133話 え、終了?
-----(ポチャ次郎視点)-----
物凄くお腹が空いて目が覚めた。
あれ? 僕、朝ごはんを食べてる途中じゃなかった? ご飯中に居眠りした?
右手に持っていたスプーンを口に運んだら、スプーンが無かった。左手のお椀も無い。無い、無い。食べている最中に落とした!
周りを探るけど、お椀もスプーンも無い!
「僕……食べ終わった……っけ?」
それにしてはお腹が空いている。
ふと地面から顔を上げると向こうに本郷中のみんなが集まって騒がしい。
いつも近くに居てくれる爺ちゃんもその中にいるのが見えた。
みんなの所へ歩いていくうちにここがオアシスでない事に気がついた。
ここ、ストーンヘンジ?
僕、いつの間にここに来たんだろう?
そんな些細な疑問はすぐにふっとんだ。
みんなが集まっていた先には見るからに血まみれのふたりと、その横に爺ちゃん。
「事件…………?」
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まぁ、事件は事件だけど、僕が思っていたようなのとは違っていた。
血まみれの死体は高松君。新堂君の仲間。
もうひとつの血まみれは鶴田君で、彼も新堂君の仲間、だけどまだ生きていた。今、爺ちゃんと湯本さんが手当をしているみたい。湯本さんは回復スキル持ちだ。
「そんなやつ、助けなくていいんじゃなか? それよりタガセンを捜さないと……」
「そうだよ」
「でも……このまま放置はちょっと、ね。」
僕は内藤君を見つけてそばに寄っていった。
「起きたか、ポチャ次郎」
内藤君は僕の顔は見ずにお腹に向けて話しかけてきた。
僕のお腹がぐうぐう鳴っている。お腹すいた。
爺ちゃんが布で手を拭きながらこっちに来た。
「一度、戻ろう。もう、ここに田川先生も新堂も徳野もいない。フォーレスタとの約束の時間はとうに過ぎた。恐らく、3人は帰還、したんじゃろう」
えっ、もう帰還しちゃったの?
寝過ごしたから、僕、置いて行かれた?
違う違う、ちゃんと起きた。朝ごはんも食べ……食べてる途中でまた寝ちゃった?
みんなも寝過ごしたの?
えええー、タガセンが僕らを置いて帰るなんて、絶対しない。絶対しない!
僕らはオアシスではなく、ディサートの街に戻った。内藤君達がお世話になっていたあの貴族の家に、戻った。
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みんなは物凄く落ち込んでいる。
そうだよね、やっと帰れると思ってたのに、まさかの置いてけぼり。
ディサートの召喚陣は『帰還』で使われてしまった。
と言うかフォーレスタのエルフさんに頼んで遠隔で操作をしてもらったのだけど、もしもストーンヘンジに誰もいなくても、『帰還』は作動するのかな?
僕はどうしても、タガセンが僕らを置いて帰還したとは思えなかった。
だから、新堂君達と揉めて、ストーンヘンジから外の砂漠へ出たんじゃないかって思ってる。
わからないけど、逃げる新堂君達をタガセンが追いかけて?
タガセンはテイムできるから、砂漠の魔物に食べられたりしないはず。
もしかしたら、もう、こちらへ向かって戻ってきている最中かも。
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僕は名探偵にはなれなかった。
血まみれだった鶴田君の目が覚めた。まだ全然動けないけど、少しだけ話が出来たって爺ちゃん達が言ってた。
真実は僕を驚愕させた。みんなはあまり驚いていなかった。
「やると思ったよ! だから新堂なんかほっときゃよかったんだよ!」
「何でアイツらも連れて帰ろうと思ったんだ! 時間は戻せないけど、帰還前日に戻って自分に言い聞かせたい! 新堂を信じるなっ!!!」
「そうよ、私達だけで帰ればよかったのに! 田川先生が……」
「そうだよ!田川が余計な事をするから、俺らが帰れなくなった!」
「そのタガセンが何でいないんだよ! 俺らを裏切って新堂と帰還したのか」
「タガセンはそんな事しないよっ!」
「じゃあ、田川はどこにいんだよ!」
僕は思わず声を上げたけど、名探偵になれない僕に答えはうかばない。タガセンが今、どこにいるのかもわからない。
助けて、太郎君。やないさん、日向君、漆原さん、城之内君……、董明さん……赤城君……千谷君……。
イチクミのみんなの顔がどんどんと浮かぶ。ブワッと込み上げた涙で目の前は曇って見えなくなった。
「田川先生は次郎を置いて逃げたりはせんよ。何かが起こったんじゃろ」
爺ちゃんが僕の顔を、鼻水でジュバジュバになった顔の下半分を布でゴシゴシ擦った。
「鶴田君から聞いた話だと、田川先生も眠らせて置いていく計画だった。田川先生はわしらより先に朝食をとってからストーンヘンジに確認に行った」
「新堂のとこに行ったんじゃないの?」
「いや、俺がヘンジまで送った。あの時間、ヘンジにはタガセンだけだった。俺はオアシスに戻ってみんなと飯食って……」
「鶴田の話だと、俺ら全員を眠らせて新堂達4人だけが戻るはずだった。けど直前で新堂と徳野が裏切り、高松と鶴田を刺した」
「そこで意識を失ったから、新堂達とタガセンのやりとりは見ていないのか」
「田川先生はわしらと同じ朝食をひと足先に食っとった。恐らくストーンヘンジで寝てしまったはず」
「って事はタガセンがヘンジで眠りこけているのに気がつかず、新堂と徳野は帰還したって事か」
「おそらくの。田川先生も眠ったまま帰還に巻き込まれたのじゃろ。田川先生が次郎を置いていくわけがない」
みんなが納得したのかはわからないけど、タガセンの悪口は言わなくなった。
「問題は今後、だな」
「7国の召喚で、全ての帰還が終了した。俺たちはもう帰る手段がないって事だよな」
女子が泣き出した。何人かが僕を見つめる。すがりつくように見られたけど、僕にはどうする事もできない。
ずっと頼ってきたタガセンはもう居ない。
「どうしたもんかのう……」
爺ちゃんも僕を見た。
こんな時、イチクミのみんななら……。
「とりあえず、ご飯食べて、ちゃんと寝て、身体を動かして。元気を保とう! どうにかなる。どうにかなるから」
って、太郎君あたりが言いそうな気がしたから、言ってみた。
「どうにかってなんだよ!」
「どうなるのよ!」
うわぁん、太郎君みたいに上手く伝わらなかったー。
でも諦めずに、伝わるまで頑張らねば!
「どうにかなるの! みんな疲れているし、お腹すいてるから今は良い案が出ないんだよ。まずはご飯!! 爺ちゃん、ご飯にしよ?」
「そうじゃの」
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あれから数日が経った。
鶴田君の傷は深かったみたいで中々よくならない。屋敷の偉い人がお医者さんを呼んでくれたけど、結局、傷を押さえて布でぎゅうぎゅうに縛るだけだった。
湯本さんの回復スキルでじわじわと傷の奥から塞がってはきているらしいけど、僕らは所詮中学生、医療知識なんてない。爺ちゃんもわからないって言ってた。
オアシスには薬草も少ない。もっと山岳地帯や森へいけばあるのかも。鑑定スキルを持っていても鑑定する草自体がないから役に立たない。
みんなも、ちょっとずつショックから復活し始めていたので前向きに今後の話し合いができるようになった。
現在、ディサートに残されている本郷中の生徒は、男子8人、女子8人、あ、鶴田君もいれて男子9人か。
それと爺ちゃんと僕。
全部で19人。
そのうちスキルがあるのは、爺ちゃんと僕以外だと内藤君(鑑定)、山﨑君(魔法移動)、由良君(体力回復)、湯本さん(回復)の4人。
攻撃系のスキルがいないこのメンバー19人で砂漠の移動は難しいかなぁ。
ましてや鶴田君は意識は戻っても、まだ身体は普通に動かせない。動かすとまた出血しちゃうんだ。
「女子で裁縫が得意な子いないかな」
「私、結構得意だけど? 何か縫うの?」
「うん。鶴田君のお腹……」
鶴田君がベッドの上で血相を変えて泣き出した。
「すみません!すみません!許してください。俺が悪かったです!反省してます!お願いだから縫うのやめて!許してぇぇ」
「ポチャ次郎……。麻酔はないぞ?」
「ちょっとぉ、私も嫌よ。鶴田のお腹なんて縫うの! てか、人の……人間のお腹なんて縫えないからね!」
そうかぁ。縫えないし、縫われたくないのか。でも縫った方が絶対早く塞がると思うんだよね。
「あ、じゃあ、誰か、ホチキスとか持ってる?」
「ごべんなざいぃぃ、許して、許してくだざい!もうしません!縫わないで!ホチキスしないで!」
ホチキスも嫌なのか……。じゃあ、糊?
僕は亜空間倉庫に突っ込んでいたカバンを取り出した。この世界に来た時に持っていたカバン。中に、糊が入ってないか探した。
うん、無いよね。学校に糊なんて持っていかないもん。
「やだっ、アイツ怖い!助けて、アイツに殺される!」
何でか鶴田君に異様に怖がられた。
鶴田君を嫌っていた内藤君達も、何故か鶴田君に同情してる。カバンは倉庫に戻した。
ほらぁ、動いたからまた血が出た。巻いている布に血が滲んできたよ。
探すのは諦めて今後の話を続ける。
「ブリンクランドまで戻れなくても、せめてフォーレスタあたりまで行けないかな。召喚の事を調べるならディサートよりあっちの国のがいいと思うんだよね」
「19人での移動は難しいんじゃないか?」
「少人数だけで商人の一行に付いて行って、なんとか山岳地帯まで行けないかな。他の皆は山崎君の魔法移動であとで移動させればいいし」
「でも、タガセンの従魔無しで歩いて砂漠を移動って出来るかな。攻撃スキルはひとりもいないし……」
「オアシスを経由していくが、オアシス間でも長いところは2日は歩くかもしれんの」
「由良君のリジェネでなんとか乗り切れないかな」
「何かあった時のために回復スキルの湯本さんにも同行して欲しいが、女の子にはちと厳しいな」
「そしたら、僕と高田の爺ちゃんと山﨑君と由良君の4人で行く?」
「俺らは?」
「皆はこの国で待っていてもらう」
「私達を置いて日本へ帰ったりしない? 絶対に迎えにくる?」
「大丈夫。絶対一緒に帰ろう」
「かなり時間がかかると思うが、それまでこの屋敷に置いてもらえるかのう」
「聞いてみる」
「ねえ、絶対に置いていかないでね!」
最後の希望であったストーンヘンジの『帰還』で置き去りなったショックは、結構な不安をみんなの心に刻み込んだみたいだった。
「安全そうな街とか見つけたら呼びにくるよ? 山崎君のブックマークがあるから定期的にこの街に戻ってこれるでしょ? 毎日戻ってくるね。それなら安心でしょ?」




