113話 趣味人3人
「んー、館山は知らないけど、湯島なら……わかるかも」
「谷津もわかるよ」
「依田もどこにいるか知ってる」
浮浪者生活をしていた阿藤達が、まさか他の女子の居場所を知っていたとは驚いた。
「あ、でも……。今もそこに居るかはわからない。結構前の話なんだけど」
「うちら、最初の屋敷を出てからずっと広場の炊き出しを追って門を回る毎日だったんだけど、湯島、谷津、依田を見かけた事があった」
「うんうん。湯島なんかわりとよく見たね」
「見ただけか? 話さなかったのか?」
「話したよ。最初の頃」
「でもうちらみたいな浮浪者に話しかけられるの迷惑っぽかったから、こっちも話しかけなくなった」
「向こうからは話しかけてこないもんね」
「で、話さないけど湯島はよく見た。炊き出しに参加していた食堂に湯島は住み込みで働いているって。湯島じゃなくて、その店の他の店員さんに聞いた」
「湯島はうちらに話しかけられると、ご飯とかお金をクレクレされるって警戒してたのかな。だから話さなくなったのかも」
「しないのにね。友達にクレクレはしないっての」
「でもさ、その湯島さん?は、阿藤さん達を心配してたんじゃない?」
思わず言っちゃった。
「え、何で? ずっと無視してるのに?」
「あ、うん、その……。無視じゃない、気がする。だって、湯島さん、何度も炊き出しに来てたんでしょ? 阿藤さん達を嫌ってたら炊き出しには来なくなるんじゃない?」
「そう、だな。湯島が阿藤達を煩わしく思ってたら炊き出しには来ないよ」
「なら何で、話しかけてこないのよ」
「んと、んーと、もしかすると自分だけ雇ってもらって家に住めてご飯も3食食べられて、阿藤さん達に申し訳なくて声をかけられなかったんじゃないかな。話しかけても助けられないって思ってたのかも」
「そうだよ。だって湯島っちに嫌味言われたりしなかったんでしょ? オーッホホホ、恵んでやるわ、これでもお食べ、とかって言われなかったんでしょ?」
す、凄いな、ヤンキー斉藤さん。どこかの悪役令嬢……。やないさんの話にたまに出てきてたのによく似ていた。
「言われてない」
「いつも、俯いてた……。なんか、変な顔してた。私が臭いせいと思ってた」
いや、それはあったかもだけど……。
「変な顔というか、申し訳ない顔じゃない?」
「…………そうだった、かも」
「あ、じゃあ、湯島さんはその食堂?に居るかもなんだ?」
「谷津と依田は? ふたりも同じ食堂か?」
「ううん、谷津はどこかの大きな商店って聞いた。これは本人から。でも、谷津は1回しか会わなかった。店の名前聞いてない」
「依田は?」
「依田さんはね、商人のお屋敷でメイドをやっているって言ってた。これも本人情報。依田さんも1、2回だね。炊き出し担当のメイドさんが留守にしてて変わりに来たって言ってた」
「どこの商人かはわからない」
「大丈夫。炊き出しをしているところに聞けば、関係している商人や食堂はわかるじゃろ」
「じゃあ、明日は、そっちを手分けして回るか?」
「そうじゃな。まずは門横広場で炊き出し元の情報をもらおう。それから分かれて訪ねてみよう。まだそこに居てくれれば良いがの」
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果たして。
居てくれた。3人とも。
谷津さんはこの街でもかなりの大店に住込みで働いていた。彼女は鑑定スキルを持っていたのだ。
そのスキルをアピールして、みごと雇われる事になった。それなりにスキルを使用して仕事を楽しんでいた。
「帰れないって思ってたから、自分の趣味……じゃなかったスキルを利用してこの世界で生きていくつもりでいたのよ」
けれど、帰れるならば別である。
「急ではあるけど、退職の方向で急遽引き継ぎをして貰ってる」
谷津さんはラノベで『異世界転生』とかそういうのをよく読んでいたので、召喚後に自分が貴族に引き取られなかったのでそっち系だとすぐに思ったって。
そっち系?
「うん。追放系とか、ザマァ系かな。追い出された先で大物になってザマァするつもりでいたんだけどさ」
えー……、誰にザマァするの? てか、ザマァって何。
依田さんはちょっと大きな商人のお屋敷でメイドとして働いていた。
「うち、母親が死んでからおばあちゃんちで家の事を仕込まれてさぁ、この街でも出来る事ってそれくらいかなと思って、住込みメイドの口がないか突撃して探した。子供だからって断られたけど3件目にして職場と家をゲト」
それは凄い。その歳で家事が出来るのも凄いけど、自分から仕事を貰いに行くの凄いフットワーク!
「炊き出しは担当の人が行けない時に代わったんだけど、アレ好きな人多くて争奪戦なんだよね。私みたいな新参者の子供にはなかなか回ってこないのよ。阿藤達、働かず楽して炊き出し食べてるなぁって思ってた。まさか浮浪人やってたなんて!知ってても仕事は紹介してやらんけどね。この世界、厳しいんよ?」
阿藤さん達が申し訳なさそうな複雑な顔をしていた。
「いや、ごめん。無視したって思ってたけど、無視してもらっててよかったかも……」
湯島さんは大きな食堂に住込みで働いていた。もちろんそこを辞めてきた。
「帰れるなら帰るに決まってる。一生この街で生きていくと思ったから、食堂に就職したのよ。料理好きだし何とかなるかなって」
「阿藤達を無視した? そりゃそうなるっしょ。だって、会うたびに浮浪者度がアップしていくんだよ? どうしろって言うの。働きたくない阿藤達4人を私が養えるとでも? 自分の事だけで精一杯だよ。朝早くから夜遅くまでなんだかんだと作業があるのよ?阿藤達に紹介出来る仕事じゃないって。あと、食べ物屋にあの不潔さは無理」
な、何だろう。湯島さん達ってかなり前向きな3人だな。確かに阿藤さん達とは真逆。
うん。でも、とりあえず、『帰還』という目的に足並みが揃いそうで良かった。
これで女子7人発見、救助?
残りは女子3人、男子9人。うち7人は貴族街かぁ。




