130話 最後の帰還
-----(謎組織のとある社員)-----
12月も半ば過ぎに埼玉県の中学校に行方不明の生徒25名が戻って来た。
都内の八王子市にある中学でも待ち構えていたが、そちらの教室は何も起こらなかった。
本郷中学校の生徒25名は変わらず不明のままであった。
いや、3名は既に帰還済み。彼らからの聴き取りに間違いがないのなら、既に7名は亡くなっているはず。
そして、緑陽中学の生徒1名を含む3名の行方もわからないままだ。
本郷中の3名が他の中学に混ざり帰還したという事は、その3名も本郷中の生徒と共に戻る可能性が高い。
帰還した第五中学校の生徒の話によると、3人は本郷中が居ると思われるディサート国へ向かうだろうとの事だ。
先に帰還した本郷中の3名からディサート国の情報を得ようとしたが、殆ど知らない状態であった。
そんな状態でいよいよ年を越し、本郷中22名(死亡はまだ未確認とする)と他3名が未帰還のまま、新しい年となった。
何の進展もないまま1月は過ぎ、2月にはいった。
2年3組の生徒を置き去りに、世間の同学年の子供達はもうすぐ3年になる。
そんな声がちらほらと出始めた頃、八王子市本郷中より連絡がはいった。
「進展があった!」
「急げ、本部へ向かう」
「本郷中ではなく?」
「もう、運び込んだそうだ」
「運び、こんだ?……怪我人、ですか」
「本部で説明がある。それとあちらは撤去作業が始まった」
あちらとは、本郷中学校の事だろう。
そうか、行方不明者の全てが帰還したら学校からは撤退だな。俺らがうろちょろしていては、他の生徒も落ち着かなかった事だろう。
それにしても怪我人が出たのか。第五中学の時も怪我を確認したが、あれほど慌てて『運び』込む事はしなかったはず。
もしかするとかなりの重症なのかもしれない。ご家族への説明が大変だな。
本部の会議室で聞かされた話は、大変な事態であった。
25名全員は戻らないかもしれない事はわかっていた。向こうで死亡した話を聞いていたからだ。
だが、まさか、まさかたったの3名しか戻らないとは!
会議室が騒ついた。
「帰還したのは本郷中学校の生徒、新堂君と徳野君の2名。それと腹部及び胸部に刃物によると思われる裂傷を負った男性、おそらく緑陽中学の田川先生と思われるかた、の、3名が2年3組の教室に戻ってきました。田川先生は現在、意識不明の重体です」
-----(日向視点)-----
「おい! 大変だっ!」
「どした、日向」
飛び込んだ部屋は、クラス部屋として使用している大きめの部屋だ。男女共に使っている休憩室だ。
クラス全員が揃っていたわけではないが、とにかくそこに居るやつらに伝えなくては!
「本郷中が戻った!」
「何だって! ポチャは? ポチャも戻れたか?」
「違う……、本郷中の教室に、戻って来たのは、3人だったって」
そこにいた数人が無言になった。
誰も口を開かない。
わかってる。俺が言うしかない。
「ポチャは……、ポチャ次郎は戻って来なかった」
無言だったみんなの目が、もっと大きく開いた。
「あ……じゃ、3人って……3人って誰が戻っ」
「俺、みんなを呼んでくる!」
赤城が部屋から走りでた。鈴山田もだ。女子を呼びに行ったに違いない。
部屋に人が増えていく。イチクミだけでなく、さか中やめぎ中も集まってきた。
「イチクミは全員揃ったか? おい、日向!話!」
城之内に言われて、自分がぼぉっとしていた事に気がついた。
「とりあえず、聞いた情報を話す」
ここに連れてこられてから地道に作った人脈で、あちこちから情報を仕入れていた。
さっき何気なく仕入れた新情報。
新しく建てられた棟に昨日入った生徒の話、既に帰還していた本郷中の蒼井達とは離れた棟に入った、それが最後の中学、本郷中の帰還であったと。
たった3人の帰還。そのうちひとりが大怪我だという。
「何だよ、それ……」
「3人って、新堂達?」
「新堂達って4人だぞ?」
「怪我しているのは大人だそうだ」
「大人? 本郷中って先生いなかったよな?」
「タガセンか高田さんか」
「たぶん、タガセン」
「いやいやいや、タガセンがポチャ置いて、ひとりで帰ってくるわけないじゃん」
「そうだよ! 自分が帰れなくてもポチャは帰すだろ」
「意識不明の重症だそうだ」
「タガセン……」
「何で……、ポチャは? ポチャは無事?」
「どう言う事だ?」
「帰還寸前に魔物に襲われたのか?」
「ポチャ次郎、またストーンヘンジから転げ落ちたのかも」
「って、本郷中の他の生徒は? ディサートに行ったら新堂達しか生きてなかったのか?」
「ポチャ次郎……」
「ポチャ次郎君……」
「魔物じゃない、と、思う」
騒がしかった部屋が一瞬静かになりみんなの目が俺に集中した。
「翔子さんが、看護師長に聞いたって」
「翔子さん? 誰?」
「翔子さんはポチャ次郎のお祖母さん。ここの看護師長と仲がいいらしい。色んな情報を探ってくれる天才婆ちゃん」
「お前、詳しいな。ポチャ太郎」
「おう。俺も何気に仲良しだ」
「で? 翔子さんが何だって?」
「タガセン、腹と胸何ヶ所も刺されてるって」
「え?……刺し傷?」
「魔物が?」
「刺す系の魔物……の、氾濫?」
「違う。ナイフみたいな刃物だって言ってた」
「ナイフ持った人型魔物にやられた?」
「つまり、人の仕業。……タガセンは誰かに刺された? しかもめった刺し」




