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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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122/128

122話 その頃の日本①

 2026年の4月7日に始まった謎の中学生団体失踪事件は、未解決のまま世間を騒がせ続け、年の瀬を迎えた。

 連日テレビやネットでは『神隠し』や『UFOアブダクション事件』として取り上げられている。



 生徒達が最初に収容されていた病院はマスコミや一般人が押し寄せた為、急遽、自衛隊の敷地内に作られた施設へと移される事になった。


 その、とある施設内で保護されている緑中イチクミの生徒達。



「日向せんせー、ここは何処なんだ?」


「さあなぁ。完全に目隠しされた護送車で移動させられたからなぁ」


「あの車って犯人を刑務所に運ぶやつだよな?」


「いや、違うらしいよ? 自衛隊員だか機動隊が移動で使うって聞いたけど」


「俺ら、犯人でも自衛隊でもないけどね。ただの中学生」


「ただの、中学生じゃないじゃんw」


「そうそう。俺らは宇宙人にアブダクションされた可哀想な中学生だぞ?」


「何を言うかっ! 俺らは召喚勇者だぁっ!」


「今はスキル無いからただの人だけどなー」


「そ、そんな馬鹿なっ! ファイアっ! ファイアストォォム!………くっ、魔法が………」


「千谷、大丈夫。皆、使えないからな」


「てか、おい、千谷ぁ。元からファイアストームなんて使えなかっただろがw」


「そうだけどさ。召喚勇者が帰還したら、帰還特典とかあってもよくない?」


「帰還特典か……」


「レベルアップとか、新魔法とか、期待したんだけどな、ガッカリだよ」


「わかるっ! 俺も収納ポーチが亜空間倉庫に育ってるのを期待した」


「江崎ぃ!俺もだ! ポーチが拡大するどころか、無くなった。ポーチ……俺のポーチは何処に。アレとかソレとか入れてあったのに消えるとは許せん!」


「男子……。ポーチに変な物いれるなよ。けど気持ちはわかる。うちのポーチに入らない分をポチャ次郎に預けてたのよねー」


「ポチャ次郎君……今、どうしているかしら」

「ポチャ……」

「次郎、生きてるか」



「生きているぞ。少なくとも12月の時点では」



「城之内、董明、おかえり。取り調べは終わったのか?」



-----(城之内視点)-----


「終わった。取り調べじゃないけどな」


「ほぼ取り調べじゃない」



 一緒に呼び出されていた董明から、笑顔でツッコミを頂戴した。


 俺達は今年の4月7日に異世界に召喚された。緑陽中学2年1組全員でだ。男女12人ずつと担任の田川先生も入れての25人で召喚をされた。


 魔物がいて、魔法のスキルがある、まるでファンタジーゲームのような世界に俺達は降り立った。

 その『召喚』は『帰還』が出来る事がわかった。360日目に帰還をすれば、元の世界、召喚した瞬間に戻る事が出来るというものだった。


 つまり、1年間異世界を楽しんだ後に、俺たちは何食わぬ顔でいつもの日常に戻ってこられるという。

 360日という縛りの中、俺たちは異世界を満喫した。

 そしてクラス全員で、その日に帰還をした。……はずだった。

 はずだったが、俺たちは忘れ物をしてしまったのだ。


 ポチャ次郎というクラスメイトをひとり、向こうに置いてきてしまった。




 そして俺たちは予定していた日時には戻ってこれなかった。

 本当ならば、4/7に帰還出来るはずであったが、実際に戻ったのは5/6だった。


 聞いていた召喚のルールが間違っていたのか?

 それとも召喚時とは異なるメンバーでの帰還だったからなのか、理由はわからない。



 俺達が召喚された4/7、その日に向こうの世界へ召喚されたのは俺達ろく中も合わせて、全部で7つの中学校が、こちらから消えた。


 緑陽中、芽木つくし中、境井戸中、本郷中、千秋中学、麗朋学園、そして7つ目の中学が五中。

 五中は、昨日帰還したそうだ。その件で俺と董明が呼ばれていた。


 とは言え聞かれても答えられる事は殆どなかった。

 俺らが向こうに居た時に交流があったのは、芽木中と境井戸中だけだったからだ。


 向こうの世界は他の国と交流が難しい。スマホのような簡単な連絡手段もない。だから芽木中や境井戸中との交流も、始まるまでに時間がかかった。


 本郷中は交流はなかったのだが、そこの生徒が3名、俺達が居た国まで逃げてきたのだ。


 召喚された7つの中学のうち、召喚時点に戻れたのは境井戸中だけだった。

 それもあり、境井戸中の召喚は最初は気付かれていなかった。行方不明の中学校は6校と思われていた。


 そう。召喚時点に戻れない、それは行方不明と思われる。

 6つの中学の生徒が4/7に突然行方不明になったと世間では騒がれていたそうだ。


 そこに遅れて芽木中が帰還した。4/22だったそうだ。


 芽木も境井戸もうちのろく中も、同じ360日目に帰還をした。だが、戻った時間がズレた。

 境井戸中はズレずに4/7に。

 芽木中は4/22に。

 ろく中が戻れた日時は5/6だった。


 同じ日に帰還をしたのに、3校がズレたのは何故か。

 考えられるのは、召喚メンバーのチェンジぐらいだ。

 


 境井戸中は『召喚』と『帰還』が同じメンバーだった。

 芽木中はチェンジがひとりあった。

 用務員さんと本郷中の女生徒をチェンジした。『子供を帰す』と用務員さんが申し出てたのだ。

 本郷中の居る国まで行ければあちらから帰れたのだろうけど、俺達にはそこまでの時間は残されていなかったのだ。


 そしてろく中も、本来はひとりチェンジのはずだった。本郷中の木田とタガセンのチェンジ。

 だが、帰還寸前で本郷中の3人目である生徒の蒼井が陣へ入り、押し出されたのが、ポチャ次郎だった。


 想像でしかないが、もしも予定通りタガセンのみのチェンジなら、ろく中も芽木中と同じ日、4/22に帰還したのだろうか。

 だが、俺達の帰還は5/6になった。



 6つの中学からひとクラスが行方不明になった事でも大騒ぎだったらしいが、そのうちひとつの学校の生徒が戻った。

 芽木中の生徒は、最初は病院に収容されたらしい。

 が、そこに5/6、俺達が戻った。


 マスコミもネットも大騒ぎどころではない。国も慌てて別の収容先を造ったそうだ。

 今居るここ、どこぞの自衛隊の敷地内にある病院も兼ねた施設だそうで、俺達は定期的に検査をされている。

 もちろん、警察でも自衛隊でもない何処かの組織から、入れ替わり立ち替わり、聴き取りも行われてもいる。


 最初は尋問のように同じ質問を繰り返されて、皆がキレた。

 イチクミ全員でストライキを起こしてやった。

 俺達はタガセンに鍛えられているから、やるときゃやる。黙る時は黙る。


 1日3回の食事は出るが、検査と尋問の日々。キレない方がおかしい。中学生を舐めるなよ?

 要求書を提出した。要求が通るまで何も言わない。


①部屋は4人以上をひと部屋とする(個室反対)

②ドアに鍵をかけるな

③クラスで会う時間を作れ

④家族との面会

⑤勉強が遅れる、勉強の時間、教科書の差し入れ

⑥身体を動かす時間


 俺があげた要求はそんなものだったが、日向や他のやつらも要求や嘆願書を出していたそようだ。


・10時と3時におやつを出せ

・毎朝校庭を10周走る(誰だよ!これをあげたやつ!)

・SNSしたい(これは却下で、観るだけなら可となった)

・趣味関係の差し入れ(個人で要相談だそうだ)


 他にも色々と出たらしい。刑務所の独房チックだった場所が、規律の厳しい寮程度までレベルアップした。

 芽木中や境井戸中のやつらと会えたのも、この後くらいだった。


「やっぱ、ろく中だな、頼りになる」

「ありがとう!」

「毎日毎日同じ事を聞かれてノイローゼなりかかってた。異世界へ行った夢を見てたのかもって思い始めてた」



 芽木と境井戸の生徒は、かなりキツくて寝込んだやつもいたそうだ。採血されすぎで貧血で寝込んだという女子も多かったようだ。中学生に取る態度じゃないよな。俺達犯罪者じゃないんだぞ!


 家族と面会も始まり、少しずつ皆が自分を取り戻していく。

 だけど俺達は忘れない。

 あちらに残してしまったポチャ次郎の事を。

 何かにつけて話題に出す。


「連絡……取れないのかな」

「ポチャ次郎、何としても帰ってきなさいよ!」

「タガセンがいる。タガセンが何とかしてくれるはず」



 俺達を尋問していた謎の組織?も、尋問よりも、俺達の会話から情報を取ろうとやり方を変えたようだ。

 クラスで会う時間が自由になった。芽木や境井戸ともいつでも行き来できる。


 やつらは俺達の話を聞いている。警備のように部屋の角に立っている。

 俺達は別に聞かれて困る事はないので、何でも堂々と話している。向こうで疑問が発生すると呼び出される感じだ。


 俺達が戻ったひと月遅れ程で、6月に千秋中学が戻ってきた。

 千秋中学はウッダレジオン国に召喚されていたらしい。ウッドランドより北の森だったはず。


 もしかしてポチャ次郎やタガセンが訪れたかもしれないと思い聞いてみた。

 「知らない」「会っていない」との答えで、軽く失望した。


 残されたポチャ次郎を帰すために、タガセンならウッダレジオンへ向かうのではと思ったからだ。

 千秋中学からはなんの情報も得られなかった。赤城達もガッカリしていた。


 俺達は相変わらず、この謎の施設から出られない。


「もしかして俺ら一生ここに閉じ込められたままなのか?」

「嘘だろ……」



 最近は別棟で授業も始まった。本当に寮生活をしている中学生のようだ。

 7月に入った。



「夏休みとかくれるのかなぁ」

「くれてもどうせここから出ちゃダメなんだろ?」

「私達の夏休み……、海も山もイベントも無し?」

「嘆願書書こうぜ、嘆願書! 海には行きたいよな」

「川でキャンプとバーベキューも」

「夏コミ……。くっそぅ」

「梁井さん?」

「何でもない」

「もしかして、体育祭とか文化祭も、無し?」

「いや、やろうよ! 芽木中とさか中とろく中、それと千秋もいるから4クラスあれば出来る。体育祭やろう!」

「千秋、のってくれるかなぁ。なんかちょっととっつきにくくない?」



 そんな話で盛り上がっていた7月も終わりの頃、5つ目の学校、麗朋学園中等部2年B組25名が戻ってきた。

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