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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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116/128

116話 深淵

 -----(中島視点)-----


 俺の目の前でファイアボアが宙吊りになった。


 俺は逆さまにぶら下がったボアの頭から目を離せないまま、膝から崩れて地面にへたり込んだ。



「あれ、罠かかったんじゃないか?」



 誰かの声が、樹々の向こうから聞こえた。

 草を掻き分ける音、そしてヒョコっと現れた顔は見た事がある顔だった。

 名前が直ぐには出てこない。そうだ、あれから1年以上も経ったんだ。



「…………、た、高橋?」


「んん? あああ? 中島ぁ!」




-----(ポチャ次郎視点)-----


 今朝から仕掛けた罠を見て歩いていた。生産(狩)スキルの高橋君も一緒に罠を仕掛けている。

 トドメをさす役の宇井さんは弓を構えて、僕らより少し後ろでスタンバイしている。小剣を持った峯岸君もだ。


 他のみんなは少し離れた場所で、スキルを試したり何かを拾ったりしていた。


 イノシシの鳴き声がした。罠にイノシシがかかった! けど、驚いたのはイノシシのすぐ近くに人が座り込んでいた事だ。

 あそこは宙吊り罠しか仕掛けていないはず。以前に本郷中の蒼井君がかかった足を挟む系はセットしていないのに。


 よく見るとその人は罠にかかったのではなく、単に腰を抜かしているだけだったみたい。

 それよりも驚いたのは、座り込んでいたのは高橋君の知り合いだった事だった。


 五中の生徒……貴族の家で高齢者のお世話をするために連れられて行かれた人達だっけ? 中学生なのにお爺さんの介護とか大変だよね。しかもお金持ちの老人……わがままそう。僕の勝手な想像だけど。

 『森で木の実を採って来い!』とか言われたのかな。


 なんて想像を膨らませていたら、突然、その彼が地面に突っ伏して大声で泣き始めたので、さらにびっくり。



「わぁああああああああ、うわあ、んぐっ、ああああ」



 隣で高橋君も驚いて硬直している。それに向こうにいたみんなにも聞こえたようで草木を掻き分けてやってきちゃった。



「どした!」

「どうしたのっ!」



 みんなが地面にひれ伏して泣いている……中島君?を、取り囲んだ。



「中島?」

「中島君……、何でこんなとこにいるの?」

「お前、貴族の屋敷で豪遊三昧しているはずじゃあ……」

「てか、何で泣いてるんだ?」

 


 地面に擦り付けていた顔をあげた中島君は、みんなを見てから、涙がもっと止まらなくなったみたい。



「ごめんっ、ごめん、みんな、ごめんなさい、すみません、許してくだっ、さい……、ごめっ」



「高橋君……喧嘩してたの? えと、中島君と」



 こっそり高橋君に聞いた。



「え、あ、違う、けど……ほら、貴族のとこに……、いや、何でここにいるんだ?」



 中島君が泣き止むまで泣かせておいた。

 放置したんじゃないよ? 泣きたい時は思いっきり泣いた方がいいって、誰かが言ってたから。誰かは忘れたけど。


 一応、何人かは近くに残って他のみんなはここを中心にまたスキル訓練を続けた。

 高橋君は中島君が気になるみたいで、中島君の周りで作業(罠設置)をひたすら続けている。



「高橋君……。高橋君って中島君と仲良しだったの?」



 僕の声が中島君にも聞こえたのか、地面に伏せったままビクリと震えたのが見えた。

 高橋君は、中島君をチラッと見てから、また罠設置の作業を進めてる。



「別に。……仲良くなんかなかった、クラスでは……」



 クラスでは? クラスじゃないとこでは仲良かったんだ。



「家、近所だったし、小学校の時一緒の登校班だったし……たまに、遊んだり……」


「仲良しだったんだね」


「……違う。中学では、喋ってない、し……。中島はサッカー部のやつらとつるんでたから俺なんかとは喋らないし」


「……ごめ、ん……俺、ごめん……」



 地面に突っ伏していた中島君がまた泣き出した。

 泣き止みそうだったのに、高橋君の言葉のどこで悲しくなったんだろ?


 どっちかと言うと、小学校の時には仲良しだったけど、中学に行ったら中島君がサッカー部の友達出来て、高橋君が寂しンボだったって、僕には聞こえたんだけど。何で中島君が謝ってるんだろう?


 僕、理解力がないって、そういえば、やないさんにもよく

怒られたな。

『ポチャ次郎、世の中はもっと深いのよ? 言葉の上だけ理解しても、それは本当にはわかってない。深淵に頭から突っ込んで身体で理解しなさいよ』

 やないさんの言ってる事、全くわからなかったな……。



「つまり、高橋君は、中学でも中島君と仲良くしたかったって事?」


「ち、ちがっ! 違わないけど! 今は……」


「わあああん、うわあああ」



 あ、また、中島君が大泣きになった。どうなってるの? 人間関係って難しい。僕には理解不能。



「違うから! 違わないけどっ! 違うから」



 高橋君はわけのわからない事を叫びながら、罠をどんどん設置していく。



「ねえ、高橋君、そんなにそこばかりに仕掛けたら、中島君がかかっちゃうよ?」



 高橋君が設置した罠は、中島君を周りぐるりと囲むように仕掛けられた。


 そうか! 高橋君は、中島君を罠でゲットするつもりか。

 なるほど、それは一石二鳥。


 高橋君は友達を取り戻せるし、貴族の高齢者施設で無理矢理働かされていた中島君も、僕らが罠で捕まえたら、もう僕らのものだよね? 泣くほど嫌なとこで働かなくてすむよ?



「そろそろ泣き止んだー?」



 みんなが戻ってき始めた。



 その時、自分が仕掛けた罠に高橋君がかかった! 宙吊りの高橋君をみんなで救助して、大笑いになった。

 良かった。中島君も笑っている。高橋君は恥ずかしそうに怒りながらも笑ってもいた。


 高橋君って凄いな。自分の身体を使って、あんな大技でみんなを笑顔にして、中島君の涙も止めてしまうなんて。

 はっ、これが、やないさんが言ってた身体ごと深淵に突っ込む何とかってやつか! ぼ、僕には出来ないかも……。

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