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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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117/125

117話 25人

 中島君をゲット(罠にかかったのは高橋君だけど)して、みんなで市場へと戻った。


 タガセンとイインチョはまだ戻っていない。ストーンヘンジを探しながら魔法移動のためのブックマークをしているはず。

 僕らは市場で、自分達の商品を並べたり売ったり、交代で他の屋台買い物をしたり、ゴミ置き場の様子を見に行ったりした。


 そう、市場に数箇所、『ゴミ置き場』を設置したのだ。もちろん市場の親方さん了承のもと、だ。

 そもそも、ゴミ置き場やゴミ箱の概念がないのか、そのせいでどの屋台もゴミをそこらじゅうにポイ捨てだった。


 今までは、仕事の無い孤児とかが安い賃金でゴミ集めをしていたそうだけど、それも不定期。

 だから市場は、なんかいつも薄汚れた感じがあった。


「日本人には許せない感覚」

「無理。綺麗な屋台のしか食べられない」



 というわけで皆で話し合って、ゴミ箱の設置、ゴミ置き場、ゴミの分別表示などもしてみた。

 最初はほとんの屋台や店から無視されたけれど、僕らが毎日市場を綺麗にしていくと、汚すのが申し訳ないと協力をしてくれるとこが増えていった。もちろん全部ではない。


 だけど、おかげで僕らの市場清掃もかなり楽になった。五中の人数も増えたので、交代でゴミ当番を決めて、日中も軽く見回る。


 なので午後の清掃は楽ちんだ。ゴミ箱のゴミを回収してゴミ置き場へと持っていく。ゴミ置き場のゴミはある程度溜まると、街の外で焼却するんだって。プラゴミとか無いからほぼ燃えるゴミ。金属ゴミは別にしておくと鍛治関係のどこかが持っていくんだって。



 僕らは夕飯の後に、全員で話し合いをする。今日はタガセンとイインチョがまだ戻ってきていないけど、先に始めた。



「なあ、中島は、貴族んちに帰らなくても平気なん?」

「誰が捜しに来ちゃうんじゃない?」


「いや、大丈夫。来ない。アイツら、もう、俺に興味ないし……」



 中島君は夕飯の時に自分が今までどうしていたかをみんなに話した。貴族に連れられていった後が、そんなに良いものではなかった話だった。介護の話は出てこなかった。



「って事はさ、案外、久喜田達、残り5人も簡単に返して貰えるんじゃないか?」

「かもな、どうなんだ? 中島」


「他の貴族? ごめん、俺、他のとこの話は全く知らないんだ」


「貴族同士で集まりとかないん?」

「そうそう。パーティみたいなの」


「どうだろ? あったとしても俺は呼ばれないし、出た事ない」


「ええと、イインチョの話だと、4公爵と3侯爵か。中島が最初に1番権力のある公爵んとこに連れて行かれたんだよな?」

「だよな。最初にいなくなった」

「イインチョは侯爵……オオヤケじゃない方の侯爵か」

「そう。結構良いおやっさんタイプの人だ。貴族風吹かさない」


「残り5人。公爵んとこに3人と侯爵に2人」

「口にすると同じに聞こえるね、こうしゃく」

「だな、まぎらわしい」

「じゃあさ、オオヤケとソウロウにする?」

「お、いいな」

「ソウロウじゃないわよ。『候』だと縦棒が入るわ」

「あれ?そうだっけ?」

「ほぼ一緒、いいよ、そうろうで」


「タガセンとイインチョは今日は外に行ってるんだよね?」

「そうだよ」

「貴族は返事待ちのはず。まずは会ってもらえる日を決めるんだっけ?」

「貴族、面倒くせえなぁ」



 ちょっと考えている事があるので、提案してみる。



「ねえ、もしも他の貴族も中島君とこみたいに、僕ら召喚人に興味がなくなっていたとしたら……」


「うん。したら?」


「罠を仕掛けない?」


「ええっ!?」

「誰を罠に? 貴族を罠に仕掛けるのか?」


「違う違う。高橋君が中島君を罠を仕掛けたじゃない?」


「仕掛けてねえよっ!」

「お前……、仕掛けた、のか?」

「ちげえーよ」


「だからさ、他の5人も、罠でゲットしない? 獲物は獲ったもん勝ちだと思う」



 一瞬、みんなが静まってしまった。失敗した。僕の提案はイマイチだったんだ。



「……ごめん、発言取り下げま…」


「そうか! それだよ!」

「どれだっ?」

「5人もきっと狩りに出されている。それは間違いない。だから狩場に罠を仕掛けて、かかったように見せかけて攫う」


「誰を?」


「だから、久喜田達5人を、だよ!」


「なるほど、そう言う事か」

「狩場がわからなくない?」

「それは大丈夫。貴族の屋敷を張って、狩場を探る。久喜田達が出てきたら気づかれないようあとをつけよう」

「誰か、隠密スキルのやつ、いたっけ?」

「ひとりで出てくればいいけど」

「そこな」

「まずは別れて探ろう。どうせ面会予約まで時間はある。その間に出てきた召喚人をゲット出来たら儲けだ」


「1年前、召喚直後に比べて、俺らの扱いはだいぶ下がっている。俺がいた公爵家だけじゃないと思う」


「だよな。ほかのオオヤケやソウロウも似た感じだと思う。だってさ、折角、召喚した25人、よく調べもしないで18人放置だぜ?」


「そうだよな。俺ら1年前より、今、急激にスキルアップしている」


「本当なら、国や貴族が、1年前にソレをするべきだった。放置しないで25人を面倒みて上手く使いこなすべきだった」



 そうか、何かが引っかかっていた。それがわかった。



「あの、この国さ、王様いないの? 僕らろく中が召喚されたブリンクランド国は、王様が小さい子供だったんだ。だから宰相さんとかが僕らを面倒見てくれてた。でも、この国って貴族の話は聞くけど王様は?」



「そう言えば、聞かないな」

「あ、でもさ、王家とか王城の話は、平民の間で聞くよ?」

「修道院でも耳にした記憶がある」

「それにしても貴族が権力を持ちすぎてないか?」

「ポチャ次郎君のとこみたいに、まだ幼い王様とか?」

「貴族街の最奥に王城があるのよね? 平民は見た事ないそうだけど」

「中島は見た事あるのか?」


「いや、俺は訓練の日々でそっちには行った事ない」

「でも、中島のとこの公爵が1番王家に近い権力と立地のはず」


「中島、一旦、屋敷に戻るか?」


「嫌だよ。絶対嫌だ」



 中島君が涙目になった。よっぽど高齢者貴族のお世話が嫌だったんだな。



「ひとりで行動したやつを見かけたらゲットだな」

「勝手に誘拐したって騒ぎにならないかな」

「本人が帰りたがらないなら大丈夫だろ。そもそも最初に誘拐したのがあっちだからな」

「そうだよね? 召喚なんていきなりの大誘拐だよ!」


「ソロ狩りの場合のみ、行動。即接触して話を聞く。こっちに同行希望なら連れて帰る」

「だな。そうしている間に、タガセンが貴族の誰かと会うだろうし」


「あの、一応、この作戦はちゃんとタガセンに報告してね。ホウレンソウを怠るとタガセンビンタになるかも」


「ま、まさか……噂の……」



 タガセンビンタってどこまで噂になっているんだろうね。




-------


 その夜、遅くにタガセンとイインチョは帰宅したらしい。

 朝にふたりがいる事に気がついた。


 市場を走って(広いから1周)、朝食の準備をしていたらタガセンと一緒にテントから出てきたのはイインチョではなかった。

 みんながざわついていた。



「久喜田……」

「久喜田君、それ……」



 久喜田君と言うのは、五中の残り5人、貴族に囲われているひとりだ。

 タガセンの後ろから出てきた久喜田君は、かなりやつれていた。それだけでなく、腕や顔、足にも引き攣ったような火傷の痕があった。見るからに痛そう。痛かっただろうな。


 ストーンヘンジを探しに行ったタガセンがなぜ貴族街に居るはずの久喜田君を連れて戻ったのか。

 理由は、昨日僕らが話していたのとほぼ変わりはなかった。


 久喜田君も昨日の中島君と一緒、俯いて苦しそうに淡々とこの1年を語った。



「俺……スキルの使い方が、わからなくて……」



 久喜田君のスキルは『魔法武器』だそうだ。



「スキルの使い方がわからなくて……。最初の1ヶ月はどうやって魔法武器を出せるのか、ずっと部屋で詠唱してたけど全然武器が出てこなかった」



 あれ? 『魔法武器』って、確か赤城君達バレー部が持ってたスキルだけど、手から武器を出したりしてたっけ???



「それで、街の武器屋で買ったファイヤソードを使ってた。でも、俺、剣とか使った事なかったから、いつもあちこち火傷した」



 んん? 火属性の魔術持ちは『火』の耐性があるとか千谷君が言ってたを覚えている。

 久喜田君が火傷?……何でだろ?

 あ、そっか、久喜田君のスキルは『魔法武器』一個だから、火魔術は持ってなかったからか。それは確かに扱いが大変そう。



「どんなに……ソレ風にしても、剣が出来る騎士とかには俺がダメダメなのがバレてて。そのうち訓練所の隅に追いやられた」



 久喜田君が何かに耐えるようにグッと指を握り締めている。



「俺……その後、みんなのとこに戻ったんだ。そしたらもうみんな居なくて……。俺が最初に自分ばかり優先したから、皆に捨てられたって思った。先に皆を捨てたのは俺なのに」



 久喜田君が頭を下げたと同時に、横に中島君も並んで頭を下げた。



「ごめんなさい! また、皆の仲間に入れてください」

「すみませんでした。クラスに戻りたいです!お願いします」



 高橋君も走り寄って一緒に頭を下げた。みんなも走り寄って揉みくちゃになっていた。

 僕はそれを外から見て、イチクミみんなが懐かしくなった。


 戻りたいなぁ、イチクミに。



-------


 感動の後に待っていたのはタガセンの説教だった。

 昨日の話し合いは、高田の爺ちゃんがタガセンに話してくれていた。けれど危ない狩場まで行ってしまっていた事を怒られた。

 ファイアボアって結構危険なんだって。普通に罠にかかってるから、意外とのほほんとした魔物なのかと思ってた。



 それと今日、タガセンはイインチョがお世話になっていたそうろう貴族と話に行くんだって。

 他の、おおやけ貴族やそうろう貴族の情報を貰って来るって。

 ついでに、中島君と久喜田君奪還の話もして来るって。


 今日は、市場から出てもいいけど、街の外に出ないように言われた。それと全員一緒に行動するようにと。



「気が緩んだ時こそ事故が起こりやすい。今日は市場近辺で基礎体力作りだ!」



 タガセンにビシリと言われてしまった。僕の苦手な基礎体力作り。はぁ、気が重い。

 久喜田君の火傷は回復スキル持ちの千草さんがスキルを使っていた。出来たばかりの傷は治せたけど、火傷痕は難しいって言ってた。


 久喜田君や周りの人がしょんぼりしていた。

 でも、待って……?



「難しいって事は、出来るけど難しいんだよね? 出来ないんじゃないんだよね?」



 久喜田君達の顔がパアっと明るくなった。反対に千草さんがイラっした顔になって僕を睨んだ。



「ポチャ次郎くぅん、めっちゃ大変なんだからね。ちょっとずつ、毎日ちょっとずつ、引き攣った皮膚を治さないとならないんだから!」


「良かったぁ。さすが、聖女?」


「聖女じゃないわよ! ただの回復スキルよ! このまんじゅう!」



 怒っているけど本当は怒っていない、漆原さんみたいだ。




------


 それから数日。タガセンがイインチョのとこのそうろう貴族経由で、残りの4人も返してもらえる事になった。

 おおやけ貴族のとこにいたのが、水魔術、風魔術、土魔術。そうろう貴族のとこが付与魔術持ちだ。


 どこも『使えない』と、放置であったらしい。

 えええ? かなり良いスキルだよね? 使えないというか、使い方を知らなかったみたい。

 この世界に似たスキルはあっても、召喚で授かるスキルとはやはり別物らしい。


 スキルの使い方が、文献とか書物で残ってなかったのかな?この世界、本を読む人(もしくは書く人)が少ないのかな?

 ブリンクランドには書庫があった。イインチョにその話をしたら、もしかしたら貴族街最奥の王城の中にあるのかもと言ってた。


 もう、どうでもいいけどね。

 だって、五中25人、全員が揃ったんだ。

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