137話 凄い発見
現在、この世界に残された19人はフォーレスタ国にお世話になっている。
本郷中のみんなはこの美しい森に夢中だ。
女子はエルフさんの推し活に、男子はファンタジーゲームみたいだと騒いでいる。
今日は、爺ちゃんと山﨑君は、『境の頂の塔』まで行っている。
ここフォーレスタ国から、塔の近くまでは商人ロードがある。その道を馬車を付けた乗り物でエルフさんが連れていってくれるそう。
塔に着いたら山﨑君がブックマークをする。それで僕らは塔へ行き来しやすくなる。
気軽に塔へ行けるようになったからといって、日本に帰れるわけではい。
ただ、塔は謎だらけだ。まだあそこに僕らが帰れる秘密があるかもしれない。
僕には解けない秘密がね……。
と言うわけで、山﨑君が戻ってから、僕は爺ちゃんに塔へ連れて行ってもらった。内藤君達も一緒だ。
塔の13階、最上階にディサートの祭壇がある。まずはそこを訪れた。
祭壇にある燭台は消えていた。
そうだ。帰還に使用したから。
新たに溝に魔力石を置いてみた。吸わない。
そうだよね、『召喚』もしていないのに『帰還』として使えるわけがない。
わかっていた。けど、念のため、ね。
他の国のフロアも見て回った。
7国の祭壇はどれも沈黙していた。
だよねぇ。お役目は終えたって感じかぁ。
「そう言えば、他の5つの部屋は?」
「塔は全部で12フロアあるんだよね?」
「うん。1階は祭壇なしで全部で13階建て」
エレベーターで行こうという話になって一階まで降りた。
塔の壁の読めない文字は全部で5つ。
「2階、3階、6階、10階、12階が知らない国か」
塔の壁の石版に7国の名前は太ペンでフリガナを書いてある。(書いたのは僕だ)
フリガナがないのが、今、内藤君が読み上げた5つのフロア。
「とりあえず2階に行ってみっか」
石版に触れた内藤君が消えた。山﨑君や由良君も触れて消えていく。僕も慌ててそこに触った。
たぶん2階のフロアに扉の前に出た。螺旋階段がある。下を覗くと1階部分が見えた。
扉を押して中へ入った。
床の溝にそって並べられた石が光っていた。
過去に滅びた国の召喚陣だろうか?
もしかしてこれで帰れない?
僕の希望はすぐにへし折られた。後ろからついてきたエルフさんに、帰れないって言われた。
前回の召喚に関わったフォーレスタのエルフさん曰く。
「これは、帰還ではないな」
帰還ではない? どういう意味?
召喚時と同じ状態なんだって。
光っている石の色が帰還とは違うんだって。
色というか、明るさ?
そういえば、明るすぎるかも。
帰還のために集めた魔力石をセットして石が光った時は、もう少し目に優しい穏やかな明るさだった気がする。
目の前のこれはスッキリ明るい光り。ちょい眩しいくらい。
召喚を行う前がこんな感じだったって。
待って、それって凄い事じゃない?
「じゃあ、使えるって事? 召喚が出来るんだ? それなら誰か呼べば、帰還にも使えるよね」
浅はかすぎた。流石は僕。
問題がある。しかも大きな問題がいくつも。
まず、誰を召喚するのか。
「呼ばれた人が帰る前に俺たちが先に帰る?」
「10人呼んだら帰りの切符も10枚だよ。その切符を俺たちが使う? あ、実際には19人だけどね」
これは、本郷中のみんなと口論になった。
「ディサートで25人呼んで3人しか帰らなかったんだから、あと22人分の切符は残ってんじゃないのかよ!」
「乗り遅れた飛行機みたいなもん。何人乗り遅れても飛んでいってしまったらもうおしまい。残った者が持っているチケットは払い戻し出来ないんだ」
「ケチ!」
仕方がないよ。ディサートの召喚陣はもう、うんともすんともいわない。いつかは復活するかもしれないけど、今じゃない。
それより、この、どこかの国の召喚陣。
「ならさ、召喚の条件を、帰らなくていい人、とかにして召喚する?」
「あっ、余命宣告されて異世界で生涯を終えたい人、とか?」
「でも、それを伝えるすべがない。その人にも家族がいるかもしれないじゃん。本人は帰らなくていいって思っても家族は帰ってきてって思ってるかも」
「うちの母ちゃんだって俺に帰ってきてほしいって思ってるよ」
「うちだって! 絶対心配してる! 俺らを返してくれ」
この事は今後の課題となった。
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森に戻ってこの話をしたら案の定揉めた。
使える召喚陣がある事に、まず、みんなが湧いた。
「帰りたい」
「帰ろう!」
「やったぁ!帰れるね」
「だってさ、どうぞ召喚してくださいって状態なんでしょ?」
けれど、どう使うかで揉めて進展しない。
召喚したら帰還が使えるけど、当然、帰還のための魔力石が必要になる。魔力石がない。
他にも問題はあるけど、とりあえず生活しながら魔力石を貯めようという話だけはまとまった。
そう話し合いで決まったのに石集めは進まない。イチクミの時みたいに、みんなが協力的じゃない。
スキルが無い、持ってても関係ないスキルだし、それでみんなが動かない。
僕はスキルを沢山持っているから、僕が動く。
毎日、朝から夜まで。
魔石を集めたり、食材を集めたり、お世話になってるこの家の人の手伝いをしたり。
眠いとか疲れたとか弱音は吐かない。
弱音は吐かないぞと決めたのに、『せめて、ブリンクランドに戻りたいなぁ』とか思ってしまう。
実はフォーレスタを出た。
木の上の生活にみんなが馴染めなかったのが理由のひとつ。
それから、エルフさん達がやたらと僕にかまいまくるので、みんなと溝が出来始めてしまった。
それで女子に嫌われた。
エルフさんが居ないところでデブデブ言ってくる。
でも僕デブなので、本当の事を言われてもダメージはゼロ。逆に『痩せた?』と言われた方が、何か裏があるのではと疑ってしまう。
それで今は、『境の頂』に近い村にいる。
砂漠と山岳と森の中間地点辺りにある村なんだけど、平地じゃない。麓でもそれなりに勾配のある地帯だ。
どこに行くにも登ったり下ったりで大変。
僕みたいなデブは山登りにはむいてないんだ。すぐに息が切れるし、それでも歩かないとならなくて何も考えられなくなる。
ただひたすら右足、左足と脳から命令を出す。
何も考えられないのに立ち止まった時に思考がマイナスになりがち。
森の中も大木が転がっていたりツタがそこらじゅうを覆っていたりで進むのは大変だったけど、わりかし平坦だったので助かった。でも、低くても山はキツイ。
僕は魔法や武器を使って魔物を倒すことは出来ない。だからひたすら罠を設置して獣を獲る。食材だ。ただの獣には魔石は無い。
本郷中のみんなも攻撃スキルを持っていないから魔物は倒せない。
けれど、魔力石集め関しては、実はそれほど焦ってはいない。
ブリンクランドにいた時にイチクミのみんなが魔力石を山ほど集めた。
3校分目標を完遂してもあの頃のみんなはまだ集めまくっていた。
「ポチャ、持ってて」
そう言ってよくわたされた。
「帰還に必要な分は董明先生が持ってるから、それ以上はポチャ次郎に集めようぜ」
そう言って、その日に集めた魔力石を僕のとこに持ってくるようになった。
さか中やめぎ中との合同魔石集めが始まってからは、そっちに石を回していたから僕のとこには来なくなったけど、それもすぐに目標達成したとかでまた僕の倉庫に集まってきたんだ。
だから今は危険な魔物との戦いはしなくていいけど、食料集めが大変。
罠を仕掛けるのもひとり、罠の材料集めもひとり、捕まってた魔物を罠から外すのも、血抜き作業も解体もひとり。
罠や解体のスキルがあるのが僕ひとりだからしょうがないんだけどさー。
山の中まで一緒に来てくれたのは最初の日だけ。みんなは太ってないけどやっぱり山は大変なんだって。
爺ちゃんだけが僕と一緒に来てくれてる。でも爺ちゃんも前から腰が痛いみたい。「歳だからな」って笑ってた。回復スキル持ちの湯本さんが頑張って回復を使ってくれるけど治りはイマイチみたい。
比べたらダメなんだけどつい比べちゃう。イチクミのみんなは競うように練習してたから、城之内君も漆原さんも、凄かった。多分爺ちゃんの腰くらいだったら一瞬で治してくれたかも。
うん、比べちゃダメなのはわかってる。
本郷中のみんなだって、出来る事はしてる。




