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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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125/127

125話 路地裏の屋敷

 僕らが市場を回っていたら、突然両脇から話しかけられた。

 と同時にタガセンと爺ちゃんに挟まれて近くの路地へと連れて行かれた。僕だけでなく話しかけてきた……誰かも一緒に。


 僕の被っていた布、ズレ落ちかけていた布をしっかり握ったままの汚れた子供ごと僕を抱え込んだタガセンが左側。

 右側は僕の腕を抱え込んだ爺ちゃんが反対側の手でもう1人の少年の腕を掴んで引っ張ってきていた。


 5人で路地に。

 これ、どういう状況?



「お前ら本郷中の生徒か」


「そ、そうです、てか内藤、何で生きてるんだ! 処刑されたんだよな」


「原こそ、何でそんなにボロボロなんだよ……城でいい思いしてるんじゃないのか」


「新堂達の下でいい思いなんか出来るもんかっ!」



 僕を挟んで言い合う2人。あ。本郷中の生徒だったんだ?

 捜そうと思っていたのに、向こうから飛び込んできてくれるとはラッキー。


 ええと、今の会話に出て来た名前は『原』君と『内藤』君だった。良かったぁ、いきなり新堂君だったら怖すぎる。


 タガセンがふたりを見てからボロじゃない方、ええと内藤くんへと向いた。



「どこかで静かに話せる場所はあるか?」



 荷馬車は置きっぱなし?

 内藤君が匿われている屋敷がすぐ近くにあるって。僕らはそこに移動する事に。

 市場に荷馬車を置いておくと盗まれちゃうから、タガセンが荷馬車を取りにかえり直ぐに戻ってきた。



 今回、ディサートには小さい砂トカゲに引かせた小さい荷馬車だったのだ、裏路地にも入る事が出来た。

 路地の壁沿いに少しだけ進むと、壁が崩れた場所があり、ボロい板が立て掛けられていた。


 その板を外してそこから出入りしていたんだって。

 内藤君が板を外して僕らを中へ招き入れる。砂トカゲもギリギリ通れる幅だ。

 入るとそこは家の裏側の壁が迫った狭い通路になっている。砂トカゲと荷馬車はそこに置いて、僕らは、通路を進んだ先にある簡易扉から中へと入った。



「山﨑っ! 由良……」



 ボロボロの、原君?が、驚いた顔をしていた。

 そう言えば、同じ本郷中の生徒なのに、さっき市場でも原君と内藤君はびっくりしあってた。

 何でだろ?


 そう……確か、内藤君が生きている事に驚いていた原君。

 ま、まさか、原君は内藤君をころ……し、た。だからコロしたはずの内藤君が生きている事に驚いた?

 僕、名探偵?



 全然違っていた。

本郷中の処刑されたはずの内藤君含む5人が、ここに居て、しかも生きていて驚いたんだって。

 犯人は原君じゃなかった。



-----(田川視点)-----


 蒼井達から聞いた話、ディサート国で召喚当初に処刑されたと言われていた男子生徒5名。

 実は生きていた。

 

 王に対して不敬な態度をとる生徒がいると密告があり、処刑を命じられたそうだが、子供を殺すとはと、側近が秘密裏に逃し別の場所に匿まっていたそうだ。



 生徒を匿ってくれたその側近はこの国の政り事を行うひとりだそうだ。

 この屋敷の持ち主でもある。

 彼は語った。

 

「この国は気候のせいで食糧も乏しく、国民も病で亡くなりやすい。子沢山を奨励しているが、結局幼いうちになくなるケースも多い。それを憂いて国から出る者も多いが、砂漠を越え切らず結局、亡くなる。商人に助けられて山岳へ移り住めた者は幸いだ」



 俺は黙って聞くしかない。



「最後の希望、召喚でどんな屈強な戦士がくるかと期待したが、まさかの子供25人。王家もそれをささえる貴族も、もう諦めている。国はこのままゆっくりと終わりへ向かうだろう」



 何も言う事がない。俺に出来る事がないからだ。

 ただ、聞くだけ。

 そしてこちらがこの国に来た事情を話す。



「子供達を返していただく。俺は子供を親の元に帰すつもりだ」


「すまない。そうしていただけると助かる」



「とりあえず、生徒達を守っていただきありがとうございます」



 こちらが頭を下げると、彼は申し訳なさそうに頷き、部屋から出ていった。




 ディサート国での滞在先がこの屋敷になった。

 ここを拠点に本郷中の生徒を捜し出し、ストーンヘンジから帰還をさせる。


 まだこの国は『帰還』を行っていない。


 助かった。帰還済みだったらもうポチャ次郎を親元に返せないところだった。


 内藤と原にこれまでの話を聞く。本郷中の聴き取りだ。



-----(ポチャ次郎視点)-----


 内藤君殺人事件(原君犯人説)は、完全に終了した。

 僕らは内藤君達を匿ってくれていた偉い人の家を拠点に今後の活動をするんだって。



 ディサートには本郷中の生徒が25人召喚された。先生はいなかった。

 蒼井君達3人は既に帰還した。そして2人死亡。


 本当にその2人は死んだのか気になったので聞いてみた。もしかしたら内藤君達みたいに生きてるって事はない?


 無かった。

 砂漠で魔物に食べられちゃったんだって。爺ちゃんが蒼井君達から聞いたって。


 じゃあやっぱり、残り20人、男子12、女子8か。

 それでこの屋敷に、内藤君を含めて5人いる。今、目の前には3人しかいない。あと2人は仕事中だから呼びにいってくれている。


 それから、原君と一緒にげようと思ってたのが、新堂君達4人の元に居た3人。


 待って、待って。

 整理しよう。ノートに書いていく。


 ええと、お城に新堂君。その配下の3人(高松君、鶴田君、徳野君)。

 その下に、今ここに居る原君、それと2人(坂本君と吉田君)。


 召喚直後に処刑されたと思っていた、この屋敷に匿われている内藤君達5人。


 ブリンクランドに逃げて来た蒼井君達3人と途中で南無南無の2人。

 あと何人?

 爺ちゃんがノートを覗き込んで囁いた。



「残りは女生徒が8人じゃの」



 そっか、後は女子8人を探せばいいのか。



「五中みたいに浮浪者になって炊き出しのご飯を食べにくるかな。それとかどこかのお店で働いているとか……」


「そうじゃのう。この街で炊き出しがあれば良いが……」



 僕はどうにかなると呑気に考えていた。



 この屋敷に匿われていた5人が揃った。5人のうち内藤君は市場へ買出しへ行き僕らと出会った。今日は他2人が屋敷の掃除、あと2人が別宅へ作業の手伝いに出ていたんだって。呼びに行ってくれたので全員が揃った。


 処刑されたと言われていた5人、ちゃんと五体満足だ。どちらかと言うとお城に居たという原君の方がボロボロだ。


 原君は5人を前に突然頭を深く下げた。そしてお城での話を始めた。


 内藤君達が処刑された事はすぐに後悔した、それでずっと心に残っちゃってたんだって。

 新堂君達がお城の人に嘘を告げ口してそれで内藤君達が捕まった。それを知っていたのに何も言えなかったって謝っていた。


 召喚されたばかりの頃はイキっていた原君たちも、実は大変な目にあっていた。

 今ここには原君しかいないけど、他のふたりももう我慢出来ずに一緒に逃げる計画を立ててたって。


 逃げたいと毎日泣いてた。本当は出来るなら元の世界、地球に、日本に、あの日に戻りたいって、何度も何度も夢で見て泣きながら目が覚めたって。

 家族に会いたい、お母さんのご飯が食べたい、学校で友達と遊びたい、何度も思ったって。


 原君は内藤君達の前で跪いて土下座をした。地面に頭をグイグイ擦り付けた。

 それからタガセンに向かって座り直してまた頭を地面に押し付ける。



「お願いします! 何でもします! 言う事聞きますから、連れて帰ってくださいぃぃぃ」



 泣きながら何度も頭を地面に擦りつけている。

 タガセンが肩を掴んで身体を起こしても、振り切って土下座を続ける。

 その後ろに居た内藤君達5人も並んで正座して土下座を始めた。

 みんな泣いている。



「おいっ、ポチャ! 何でお前も泣きながら土下座しているんだっ!」



 あ、なんか……、流れで? ぐすっ。


 高田の爺ちゃんに布でガシガシ顔中を拭かれた。こっちの世界って柔らかいタオルが無くて布結構ゴワゴワなんだ。ちょっと……かなり痛い。


 貴族の人とかはツルツルした布を使っていた。

 「あれはきっとシルクよ。こっちの世界にも蚕がいるのかな」ってやないさんが言ってたな。


 タガセンはため息吐きつつ、ちゃんと連れて帰ると約束をしていた。

 ふと思う。

 タガセンは新堂君達も連れて帰るつもりだよね?


 ジャイアントな大ボスの新堂君とその一派の3人。

 原君の話を聞いただけでも、僕にはちょっと無理。ろく中にはいなかったヤバイタイプなんだもん。


 タガセンはいつも正しい。

 そのタガセンが新堂君達も連れて帰るつもり(だと思う)。

 タガセンが正しいと思っていても、僕はどうしても新堂君達を助けたい気持ちが湧いてこないんだ。僕っていやなヤツかも。


 だって新堂君達はこの世界、この国に馴染んじゃってる気がする。

 もしかしたら人殺しとかしちゃってるかも。そしたら日本に帰りづらいんじゃない?

 もう日本で普通の中学生には戻れないんじゃない?


 僕は口に出していないけど、タガセンには僕の考えている事がわかっているみたい。

 僕の目を見て「それで、いいんだな」と言った。


「それで、いいんだな」


 イチクミのクラス会議の時にタガセンがよく口にした言葉。大きな声で怒鳴られるわけじゃない。でも、これを言われるとみんなは焦ってまた考え始める。

 何か間違えたかもって。


 タガセンが今、僕に言った。「それで、いいんだな」って。


 僕はもう普通の中学生ではなくなった新堂君と一緒に帰りたくないって考えている。

『それでいいんだな?』……『おいて帰っていいんだな』って意味かな。


 嘘でも「全員で帰りたいです」と言えばいいんだろうか?

 それはそれで、タガセンに嘘を見破られる気がする。



 そうか。

 僕は新堂君を見た事がない。

 会った事もない。

 話で聞いただけ。


 会ってから、もう一度考えよう。


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