13話 異世界到着?
本当に異世界に来た。
見渡す限りの平原、道路も家も建物も無い。山…………は、山はかなり遠くにある。……けど、ここって本当に異世界なの?
てか、異世界って何?
「草原だな。これが、異世界なのか?」
「全員怪我ないか?」
「点呼とるぞ、班長報告」
さっきまで居たあの白い部屋を出る時は1列になっていたのに、扉に吸い込まれて、気がついたら草の上に転がっていた。みんなバラバラで。
ところで、班の点呼って、僕どこの班なの? 今日が初投稿の僕は自分の席も班も知らない。もしかするとさっき決めてた戦いの班かな。
とりあえず近くにいた太郎君に聞いてみる。
「太郎君はどこの班? 僕、一緒の班?」
「ポチャ次郎はこっち」
うお、めっちゃ背が高い男子に腕を引っ張られた。バレー部の新部長とか言ってた人だよね。
僕、みんなの名前、まだ覚えてない。でも顔は1年の時によく見かける有名なのが集まってる。去年の体育祭で活躍してた人ばかり。
これが『イチクミ』なのか。
僕おミソだけどやっていけるかな。
ソレ以前に謎の草原、異世界とか言うこの世界でやっていけるかどうかの方が問題は大きいな。
ぼやっと考え事をしていたら、散らばってたみんなが突然集まってきてギュウギュウの塊りになった。
なんかこの世界の現地人がワラワラとやってきて僕らは囲まれてしまっていた。
「ヤバイ系の『異世界転移』か『召喚』かも」
誰かの呟きが聞こえた。
変な格好をしていたので現地人かと思ったけど、現地の兵士、かな? 槍とか持ってるのが見えた。
変な格好の現地の兵士?
膝くらいの長さのスカートを履いた身長が2メートルはありそうなガタイの良い、ヒゲもモサモサ生えている、あ、スカートの下の足もモジャモジャすね毛がある。スカート履いてるけど男性……だよね。あ、いけない。差別じゃないよ? 見たまんまを言っただけ。
その兵士みたいな人達がジワジワと輪を縮めて僕らを囲い込んだ。
「掘りの深い濃い顔……テルマ◯ロマエエ……? 向こうはこっちを平らな顔の、とか思っているわね」
すぐ横にいた女子の呟きが耳に入ったけど、理解直前で弾かれた。どういう意味?
「あ、何でもない」
僕の視線気がついたのか変な笑いを浮かべていた。
誰の顔が平らなのかな? 僕の鼻が低いって事? 確かに高くは無いけどそこまで低いかなぁ。うん、低いな。僕の正面にいた謎の兵士の鼻は物凄く高かった。
どうでもいいけど、完全に取り囲まれたね。
人間に捕まる宇宙人の気持ちってこんなかも。
「は、ハロぉ〜」
捕まる宇宙人として、出来る事はやっておこう。挨拶は大事だ。
だけどイチクミのみんなにギュウギュウ押されて僕は中へ中へと押しやられた。
僕の近くに居た2〜3人が「?」って顔をして僕を見た。そしておもむろに挨拶を口にし始めた。
「こんにちはー」
「どうもです!」
「初めまして、言葉、通じますか?」
「ちわー」
「ちわーっす」
「おお、言葉が通じるぞ」
「よくぞ、いらしてくださいました」
「お初にお目にかかる」
僕らを取り囲んだ兵士さんらも口々に挨拶を返してくれた。
しかも何でか日本語? あれ?ここ外国じゃなくて日本?
異世界って国内にあるんだ。
僕らは兵士さんに囲まれて草原を進んでいく。野を越え山越え……山は越えない。丘を越え〜行こうよ〜ラララランララ。
脳内で歌っていたら水路を渡って立派な壁に囲まれた塀の中へ。
家はある。畑もある。街があった。その先にお城……、お城と言ってもヨーロッパ風じゃない。んーと、ローマとかエジプトの遺跡みたいなお城……? 城と言うか要塞? デカくてシンプル。
ここが国内のどこかだとしたら、そういう施設かな。ほら、ドイツ村とかオランダ村みたいな?
僕が知らないだけで、こんな施設が日本にあったんだ。
凄いよね。ろく中のイチクミの教室から一瞬で来れる施設。
あ、ろく中は僕の通ってた中学。流山市立緑陽中学、略してろく中。地元ではみんな『ろく中』って言ってる。
ろく中は市立なのに凄い施設と繋がっていたんだね。知らなかった。一瞬で来れるなんて、リニアモーターカーより速いんじゃない? 光った瞬間に移動。世の中っていつの間にか科学が進んでいるよね。
ドローンも気がついたら当たり前になってるし。
僕は持ってないけどスマホとかもうどうなってるんだろうね? あの薄い板の中にパソコン並みの性能の何かが入ってるんだって。
恭一郎さん(兄)が古くて使わないからって僕にくれたスマホは『中学生には早い』と菫さん(母)に取られちゃった。
そのうち一家に一台宇宙船とかある時代が来るのかなぁ。うちの駐車場に宇宙船停められるかな。
「ポチャ次郎! しっかりしろ!」
ちょっと現実から目を背けていたら、太郎君から背中をバンっと叩かれた。
痛い。痛いけど現実に戻ってこれた。
気がついたら、たぶん要塞の中のどこかの部屋に居た。あの白い部屋とは違う。ちゃんと色がある。石壁の色とか、石畳の色とか、あ、ドアは木で作られて細長いノブもある。
ベッドも椅子もある。全体的に地味な色だね。ちょっと薄暗いのは天井に照明がないせいかな。日が暮れたら真っ暗になっちゃうの? あ、ベッドサイドの机にロウソクが乗ってる。
僕はベッドに腰掛けていた。隣には太郎君。
ポチャ太郎君は僕より若干背が高いけど横幅は同じくらい。でも僕と違ってがっしりとしていて硬い。僕がぽっちゃりデブなら太郎君は筋肉質なデブ?
けど周りからは同じ『ポチャ』括り。
太郎君がポチャ太郎、僕がポチャ次郎と呼ばれている。そう、ここに来る前に居たあの白い部屋でいつの間にかそう呼ばれていた。『俺はぽちゃってねえのに』太郎君は気に入らないみたい。
僕らが案内された部屋はかなり大きな部屋だった。それでも25人全員が同じ部屋に泊まれるほどは広くない。
それで4部屋に分かれたんだって。男子2部屋、女子2部屋。
廊下を挟んだ向こう側部屋には、バレー部やバスケ部とか運動部だって。
「赤城、馬場、千谷、百目木、江崎。船橋だけ野球部だな」
太郎君がツラツラと名前をあげたけど、顔が全く浮かばない。ただ、背は高いんだろうなぁ、くらい。
「で、こっちは残り。剛力、井伊、日向、城之内、俺と次郎。それとタガセンな」
えっ、タガセン!
太郎君の『タガセン』のとこだけ小声になってた。部屋を見回すと、それぞれベッドでくつろぐみんな、それと端っこのベッドに座っているタガセンが目に入った。
一緒の部屋……なんだ。
「そうだ。一緒なんだよ」
太郎君と以心伝心。複雑な表情の太郎君を見て、僕もそんな顔をしているんだろうなって思った
「で、右隣の部屋には呉崎、羅木、百野、夏原、大野、ファリタ。その向かい側に久遠、竜崎、鈴山田、董明、漆原、梁井な」
うん、全然わからない。まぁ、女子部屋行く事はないからいいか。
-----(田川視点)-----
兵士が迎えに来た。と言う事は、十中八九、この国が俺たちを召喚したのだろう。
とりあえず地下牢に監禁、などという事にはならなかったが、油断は出来ない。
今夜はこのままゆっくりして説明は明日、と聞いた。ドアにも鍵はかかっていない。
いないが、廊下の要所要所には兵士が立っている。俺たちの監視なのか、それとも通常の警備なのかは不明だ。
召喚した理由、今後の行動、帰還出来るのか、これがラノベならば、まだ謎だらけの序盤だ。
どう動く。生徒24人の安全を計りつつ、どう動けばいい?
その段階で出来る事をしていくしかないか。
とりあえずは、草凪に目を光らせておく。盲腸の手術後という事もある。回復スキルを取ったのは剛力、城之内、井伊……この部屋に3人居るな。
今のところ、クラスでイジメも起きていない。善哉も梁井も登校している。まぁ、異世界では不登校にもなれまい。
一応、この城砦に保健室があるか、明日聞いておくか。
それにしても、新学期スタート3日目で、異世界召喚か。大事件だな。顔がニヤけるのを止められん。
夢にまで見た異世界。やっほぉぉ。
いやいやいや、落ち着け、俺。
子供達を無事に元の世界に帰らせなくては。俺の異世界人生はそれからだな。
あ、テイムはどう使うんだだろうか。
眠れん、眠れぬぞおおおおお。




