芸能人みたい。
剛力君は陸上部のエース、大会や駅伝にも出たって。背は高くないけど細くて人懐こそう? いつも誰かに囲まれていて楽しそう。
井伊君はサッカー部で、サッカー部は校庭のネットの近くで部活しているけど、いつも女子が群がって声援をあげてる。
「サッカー部は固定ファンが出来るんだよ。井伊も去年の入学時からファンクラブが出来たって聞いた」
太郎君、詳しいな。
城之内君は演劇部。去年の文化祭の時は演劇部のせいで体育館が超満員になったんだって。城之内君、一年なのに主役抜擢されたって。
「城之内は今年、演劇部の部長になったはず。日向が理科部部長、井伊もサッカー部の部長だろ」
「えっ、ちょっとイチクミ、部長多すぎない?」
「まぁ、イチクミ、だからな。それからあっちの部屋の……」
「待って待って、そんなにいっぺんに覚えられない」
僕の頭では、この部屋の4人の情報でいっぱいだ。これ以上は徐々にお願いしたいです。
一晩寝たら忘れてしまいそうだから、持っていたノートに書いておいた。
ちゃんと今朝も覚えていた。アバウトだけど必要なとこは忘れていないはず。
ヒュウガ君、背が高い、3位。
城之内君、演劇部。ベテラン俳優。
井伊君、サッカー部。足長い。手も長い。
えとえと、もうひとり……。
あ、剛力君。背は低い(僕よりはずっと高い)駅伝。
良かった。ちゃんと4人、覚えていた。あ、あと太郎くん。ガッシリデブ。
「おい、今、失礼な事考えなかったか?」
「う、ううん、考えてない」
「田川せんせー、特におかしな物は見つかりませんでした」
「そうか」
タガセンは何を心配しているんだろう。
それから他の部屋からみんなが集まってきた。流石に24人はいると部屋が狭く感じる。
ベッドや床の空いているスペースにそれぞれ腰掛けているけど、タガセンが集合かけた理由がわからず、みんなモゾモゾと落ち着かない。
みんなが落ち着くのを待ってからタガセンがボソリと口にしたひと言。
「これで、いいのか?」
途端にざわつき、男子も女子小声で討論が始まった。
「これでいいのか、って聞くって事は、これじゃダメなんだよな?」
「そうだけど、コレってどれを言ってるんだよ」
「これ……これ、この部屋……、城之内、この部屋掃除した?」
「えっ、掃除はしてねえよ、今朝起きて探し物してたし」
うんうんうん。僕ら、起きて直ぐにタガセンから『変な物』探しをさせられた。見つからなかったけど……。
「部屋を掃除しろって事?」
「部屋が片付いてないんじゃない?」
「日向ぁ、ベッドメイキングはちゃんとしなさいよ」
「え? 俺? 俺か?」
「男子部屋が汚すぎるんじゃない?」
汚れているとかじゃなくて、朝の何か探しで布団とかテーブルがちょっと乱れてるけど、タガセンだってこの部屋の一員だし……。
「タガセンのベッドだってシーツしわくちゃだよ」
井伊君、勇気ある。けど、タガセンにジロリと見られてベッドの下に沈んだ。(隠れた)
「これで、本当に、いいのか?」
タガセンがもう一度言う。
みんなは目だけをキョロキョロと動かして答えを探している。ごめん、僕は考えるのを放棄した。
頭の良いメンバーにお任せします。
「部屋、部屋割りかしら」
「部屋割りかっ! 昨夜は適当に分かれたからな」
「今から、クラス会議を行います!」
剛力君(駅伝)が叫んだらみんながうんうんうんと頷いていた。
「その前に、新学期にとりあえずの学級委員長になったけど、俺には荷が重いぜ。日向か城之内、変わってくんね?」
「いいぜ。俺やる」
日向君(3位)が立候補した。
「城之内、いい? みんなは?」
「おう」
「賛成ー」
「女子は? 鈴山田、そのままいい?」
「はい。いいですよ」
「じゃ、男子が日向、女子が鈴山田で。あとよろ」
「ほい。ええと部屋割りですが」
ヒュウガ君がタガセンを見ながら続ける。タガセンのストップがかからないから、部屋割りの件であってたんだ。
「昨日、スキルを授かっただろ? だから部屋割りもスキルを考慮した方がいいと思うんだ」
チラリとタガセン見。タガセンは何も言わない。
「まだ、この世界の事、俺らが何で召喚されたのかも知らないけど、いつ何があってもいいように、動ける班分けにしよう」
「動ける班分け……」
「攻撃ばかりに偏らないようにするか」
「同じ部のやつは分けようぜ。バレーとバスケは、適当に1班2班に分かれて」
「美術部もふたりだよね? 鈴山田さんと梁井」
「梁井って美術部だったんだ?」
『ほら、不登校だったから部もほとんど出てないみたいだけど……』『ああ』
『部活に出ないのってタガセンビンタ案件じゃね?』
『1年の時は保健室登校だったみたい』
ヒソヒソ……
『一年の時は担任が緩かったけど、ね。イチクミになったらもうね』『授業も部活も休むとビンタ案件だよね』




