↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
135/145

135話 砂漠の端まで

 砂漠を進んでは街へ避難、オアシスで休憩の繰り返しだったけど、ジワリジワリと何とか砂漠の端っこまで来れた。



 爺ちゃんも山﨑君も由良君も無事。僕も含めて4人とも怪我なく病気もせずに山脈の麓……からは、ちょっと離れているけれど荒地まで来れた。


 ディサートの街に置いてきたみんなの元には、しょっちゅう戻っているので、みんなも『置いていかれる不安』はなくなったようだ。

 内藤君達や女子もそこそこ元気に暮らしていた。




 荒地にも徐々に木が生え始めてきた。『荒地』なんて呼び方は失礼だろうか?


 近くに村を発見。


 街と呼ぶにはあまり栄えていなさそう、でも村……としたら大きい感じだと思う。

 持っている物資と交換で村の空き家に住まわせてもらう交渉を爺ちゃんがした。



「ここを拠点にしばらく身体を休めよう。どうせ期限のある急ぐ旅じゃねえ。この先の計画についてもう少し話を詰めておいたほうがいいじゃろ」


「うん。どこに進むにして、物資は補充しておかなきゃ」


「山﨑のスキルでオアシスにも自由に行けるからな、水と物資をある程度は補充出来る」


「ポチャ次郎の倉庫スキルもあるし、拾えるものは拾っておこうぜ」


「もっと山の方へ行けば、食べ物も豊富なんだけど……」


「じゃが、最終的にフォーレスタ国を目指すなら、森側の商人ロードを探した方がいい」


「みんなはどうする? ここに呼ぶ?」


「いや、まだディサートに居てもらった方がいいじゃろ。ここらの気候もわからんからな」


「昼間なのにだいぶ寒いよね?」


「ディサート街の方が慣れとるじゃろうしな。山﨑君と由良君も皆の所に戻りたいだろうが、すまんがもう少し頑張ってもらおうかの」


「あ、うん」

「平気……です」



 爺ちゃんがこの村にとどまる事考えたのは、山﨑君と由良君がかなり疲れたっぽかったからだと思う。

 僕も疲れた。爺ちゃんはもっと疲れていると思う。


 だってあの距離を歩いたんだよ。それも砂漠を。交代でソリに乗れるけど、3交代だから3分の2は歩いている。

 爺ちゃんはもっとだ。山﨑君や僕が疲れるとすぐに代わってくれちゃうんだ。


 僕、なんでもっと校庭を走って身体を鍛えておかなかったんだろう。今更だけどさ。


 それにタガセンが居なくなって、色んな負担が全部爺ちゃんにいった。

 今まではタガセンと爺ちゃんのふたりで立てていた計画も作業も、今は爺ちゃんがひとりでやってる。

 僕ではあまり爺ちゃんの助けにならない。


 山﨑君も由良君もあまり話さなくなった。疲れすぎて話せないのかも。

 本当は山﨑君達をディサートにいるみんなの所に帰してあげたいんだろうけど、『魔法移動』のスキルは絶対に必要。

 イチクミのみんながいた時も、千谷君や船橋君がそのスキル持っているから物凄く頑張っていたのを覚えている。


 由良君のスキルは『体力回復』。これは湯本さんの『回復』と違って、怪我や病気は治せない。

 でもリジェネとか言ってたっけ、かけておくと自動で体力が回復するんだって。まさに、砂漠越えに必要。それがなかったら僕はとっくにギブアップしていた。

 それと強化?よくわからないけど強化かけておくと、急に襲われた時にいいとかなんとか。


 そういえば、鶴田君の傷はだいぶよくなってきたんだって。

 夜に戻った時に内藤君が言ってた。

 みんなはまだ鶴田君を許せないけど、結局、鶴田君も新堂君に裏切られたわけだし、前に比べて憎んでいる人は減ってきたって。


 新堂君一派の下でこき使われていた原君や坂本君は、まだ鶴田君を許さないって言ってるって。

 それでも鶴田君を回復させる事には反対していないし、一緒に帰還する事も望んでいる。


「鶴田には日本でしっかりと証言してもらう! 新堂と徳野のやった事を!」


 そっちかぁ。



 僕達はその村で、最初の数日はただただ身体を休めた。

 それから、村の人に魔物や採取出来る物の事を教えて貰ったり、日中は手伝える事をやったりしていた。

 夜には今後についてを話す。



「そんでさ、これからどうするの? どこ向かう旅なんだ?これ」



 由良君が爺ちゃんの方を向いている。爺ちゃんは何て答えるかな。

 でも爺ちゃんが返事をする前に山﨑君が割り込んだ。



「山、一択じゃないか? だって、あそこ見える山脈の向こうに国があるんだよな? アンブリア国だっけ」

「そう、アンブリア国で召喚したのが埼玉五中だっけ」



 ちょっと違うけどまぁいいか。



「さいたま市の第五中学だな。だが、山を越えるのは砂漠を越えるのと同じくらい大変だぞ?」


「略して埼玉五中じゃん。砂漠より山のがいいよな。地獄のような寒暖差も無いし、山は採れる物も多そうだし」


「じゃが、魔物も多い。それにあの山の登り降りはかなり激しい。砂漠トカゲはもちろん使えない。自分らの足で行く事になる」



 そう、それ。僕の宿敵、『THE・登山』。無理。

 僕の死んだような顔に気がついたのか、爺ちゃんの眉毛が下がった。『仕方ない』とか『情けない』の顔……かな?ごめんなさい。



「俺も……登山はキツイかな」



 山﨑君は痩せているのに、僕と同じくらい体力がない。その山﨑君が僕側へ寝返った。よし!仲間。



「由良君、山も良いけど(良くないけど)森にも採れる物は沢山あるよ? それに山ほど起伏が激しくないし」



 山も森も砂漠でさえ、日本の道に比べたら起伏がありすぎる。

 それと森にも魔物や獣が沢山いるけど、それは言わない。聞かれたら言うかもだけど……。


 爺ちゃんは黙って聞いていて、僕らの会話が途切れた時に口を開いた。



「最終的な目標は、ブリンクランドじゃの。そこで生活をしながら『召喚・帰還』について調べる」


「最終的なってのは?」


「うむ。ブリンクランドまでの道のり、どうやってそこに辿り着くか」


「逆に爺さん達はどうやって砂漠に来れたんだ?」


「あの時は田川先生がいらして、移動のために動物や魔物をテイムしてくれた。わしらはそれに乗って進んだ」


「進んだのはどういう経路で?」


「ブリンクランドから北へ、ウッドランド。さらに北へ。ウッダレジオン、フォーレスタと、森の中を北進した」



 爺ちゃんが地面に枝で絵を描く。この世界の大陸かな?



「わしらが知っているのはこの世界一部じゃ。東側一帯が巨大な森じゃったの。その森の南側、森が切れて大地が頭を出す、その辺りがブリンクランド。次郎らが召喚された国じゃ」


「へぇ」


「そのもっと下にあるコスタル国がわしら芽木つくし中学が召喚された」


「コスタルは沿岸の国で魚介とかも豊富なんだ。美味しい物が沢山あった」


「いいなぁ……僕ら本郷中の砂漠の国とは大違い……」


「あ、ごめんね……」



 僕、調子にのった口をきいてしまった。反省。黙っていよう。



「その森林地帯の最北の国、フォーレスタから西側へと森を出て荒地を進んでから、山へと入った」


「そこでアンブリア国に?」


「そうじゃな。そして、アンブリアをあとにして今度は荒地を南側へと進んで砂漠地帯にはいった。そこにディサートがあった」



 爺ちゃんが地面に描いた地図を見ながら由良君が口を開く。



「山へ行く方が見た目には近いけど、山は上下を考えると意外と距離はあるかもね。となると……こっちか」


「うむ。山と荒地の狭間を東へ移動しながら森へ近づく」


「ミニラはどうする?」


「放つしかないのう。ミニラは砂漠トカゲじゃ。ここまでは何とか頑張ってくれたが、ここから先の荒地はきつかろう。代わりに荒地の移動手段を考えるしかないのう」


「結構な距離だよな」

「そうだな。徒歩だけでは絶対無理だよな」


「うむ。なのでここを拠点に、道を探す」


「道?」


「商人ロード。山岳でも砂漠でもない、森側へ向かう商人の道、それを探す」


「この辺だと、砂漠か山岳へ行く商人しか通らないんじゃない?」


「ああ。だから、こっち方面をわしらが足で、道を探す」



 爺ちゃんが地面に描いた地図の森の方を枝でさした。



「すまないが、山﨑君、由良君にも頑張ってもらう。次郎は採取を頼むな」


「はい」



 僕は返事をしたけど、山﨑君達はちょっと嫌そうに、それでも首を縦に振っていた。



------


 爺ちゃんと山﨑君は、村から出て東側を探索しながら進む。山を左手に荒地をジグザグに探索しているんだって。

 地図を作って、山﨑君がブックマークした場所を記す。


 由良君は時々戻る爺ちゃんと山﨑君にリジェネと強化をかけている。

 スキルは使うほどレベルアップをする話をしたので、由良君は村人にもかけまくっている。もちろん僕にもかけてくれる。


 僕と由良君は村の人と一緒に近くに採取に出かける。

 この村について数日後、爺ちゃん達と話し合い、村人にスキルの事は秘密にしている。


 なので、由良君は挨拶をしているポーズでスキルを飛ばしていた。右手を挙げて『おはようございます!』手のひらは村人に向いている、そこからリジェネがシュバっと。目には見えない。


『おはようございます!』『いってらっしゃい』

『こんにちはー』『こんばんはー』『お疲れさま』『また明日ー』


 由良君は村で『挨拶好き』と呼ばれている。

 だって1日3回以上、村人全員に挨拶をして回っているんだ。もちろん生まれたての赤ちゃんにも。村のヤギにもニワトリにも。


 最初は訝しんでいた村のみんなから、あっという間に人気者になっていた。小さい子とかもわらっと寄ってくる。

 僕は由良君とずっと一緒に行動をしている。爺ちゃんに絶対にふたりで動くように言われている。


 僕は村の役にたつスキルはないので、ひたすらお手伝いかな。

 由良君と挨拶を交わした子供が僕を揉んでから去っていく。由良君の挨拶と僕揉みはセットになった。


 爺ちゃんと山﨑君の検索は続く。


------


 ある日、ようやく爺ちゃんと山﨑君は見つけた!

 森側へ向かう車輪の轍の跡。


 爺ちゃん達は山脈と並行して荒地を進んでいき、彼方ではあるけれど森を目にした。

 そして、その方向へ向かう道を見つけた。


 山﨑君にそこをブックマークしてもらい村へと戻ってきた。



「やったね! 爺ちゃん」

「山﨑もご苦労さん」

「おう」


「あとはどうやって商人を捕まえるか、だ」


「えっ? 見つけた商人ロードを歩いていくんじゃないの?」


「もちろん、そこを進んでいく。だが、商人の一行が通りかかったら、行き先を訪ねる、地図を持ってないか聞く、フォーレスタかウッダレジオンかへの伝言を頼む、色々とやる事はある」


「そっか。森の中の商人ロードは複雑なんだよね……」


「闇雲に道沿いに歩いてもどこに着くかわからん。ただ、目的の半分は達成したな」



 爺ちゃんの笑顔。久しぶり見たかも。俺たちを気遣った嘘の笑顔じゃなくて、本当の笑顔。

 山﨑君も由良君も笑ってる。たぶん、僕も。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。