114話 誰、探す?
アンブリア国に居る五中の生徒、19人のうち7人をゲット出来た。今は一緒に市場に居る。
残りは12人。女子が3人と男子が9人。
「個別の場所は不明だが概ねわかっているのが貴族街にいる7人か」
「貴族街へは入るのは難しいの?」
「いや、入れるは入れる。ただし、それぞれの屋敷門前には警備の兵士が立っていて、おいそれ中には入れてもらえない」
「貴族街以外の男子2人と女子3人はどこにいるのかわからんのかね」
金井君達も阿藤さん達も湯島さん達も顔を横に振った。
「ごめん、うちら炊き出し広場を移動しまくってただけだから……。他の人がどうしたとか、全然考えていなかった」
「本当、役立たずで申し訳ないです」
「いや、俺らもずっと市場に居たけど他の奴らの事眼中になかったわ」
「うん。なんか不満ばっか口にしてたな。ごめん」
「あ、でもさ、滝田君や金井君達は、ここを出る馬車代を貯めるのに街中の仕事をしてたって言ってたよね? そこで誰かに会ったりしなかったの?」
「うーん……あの頃はがむしゃらにお金稼ぎに走り回っていたからなぁ」
「だよなぁ、俺たち、早くこの国を出て他の国に行きたかった。それでそこで、他の召喚者にあうんだって、躍起になってたんだよな」
「結局甘かった。途中で死にかけた」
「でも、金井達のおかげでろく中のタガセンやポチャ次郎君と出会えたじゃない」
「そうだよ。他の召喚者に会うと言う目標は達成したんだな」
「いや……、偶然というか、拾ってもらったというか」
「だけどそれで、帰還が見えてきたじゃん」
「そうだよ、じゃなきゃ俺たち本当に一生この国で生きていくしかなかったかも」
「いや、タガセンなら俺らを見つけてたさ」
「むぅ」
タガセンが困った顔をしている。期待値が高いよね。これ絶対に全員探さないとダメなやつじゃん。
そんで全員を無事に日本へ送り返す。
まぁタガセンはソレを考えているんだろうけどさ。
僕はちょっとヤキモチ。タガセンはろく中イチクミのタガセンなのに。
「さて、どうしたもんか」
どこに隠れているのかなぁ。残りの人達。
「ねぇねぇ、館山や峯岸はちょっと置いておいてさ、イインチョのとこに行ってみない?」
ヤンキー斉藤さんの言う『イインチョ』は、委員長の事。五中2年3組の学級委員長。
その委員長は確か貴族街のどこかの貴族に囲われているんだよね?
会うの、難しいんじゃないの?
「イインチョのとこは、門番さんが厳しくないからイインチョを呼んでもらえるかも」
なんか、ヤンキー斉藤さんの『イインチョ』の発音が『エンガチョ』に聞こえるのって僕だけかな。
「斉藤、お前、行った事あるのか?」
「うん。イインチョが館を出る前に伝言貰った。なんかあったら訪ねて来いって。それで試しに一度行ってみた。うちらがこの国を出る前」
「おお、そんで? どうだった?」
「イインチョが留守だったから、メモを預けてきた」
「え……、それ、居留守使われた?」
「マジ? うち、イインチョに居留守されたん? 許さん、イインチョ!」
「待て待て、本当に留守だったのかも。一度訪ねてみるか」
みんながタガセンを見た。
「そうだな。いずれは貴族街のあちこちに散った生徒を集めなくてはならん。まずは委員長を訪ねるか」
みんなでゾロゾロ行ったら目立つから、貴族街へ行くのはタガセンとヤンキー斉藤さんと金井君の3人になった。
他は市場で掃除をしながら待つ。
「なぁなぁ、委員長のとこに行くのは昼時にしないか?」
「何で?」
「もし委員長が何処かに出かけても昼飯食いに戻るかもだろ?」
「本当の留守ならな」
「ご飯どきだと余計に居留守使われないか?」
「イインチョめ、やはり居留守……」
「違うでしょ、ただの留守だよ」
ちょっと揉めていたけど、タガセンの「行くぞ」のひと言で、3人は出発した。
同じ街とは言え、この市場は貧民街に近い。貴族街は中央だ。そこへは結構かかるから早めに出かけていった。
僕らは市場の中で屋台を見て回った。僕も爺ちゃんも多少だけどお金を持っていた。ブリンクランドで稼いだお金だ。
でも、この国、アンブリア国では通貨が違うんだって。
ブリンクランドのお金が使えなかったので、僕の倉庫に入っている物を市場で売ってこの国のお金をゲットした。
そのお金を持って屋台村を散策した。
爺ちゃんから『今日使っていいお金』として渡されていたので、どう使うかみんな悩んでいる。
滝田君達は市場でずっと掃除をしていたからあちこちの屋台でも顔見知りで、かなりオマケしてもらえた。
「俺、やっぱ、さっきのとこに戻る」
「いちコインも残さずピッタリ使うぜ」
「私、半分残しておく。明日のお小遣いと合わせて欲しいのがある」
みんな楽しそうで良かった。
思い思いに買い物を済ませて一旦荷馬車へ戻った。タガセン達はまだ帰ってきていない。
「遅いな」
「委員長が住んでる貴族の屋敷ってどの辺なんだろう」
「それにしても、遅いな。やっぱ居留守使われてんじゃねえ?」
僕らは市場の掃除を始めた。
手分けしてゴミを集めて行く。道端にゴミ箱なんて無いし、殆どの人がポイ捨てなんだ。
けど食べ物のゴミを道に捨てたままだと虫や小動物が来るから最低限の掃除はするんだって。自分の屋台前を片付ける店主もいるけど、いつも同じ場所をキープ出来るわけではないから、ズボラな人も多いんだって。
市場はそれなりに広いので、僕らがゴミを集めて集積場に置いて戻る頃には日が暮れかかる。
こっちの世界は街灯とか無いし、あっという間に暗くなるんだ。
ゴミ置き場から早歩きで僕ら荷馬車まで戻った。荷馬車の裏側を寝床に使わせてもらってる。
戻るとそこには見知らぬ子供が数人いた。
子供と言うかたぶん、五中の生徒、だよね? こっちの服を着ているけど日本人みたいな顔…………。たぶん、日本人。
タガセンも居た!
「峯岸!」
「津山さん!」
滝田君達が名前を呼びながら走り寄っていった。
知らない顔が6人。
委員長のとこに行ったんだよね?
あれ? もしかして貴族に連れて行かれた6人?
え、でも、あれ? 貴族のとこに居るのは委員長入れて7人のはず。しかも全員男子だったよね?
今、目の前、滝田君達男子の前には、男子が3人。
女子佐藤さんの前には女子が3人。
…………誰? いや、誰って五中の3組の生徒なんだよね。
どこで拾って来たんだろ? 流石、タガセン???
僕が首を捻っていたら、金井君が紹介をしてくれた。
「ポチャ次郎、コイツが委員長な。そんでこっちが峯岸、そいつは山下」
「ど、どうも……」
「ポチャ次郎君、この子らが館山、津山、千草ね」
そんなにいっきに紹介されても、絶対覚えてない自信がある。
「ポチャ次郎ぉ、別に覚えなくてもいいよ。あっ、イインチョだけは覚えておくと便利かも。イインチョだし」
「おいっ!」
あ、今、顔をしかめた男子がイインチョか。黒い眼鏡している。前髪が揃ってる。なんか、委員長っぽい!
「よろしく、お願いします」
でも、何で? 6人一緒に?
「あ、もしかして、たまたまイインチョのとこでみんなでご飯食べてた、とか?」
「違うから」
「まずは夕飯にしようかの」
爺ちゃんから声をかけられて食事の準備をした。
なんか、いっきに人数が増えたな。五中の生徒が19人。女子が12人に男子が7人か。
大きく輪になって夕飯を食べているけど、食べながらこの1年の事を話している。
僕は爺ちゃんの横でひたすら食べていた。
なんだろ……転校生みたいな気分。




