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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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120/125

120話 結局、最後はディサート

「塔の9階はアンブリア国」


「つまり、そのフロアの祭壇の魔力石をマックスした、と言う事は」


「ええ。アンブリアの祭壇は、いつでも帰還の操作が可能、と言う事です」



 あの、あの、爺ちゃん? この中途半端に身体を起こした状態が物凄く辛いんだけど。僕、身体を起こしていいの? 無い腹筋が鍛えられちゃうよお。


 僕が自分の体重を支え切れずに地面へ傾いたのに気がついた爺ちゃんが慌てて僕の身体を抱き起こした。

 ふぅ、壁に寄りかかったら怒られちゃうかな。


 爺ちゃんは僕のおでこに付いた土をはらいながらタガセンと話している。



「その情報はフォーレスタからですか?」


「そうだ。イチゴーが持ち帰った手紙にあった」



 タガセンの従魔であるコンドルのイチゴーさん、その足に付けられていた手紙。そんなに大きな紙ではない。そこに小さい文字がビッシリと書かれているのがチラリと見えた。しかも、こっちの文字。僕には読めない。



「フォーレスタが部族間で集めた魔力石を、少量だが持っていった。が、既に祭壇は燭台が全て灯っていた、と」

 

「よく、それが次郎坊と繋がりましたな。 はなっから点いていたかもしれませんでしょう?」


「それはない。塔の全ての階は初めに確認をした。どの階の祭壇も沈黙だった」


「なるほど」


「となると、あの頃、ブリンクランド、コスタル、ウッドランドとそれにディサートの4フロアに魔力石をセットしていた生徒達の誰かが、アンブリアにもと考えた」



 そこで爺ちゃんが「ああ」と頷いて、タガセンも「うむ」と頷き返していた。

 僕には何でバレたのかわからない。



「けれど、これで五中の生徒の帰還の目処がついた」


「よくやった、次郎坊」



 爺ちゃんに頭をグリグリ撫で回された。怒られていたはずなのに褒められている。よくわからない。

 よくわからないけれど、五中のみんなが帰れるようになった。

 



-------


 それから、タガセンはイチゴーさんを使ってフォーレスタへ連絡を取り、決めた日時に、五中のみんなはストーンヘンジで待機した。


 タガセンと一緒に爺ちゃんと僕は、ストーンヘンジの外で五中のみんなを見送った。

 淡い光が段々と強くなり、目を開けていられなくなった。ようやく目を開くとそこには誰も居なくなっていた。



「帰れたかな」


「帰れたじゃろ」


「俺たちも戻るぞ」



 僕らはタガセンの従魔に乗り、とりあえずアンブリア街に戻った。







-----(田川視点)-----


 召喚を行った7ヶ国の、最後の1国。

 砂漠の中にあるというディサート国。


 ディサート国は、八王子市立本郷中学2年3組の男子15人女子10人の25名を召喚した。

 本郷中は荒れた学校だったのだろうか、召喚された2年3組もあまり良いクラスだったとは思えなかった。とは言え、蒼井達一部の生徒から聞いた話だけなので、それもどこまでが真実かはわからない。


 ディサート国での過酷な生活に嫌気がさして国から脱出した生徒が5人、それが蒼井達だった。

 蒼井、木田、瀬戸、河野、山口の5名。瀬戸と山口は女生徒だ。


 5名で国を出たが、ブリンクランドまで辿り着いたのは3名だった。河野と山口は砂漠で亡くなったと聞いた。

 蒼井達3人はこっちの生徒の帰還時に、混ざって帰還をした。

 元は俺と高田帰還枠使い2名の帰還を考えていたが、結局、草凪がはみ出た事で3名が帰還した。


 俺たちが帰還するには、本郷中の帰還の席を利用するしかない。

 あちらは帰還のための席が余っているはずだ。蒼井達3人、それと途中で亡くなった2名、それ以前にディサート国で、5人の生徒が処刑されたとも言っていた。


 つまり、帰還の席は10名分は空いている。

 そして、ディサート国に残っている生徒は15名か。


 蒼井達の話によく出てきたクラスのボスが新堂、その仲間で高松、鶴田、徳野の3人。

 この4人が帰還の妨げになりそうだ。彼らを連れて帰れるだろうか?


 そもそも、帰りたがるのだろうか。他の生徒は、まだ、生きているのだろうか。




-----(ポチャ次郎視点)-----


 五中のみんながあっちへ帰った。地球へ、日本へ、多分……自分のうちへ。


 あっちで、ろく中のみんなと会えたかな。戻ったら会うって言ってた。僕が元気なのを伝えてくれるって。

 イチクミのみんな、元気かなぁ。


 僕らは一旦、アンブリアの街へ戻った。ディサート国は砂漠だから準備をたくさんしていかないと、なんだ。

 そう、召喚された最後の学校、本郷中のいるディサートへ行くのだ。


 ちょっと、と言うか、物凄く不安。砂漠も不安だけど、本郷中の生徒に会いたくない。

 蒼井君達の話……あ、僕は他の人からの又聞きだけど、その本郷中の話を聞いて、『会いたくないなぁ』と思っている。


 やだなぁ。暴れん坊のいじめっ子のヤクザみたいな暴力的な……とにかく僕の苦手を全部集めたみたいな新堂君ってやつに会いたくない。

 でも、僕らが帰るにはもう使える帰還用の召喚陣がディサートのソレだけなんだって。

 だから、ディサートへ行かないとならないんだ。



「タガセンも一緒に戻るよね? 高田の爺ちゃんも一緒に帰るよね?」


「そうだな」


「今となってはこの世界に居る意味もないからな」



 一応、ひとりで帰されるとか絶対に嫌だから、何度も確認はする。


 蒼井君達の話だと本郷中は男子15、女子10って言ってた。

 それで、召喚されたばかりの頃に、男子5人が死んだって言ってた。

 蒼井君達がブリンクランド来る途中で2人死んじゃったとも言ってた。


 僕たちイチクミは何となく異世界を楽しんでたみたいなとこがあったけど、本当は本当に、凄く怖い世界だったんだ。

 だからタガセンがいつも『気をつけろ』って、何度も何度も言ってたんだ。僕、流して聞いててごめんなさい。


 それで、召喚された7つの中学のうち、残っているのはもう本郷中だけ。

 塔の召喚陣も、帰還未使用で残っているのはディサートのみ。

 一回使ったら連続では使えないとか言ってた。だから僕らはディサートまで行かないとならないんだ。


 帰還には大量の魔力石が必要なんだけど、それは問題ない。イチクミのみんなが魔力石ザクザク集めてた。

 蒼井君達の帰還で必要になるかもしれないから、ディサート国の分も貯めたんだよね。ディサートの祭壇には既に石はセット済み。


 あとは、ディサート国のストーンヘンジに行くだけ。

 と言うか、まずはディサート国へ行かないとならないんだけど、前途多難だよね。


 だって、ディサート国が砂漠のどこにあるのかわからない。

 それから、ストーンヘンジの場所も不明。

 さらに、本郷中の生徒の居場所も安否も不明。


 タガセンはきっと全員連れて帰るって言うよね。


 でも、どうなんだろう。

 新堂君達は『帰る』って言うかな。元の世界に戻っても普通の生活には戻れない気がする。

 他の生徒は……。


 五中は揉めてたけど、本郷中に比べたらマシなのかな。

 違う。比べる事じゃない。『誰よりマシ』とか関係ない。辛いか辛くないかは本人が感じる事。

 五中みんなだってそれぞれ辛かったよね。


 結局みんな一緒に帰ったし、帰る前に仲直りしてたっぽいし。

 本郷中はどうかな。


 話が大きくなっているだけで、本当は、新堂君もただの威張りんぼくらいだったらいいな。

 最初に死んだ5人……奇跡的に助かってたらいい。てか、何で死んだか聞いてない。死ぬ話は怖くて嫌い。『死んだとか嘘ピョン』って、誰かが言ってくれたら、いいな。



 毛布にくるまってそんな事考えていたら、隣で寝ていた爺ちゃんに頭をグリグリされた。


「もう寝ろ」


 タガセンからは怒られた。



-------


 次の日は、朝からディサートへ行くための作戦会議。



「今度も商人に化けてディサートに侵入するかのう」


「まずは砂漠に慣れる事、それから砂トカゲをテイムする」


「僕何か拾いまくる」


「商人が通りかかってくれれば情報が手に入るが、山と違って砂漠は道があるとは思えんな」


「けど、商人がいるなら、必ず商人の通り道があるはずだ」


「オアシスか、方向頼みで進んでる事も考えられるな」


「とにかく砂漠対策をしましょうか」


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