112話 浮浪者4人
アンブリア国の街で五中の生徒探しが始まった。
3つのグループに分かれて行動する話は、急遽、変更する事になった。
僕も爺ちゃんも五中の生徒の顔を知らないので、街中ですれ違っても気が付かないからだ。
それでふたつのグループに分かれた。
ヤンキー斉藤さん、女子佐藤さん、爺ちゃん、僕の4人。
滝田君、金井君、高橋君、男子佐藤君の4人。
朝ごはんを食べた後、僕らは市場を出た。一応、外国人風商人メイクはしてもらっている。
「さて、どこから探すかの」
「闇雲に歩いても見つけられないよねぇ」
「だねぇ。目標決める? ターゲット」
「貴族街は入るのが難しいからパスね」
「男子2人と女子10人……女子の方が見つけやすそう」
「10人一緒には居ないと思うけどね」
「僕が召喚されたブリンクランドやウッドランドなら探しやすかったのに……」
「何で?」
「うん、あっちの国は黒髪黒目がほとんど居ないから、居たら召喚人だよ。でも、この国ってなんか日本人に似てる顔の人多いよねぇ」
「そうじゃな。アンデス顔か。ちょっと色黒の、地方には多く居そうな顔つきじゃの」
「高田の爺さんも濃い系のファンデ塗ったら、もろアンブリア人になったしぃ」
「む、そうかの」
「闇雲に顔で探すよりも、居そうな場所をあたる?」
「そうだねぇ。居そうな場所か……」
「阿藤グループと館山グループは同じ場所には居なそう」
「谷津達は群れなそう……」
「谷津、湯島、依田はバラけてそうだよね」
「となると、4人、3人、それとバラ3人か」
「4人は阿藤さんグループだっけ。ええと、だらけた人だっけ?」
「ダラけたw まぁ、やる気の無いタイプ」
ふーむ、やる気のないダラけた女子が4人。働きたくない、何もしないで生きていけるとこ、どこだろう。
「考えたくないけど、阿藤達、まさか身体売って暮らしたりしてないよね」
「パパ活?」
「うわぁ。まぁ女子が簡単にお金を貰える職業ってそれが思い浮かんじゃうけどぉ。でも日本と違ってこっちってそんなに簡単には稼げないと思うんだよねぇ。ご飯付き合っただけでお金貰えるパパ活とか、無さそうじゃない?」
「逆に捕まって売り飛ばされそう。まさか、もう売り飛ばされてたり……」
「そこまで馬鹿じゃないと思いたい」
んー。僕なら、どこに行くかな。働かないでご飯貰えるとこ。
こっちの世界にそんなとこあるかな。みんな毎日の生活にいっぱいいっぱいな気がする。
でも……。
働きたくても働けない人もいるよね。もしかしたら野垂れ死にとかしっちゃってるかもだけど、働けない人、仕事貰えない人ってどこに行くのかな?
どこに、居るのかな?
そう言えば、隣の屋台のおじさんに聞いた。『炊き出しの日』の話。
どうしてもお金が無くてご飯を食べられない時は、『炊き出しの日』に、門横広場に行ってみなって。
この街にある門の横の広場でご飯が貰えるんだって。門が8つあって、毎日1箇所どこかでやっているって。
どうしても働けない時はそこで貰える、けれど、働かない怠け者の浮浪者も結構来るって怒りながら言ってた。
怠け者の浮浪者……。ダラけた女子達……。
「ねぇ、門横広場に行ってみない?」
僕は屋台のおじさんから聞いた話をした。
「居そう」
「居るって、阿藤達なら。タダで貰えるなら絶対貰ってるよ」
爺ちゃんが、近くにいた人に、今日の炊き出しがどこの門でやるのかを聞いてきた。それと門への行き方も。
僕らは門へと向かった。炊き出しはお昼に行われるからまだ時間はある。
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はい、ゲット。
僕らが広場に着いた時には炊き出しは始まっていた。
そして、見事にそこには4人の日本の女子中学生が居た。かなり薄汚れていて、正直、ヤンキー斉藤さんらが居なければ、僕は見逃してしまっていたと思う。
本当に本当に、現地の浮浪者と変わりない姿だった。その上、かなり臭った。
お風呂に入れないにしても、川で洗うとかしなかったの?
滝田君の話だと、最初に居た屋敷の近くに小さい川もあったって聞いてたのに。
「そこまで行くの面倒くさー」
「だよね。どうせ着替えもないし」
「ある一線を越えたら気にならないよ」
「だよね」
いやいや、周りは気になる、その匂い。目に刺さるんですが。
ヤンキー斉藤さんと女子佐藤さんに無理やり川に連れて行かれた。寒い季節じゃなくて良かったよ。
僕の倉庫から、タオル代わりの布と着替えを渡した。石鹸っぽい実も持ってたので使い方を説明して渡した。
戻ってきたらだいぶスッキリした姿になっていた。擦りすぎたのか肌のあちこちが赤くなっている。
回復スキル持ちはいないので、塗り薬っぽい物も渡した。それから食べ物も。
阿藤さん達は、最初はそれを貪るように食べていたけど、ひとりが突然泣き出すと、他の3人も釣られるように泣き出した。
「だって、どうせもう家には帰れないから」
元からのルーズな性格もあったけれど、どちらかと言うと自暴自棄になっていたそうだ。
いきなり知らない世界、元の世界には戻れない、味方は誰もいない、自分だけでは何も出来ない。
だからもう、何もしたくない、したくない、したくない。
泣きながら、そう話していた。
気持ちはすぐ理解出来た。だってみんな一緒だから。
「みんながどんどん、あそこを出て行ったじゃない。私は行くとこないし」
「うん。私も。どうしたらいいか、どこに行ったらいいかわからないし、だから阿藤達と居た」
「私も。死んでもいいとか思ったけど、自分で死ぬのは怖くてできなかった」
「たまたま、広場でご飯を貰えて……。場所を変えて毎日貰えて。1日1食も慣れちゃえばなんてことなかったし」
どうしよう。帰れる話。まだしない方がいいかな。タガセンが話すかな? ぬか喜びさせちゃったらマズイし。
とか、思ってたら、女子佐藤さんが話しちゃった。
そしたら、さっきよりもっと大泣きが始まった。良かったよ、ここが人目につかない川の辺りで。
ゲットした五中女子4人を市場へお持ち帰りした。
ちょっと遅くなったので、金井君達は市場の掃除を始めていた。
掃除中の高橋君と佐藤君は阿藤さん達4人を見て驚いたあと、鼻を摘んだ。川で洗ってきたのにまだ匂ったみたいだった。(僕の鼻は最初の一撃で停止中だった)
市場の近くに水場があるそうで、そこでさらに洗って来て貰った。爺ちゃんがお湯を沸かしてあげていた。
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日が暮れた頃、タガセンが戻ってきた。金井君達の市場掃除も終わった。僕も途中から少しだけだけど参加した。明日はちゃんとやるからね。
タガセンは、召喚の話、帰還の話をした。
全員で帰還するためには各自の協力が必要な事も言い聞かせていた。
ダラけた性格と聞いていたけど、タガセンの迫力に負けたのか素直に頷いている。
「他の生徒も探す。お前らにも動いてもらうぞ」
コクコクと頷いている。
「それにしても初日に女子4人を見つけられるなんて幸先いいな」
「ポチャ次郎君の閃きのおかげだな」
「やっぱ他の女子は一緒じゃなかったか。館山達はどこに居るんだろうな」
「んー、館山は知らないけど、湯島なら……わかるかも」
「谷津もわかるよ」
「依田もどこにいるか知ってる」
浮浪者生活をしていた阿藤達が、まさか他の女子の居場所を知っていたとは驚いた。




