132話 獣の唸り声
-----(内藤視点)-----
ガァー……ガー、ガルルル……
グワァー……、グルグルル…………
「うる……せ……」
「んん……? 何の鳴き声……?」
耳の近くで何かの唸り声、獣の鳴き声……が聞こえてる。
気持ちよく寝ていたのに、何だよ……。
「もう、朝……?」
「んあぁ? もう朝か? さっきからガーガー、煩え」
「魔物……? 魔物かっ!」
深い眠りからの急激な目覚め、重たい瞼を無理やり開いた。
怠くて起こせない身体を無理に引き上げるように上半身だけでも持ち上げて周りを素早く確認した。
周りにはクラス皆が重なるように転がっていた。何人かが俺と同じように起き上がりかけている。
魔物は……いない。
とりあえず確認出来る範囲に魔物は見えなかった。倒れ込んでいるクラスメイトも怪我や出血があるようには見えない。
「内藤っ!」
呼ばれた方に目を向けると山崎が居た。脱力した身体で立ちあがろうと奮闘していた。
「内藤! これ、何だよ! 何があった?」
「わからん……」
「何でみんな倒れているんだよ」
「俺達……朝飯を食ってて、それから急に……」
「そうだよ! なんか身体から力が抜けて睡魔に襲われた!」
グルグルルル、ガルルル
獣の唸り声に慌てて飛び起きようとしたが、足に力が入らずに砂の中に頭から突っ込んだ。
「くそっ! 山﨑! 魔物だ」
「落ち着け、内藤」
「近くにいるぞっ! さっきから唸り声が」
「落ち着け! 大丈夫だ。そのグルグル音はポチャ次郎の腹の音だ」
見ると近くに仰向けに倒れていたポチャ次郎の腹の上下に合わせるように、ガルガル、キュルルルルと音が漏れている。
いや、腹の音にしては大きすぎるだろが!
「そうだ! 時間は大丈夫か? 帰還の時間……」
「わからん。今、何時だろう……。俺達どのくらい寝ていたんだ?」
とにかく山﨑とふたりでみんなを起こして回った。
皆が目を覚まし始め、パニックが広がった。
「ねえ、何で私達眠らされたの?」
「新堂達が何かやったに違いないじゃん」
「向こうの新堂の陣地、誰もいなかった! アイツら、私達を眠らせて自分達だけで帰還したのよ!」
「タガセンがいないぞ」
「タガセンは飯食ったら先にストーンヘンジに行くって行ってた。魔物が入り込んでいないか確認するって」
「用務員さんとポチャ次郎は居る。ポチャ次郎、まだ起きない」
「居ないのは新堂達4人か!」
「山﨑、魔法で飛んであっち見てきてよ」
「待て、山﨑ひとりだと危険だ。新堂はスキルを使うし向こうは4人いる」
「全員で行く? 帰還の時間までもう間がないかも」
「ポチャ次郎がまだ起きないんだけど!」
「置いていくか」
「重たいしな」
「ワシが背負う」
用務員さんがポチャ次郎を背負った。
俺らは何度か練習をしたとおり、山﨑周りに集まった。
「行くぞ」
一瞬後に景色が変わる。オアシスから砂のストーンヘンジに。
その中央で倒れている人間が居る。ふたり。
この世界での服である布が、砂の上に広がり、遠くからでもそれが血に塗れているのが見えた。
恐る恐る近づくと、うつ伏せに倒れていたのは、高松と鶴田だった。
「死……ん、でる」
「死んでる?」
「死んでる?」
「死んでいるの?」
用務員さんが高松に近づき、首や手首を触っている。
用務員さんは俺らを振り返らずに、頭を横に振り、広がっていた布を身体にかけた。
「残念だが……」
死んで……る、のか。
それから同じように鶴田の遺体の方へとゆっくりと歩いて行く。
高松の時と同じように確認をしたが、こっちを振り返った。
「鶴田君は生きとる。湯本さん、来てくれ」
回復スキルの湯本が呼ばれた。




