126話 女子の行方
タガセンは本郷中の女子の行方を原君に問いただした。
原君は小さな声で「城にはいない」と言った。
「城には、いない。では、どこだ? 知っているなら話せ」
原君は両手を握って俯いたまま話さない。膝がガクガクしている。元からボロボロなので今にも崩れ落ちそうな感じなのに、踏ん張って立っている。
内藤君達は知らないみたいでお互い見合いながら顔を振っている。
「知っているのか?」
タガセンがもう一度、静かに聞いた。
原君は小さく頷いてからボソボソ話した。
内藤君達が『処刑』と言って連れ出されたあとに、女子8人全員が『花街』へ連れて行かれたんだって。
花街……オシャレっぽいな。
この砂漠の国にまさかのフラワータウンが?
砂漠に咲く花がどんなのか気になる。…………ラフレシアみたいのだったらちょっと怖いな。
タガセンは無言で部屋を出ていった。
きっとお屋敷の誰かにフラワータウンの場所を聞きにいったに違いない。
女性専用の街だったら、僕らはきっと入口で止められて入れないに違いない。
そうして僕らがこのお屋敷にお世話になって数日後、なんと本郷中の女子8人がやってきた!
内藤君らと会ってみんな泣きながら喜んでいた。
タガセン……女性専用タウンに入ったんだ。勇気ある。
-----(女子視点)-----
私達は売られた。新堂達の言う事を聞かなかったから。
腕と首に鎖を付けられて8人連なって薄暗い廊下から外へ、小さい荷馬車にぎゅう詰めで乗せられた。外の見えない馬車。
「降りろ」
降ろされた先は、さほど綺麗でもない3階建ての石の建物。窓が無いから多分建物の裏側かな。
そこのボロい木の扉から中へと入れられた。
「待ってろ」
そう言い放って私達を連れてきた男は扉から出ていった。
言われたとおり、狭い部屋で座る場所もなく立って待つ。誰かがメソメソと泣き始めると釣られたように他の子も泣き出す。
「ねぇ……私達、どうなっちゃうの……」
「もう帰りたい」
「どこに? 新堂達の居るあそこに? 私は嫌」
「違うっ! 家に帰りたい」
「家に帰してぇ……ぐす、ぐす」
「泣くな、泣いても帰れないよ。それより、中村、ここから逃げない?」
「逃げたいけど、この鎖、どうにかしないと! 全員が繋がったままだと逃げられないよ」
「痛い! 引っ張らないで」
「ごめん、湯本。誰か鎖外せない?」
「鍵ないとダメじゃない?」
「ねえ、泣いてないでみんなで頑張ろう? マジック得意な子とかいない? 鍵開けとか出来ないかな……」
誰からも声が上がらない。そうだよね。そんな特技のやついないか。マジシャン部とか……なかった、ね。
困った。このまま鎖付きで逃げてもすぐに捕まるよね。
詰んだ。てかさー、もう何回詰んだか。
そもそも2年の新学期、新堂と同じクラスになった時点で『詰み①』。
突然、異世界召喚とか意味不明な事態に巻き込まれたのが『詰み②』。
それで、新堂に侍るように言ってきた徳野達に楯突いたら、何処ぞへ売り飛ばされた(らしい)今が、『詰み③』。
もう詰みまくりの人生よね。
「はぁぁぁ。重い。人生も重いけど、この鎖が重すぎる」
鎖を掴んで大きなため息を吐いた。
私達を繋いでいる鎖が、かなり太い鉄で作られていて重たいのよ。それが首と両手を繋げていて、さらに他の子の繋がっていく。
鎖が短いから腕を下ろせないし、みんなとも密着している。このままでは逃げられないわよねぇ。
「アクセサリとしてはイマイチね、この鎖」
「せめて、ひとりひとり分けて欲しいんだけど。あと錆びてて汚い」
「磨くか。磨いて光らせて美しい鎖に……」
「何のため!」
「ぷっ、ふふふふ」
誰かの笑い声、女性の高い声が聞こえた方を見ると、私達が入って来たのとは別の扉が開き、人が入ってきた。
綺麗な布を纏ったメイクの厚い女の人と、魔女みたいな、腰の曲がったお婆さん。
「売られてきて泣いていると聞いたが、元気じゃないかね」
お婆さんが魔女の口でにっと笑った。
「城から新しい子が売られて来たって聞いたのにまだ子供じゃない」
「あんただってうちに来た時は、この子らと同じで十にもなってなかったよ」
「そうだったかしら」
気になった事がいくつかあったので聞いてみた。
「あのぉ、やっぱり私達、売られてきたんですか?」
「そうだよ。城の客人が不要だから買ってくれとさ」
「城の客人……、クソめ。あと、私達、13歳です。10歳じゃありあせん」
「なんと」
「あらやだ。これで13なの?」
「すみませんね。コレで、13です。あと、私達、これからここで何するんですか? ナニするんですか?」
「やぁだ、この子面白ぉい」
「ふぅ。十の子……いや十三だったかい? 十三でも、あんたらのような子供には、ナニはさせんよ」
「えっ、何何? 中村、よくわからないけど、このお婆さんと通じ合ってる? 私達、何するの?」
「あとで教えるから黙って。ええと、私達、ここでナニしなくていいんですね。助かった。ええと、じゃあ、何をすれば?」
「中村ぁ、私達何するの?何するの?」
「黙れ。後で言うゆうたやろが! すみません、店長! 私達はどんな仕事を?」
私はこのお婆さんがこの店の頂点、店長とみた!
「そうだね。リリア、色々と教えておやり」
「はぁーい」
「リリア姐さん、よろしくお願いします! あと、この鎖、何とかなりませんかね?」
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「と言うわけで、私達8人はそこに匿われてお世話になっていました。もちろん、裏方のバイトですので花は売ってません」
タガセンや内藤君達に向かって胸を張って宣言していた。
フラワータウンでバイト。だけど花は売ってない。そこは花屋ではなかったって事? じゃあ何屋さんだったの?
よくわからないけど良かった。みんなが喜んでいたからたぶん良かったんだと思う。
原君は一度、城に帰ると言う。城に居る坂本君と吉田君も呼んできたいって。
坂本君と吉田君も、原君と一緒で、新堂君の下でイジメられていたんだって。
3人で逃げる計画を立てていたと言う。
内藤君はあまり良い顔をしなかった。
いきなり3人が城から居なくなると新堂達の捜索の手がこっちまで伸びてくるのではと危ぶんでいた。
けど、タガセンは了承した。
どのみちいつかは新堂達と対決……じゃなかった、帰還の話をしないとならない。
だから知られても構わないとの事だった。
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ディサートに居る本郷中の生徒20人のうち、内藤君達5人、原君達3人、中村さん達8人が集まった。
タガセンが前に口にした『まずは11』が一気に『16』になった。
残すは、新堂と3人の子分。
本郷中のみんなは『新堂達を救う必要はない』『このまま帰ろう』と口々に言う。
タガセンは黙っている。
タガセンが何も言わないので、みんなは新堂達の悪口がエスカレートしていく。
止める大人がいないと子供はタガがはずれるんだ。
でも、気をつけて。
タガセンが何も言わないのは、みんなの意見が正しいからじゃない。
間違ってる時も自分で気づくのを待っている。
それでも間違えたままだと、最後はアレが出る。
アレ。タガセンビンタだ。
よその学校の生徒は知らないよね。僕、口を挟んだ方がいい?
「あのさ、あの、待って」
「待たない。俺らがどんなに大変だったかっ! よその学校のやつにはわからないよ」
「そうよ、ろく中は召喚した国に恵まれてたじゃない」
「変な力を手に入れてやりたい放題!」
「新堂サイテー」
ああ、止められない。
確かにみんなの言うとおりなんだもん。
僕はちゃんとスキルを貰ったし、ご飯も毎日食べてた。誰からも暴力をふるわれなかった。
でも本郷中のみんなは違った。
特に酷かったのが、新堂達と一緒にお城に居て酷い目に遭い続けた原君達が想像以上に酷い状態だった。
身体中アザだらけ、切り傷もある。足も引きずってるし、腕も上がらないって。耳片っぽ聞こえないって言ってた。
酷い状態。回復スキル持ちがいれば……。
イチクミのみんなは帰っちゃったから、もう僕らの中には回復スキル持ちがいない。
僕のスキルは鑑定、生産(採取等)、亜空間倉庫、生産(狩猟等)×3だし、タガセンは生産(養殖、養蜂、飼育)、高田の爺ちゃんは土魔術だった。
「あの、あの、あ、のおおおおっ! ゲホゴホッ」
自分の大声で咽せた。でもみんなが僕を見てくれた。
「ごほっ、んん、んんん。あのさ、怒るのはあとでにして、まずは前向きな話、しよ?」
「前向きって、何だよ」
「ええとええと、ええと……あ。この中に回復スキル持ってる人いる? あと、みんなのスキル教えて。持ってる人」
誰も手をあげない。
「全部、新堂君?」
「いや、違うと思う。攻撃魔法っぽいやつを幾つか取ったはず。それから、他のを選ぼうとしていた時に扉に吸い込まれた」




