108話 7校目
どこか遠くから、声が聞こえてきた。
「おーい、すみませーん」
「待ってぇぇ」
見るとこっちに走ってくる人が何人かいた!
「おい、あれ……」
高田の爺ちゃんが真っ先に反応した。
「ありゃ、どこかの学生さんだろ。召喚された子らだ」
「そうですね、ディサートから? 本郷中か。 ポチャ次郎、俺の後ろにいろ」
タガセンに腕を引っ張られて後ろに隠された。隠れ切れる自信はない。たぶん、絶対、はみ出てる。
本郷中のジャイアント新堂とその子分の可能性かな。
だったらヤバイかも。
蒼井君達から聞いた数々の外道の行動を思い出した。
「どこ中だっ!」
「本郷中か?」
緊張した様子でタガセンが、それから高田の爺ちゃんも声をかけた。
タガセンの背中から少しだけ顔をはみ出して、そっちを見た。
6人。髪の毛黒い! 年齢僕と近い! 絶対に召喚された中学生だ。
でも蒼井君から聞いたジャイアント新堂っぽくない。
それよりももっと弱っちぃ感じ?
えと、僕よりは強いかもだけど、あのアニメのいじめっ子ぽくない。
みんな似たようなボロ切れを被っていたけど、2人は女子っぽい。
髪の毛長い子と、てっぺん黒いけど金髪の子がいる。
ジャイアント新堂の部下にヤンキーいたっけ?
蒼井君の話だと男子3人……だったよね? 狐顔がふたりと狸顔がひとり。
3人の男子をジッと見た。
んー、んんー? そもそも狐顔とか狸顔ってどんな顔?
「あ、あああ!日本人! 日本人ですよねっ?」
「しょ、召喚、された、人!!!」
「わああああ、助けてくださいっ!お願いじまずぅぅ」
ドカンっ!ドカン!ドカン!
男子3人がぶつかる勢いでタガセンに抱きついた。
僕は反動で後ろに転がった。
タガセンにしがみつき、わんわんと泣いている。
あ、ちょっともらい泣き。
高田の爺ちゃんには女子ふたりが抱きついて大泣きしていた。
そうだよね、蒼井君達以外もジャイアント新堂から逃げてきた人がいてもおかしくない。
違った。
6人が落ち着いてからタガセンが色々聞き出した。
6人はディサートから来たのでも本郷中の生徒でもなかった。
僕らがこれから向かう先、アンブリア国に召喚された五中の生徒だった。
召喚された7校目が判明した。
五中……同じ県内の五中かなと思ったら違かった。
埼玉県さいたま市の第五中学校だって。そこの2年3組の男子13人女子12人が召喚されたんだって。
「これで7ヶ国が召喚した7校が判明したの」
「そうですね」
ブリンクランド国はうち、ろく中。
コスタル国がめぎ中、
ウッドランド国がさか中、
ウッダレジオン国がせんしゅうで、
フォーレスタ国がれいほう中、
ディサート国が本郷中で、
最後にアンブリア国が五中か。
ろく中とめぎ中とさか中は360日目に日本に帰った。
せんしゅうは帰還済みだったし、れいほうは僕らがフォーレスタを出る前に帰還した。
少なくとも、360日目に五中が帰還をしていない事はわかった。
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「さて、どうするかの」
僕らは今、山の麓でキャンプをしている。
五中の子達は久しぶりお腹いっぱいご飯を食べれたのと、大人に出会えたので安心したのか、テントの中で寝ている。
テントっていってもただの雨避けと虫避け。虫避け大事。
平原でも、森でも山の麓でも、多分砂漠でも、それぞれに色んな虫が居て僕らはご馳走みたいで直ぐに集ってくるんだ。
でも大丈夫。僕のスキル生産(採取)と鑑定で、その地にあった虫避け草をゲットできるのだ。スキル万歳!
「アンブリアを訪ねる前に内情が知れて良かったが、その知った内情が、な……」
2個あったテントは現在、五中の男女がそれぞれ使用している。
僕は火の番をしているタガセンと高田の爺ちゃんのそばに座っている。
眠いけど座っている。
さっきまでそこで転がって寝ていたけど、そろそろ陽が昇りそうに周りが明るくなり始めていたし、お腹が鳴って目が覚めた。
寝たいけど何かお腹に入れてから……とか考えていた。
「ディサートもアンブリアも、難儀じゃのう」
「ですね。どうしたもんか、どうすべきか」
タガセンも高田の爺ちゃんも、本郷中と五中を置いて行くって考えはないみたい。
僕なら、そっとしておくのに。
威張りんぼやいじめっ子は好きに生きればいいんじゃない? とか思っちゃうんだよね。
だって彼らは助けて欲しいなんて思っていない。
14歳で人生満喫してるっぽいよね。
「ポチャ次郎、お前は、本郷中と五中を助けなくていいと思っているのか?」
タガセンが静かだけど、少し怖い声で聞いてきた。
もしかしてこれって答えを間違うと例の『タガセンビンタ』されるやつかな。
以前の僕だったらきっと答えられなくて俯いていた。
でも。
僕は頷いた。
そして答えた。
口から出たのは小さい声だった。
「だって、だってきっと、助けてなんて思ってないよ?」
「そう思うのか?」
「だって本郷中も五中も、やりたい放題なんでしょ? 好きに生きてるんでしょ? 助けて欲しいなんて思わないよ? だから僕も助けたいって思わないよ」
「そうか。…………なら、助けてって思うやつがいたら、助けてもいいと思うか?」
「そりゃ……。助けてって、思ってたら……助けても……いいかも、だけど。だけどちょっとむかつく。蒼井君達だって佐藤君とか斉藤君とかだってムカつくと思う」
佐藤君も斉藤君も、昨日出会った五中の生徒。
「そうか。そうだな。蒼井には聞けないが、あとで佐藤達に聞いてみよう」
「ポチャ次郎、ほら、スープあったまったぞ。飲め。腹減ってるから怒ったりむかついたりすんだぞ」
ググゥ
僕のお腹が返事をした。
いただきます。食前のスープ、うまぁ。
昨日よりだいぶ元気を取り戻した佐藤君達と一緒に朝ごはんを食べた。
タガセンはさっき僕に聞いたような話を佐藤君達にも話していた。
「アイツらと仲が悪いからって別に死んで欲しいわけじゃない。そこまで何かされたわけじゃないし……」
「でも、助けてくれなかった。俺たちを見捨てたよな。自分達だけ金持ちや偉い人に保護されてさ」
タガセンも高田の爺ちゃんも口を挟まず佐藤君達に話させている。
「だけどさー、アタシだってもし強いスキル持っていたらあっち側だったかも? だってさ、頼れる人いないし、保護してくれるっていったらきっとついていったよ」
「俺も。たぶん……。でもさ、スキル選びも俺ら残り物にされたし、それはムカつく」
「そうだけど、きっと私達だけ元の世界戻っても、私、きっといつまでもこっちに残してきた子らが気になっちゃうと思う」
「だよな。アイツらが自分で残るを選択したならいいんだけど、帰れるのを知った俺らだけ帰るのは、好きなスキルを先に取ったアイツらより、ちょっと……、酷いかもな」
「ねぇ、五中も、スキルはひとり一個なの?」
つい口を挟んでしまった。
「俺ら25人で召喚されたからな。あの部屋にあった箱に25個あっただろ? だからひとり一個だ。ひとりで何個も取ろうとしたやつがいたけど委員長が止めた」
「良い人もいたんだね。委員長さん?」
「でも、この世界に来たあとは俺らを見捨てたけどな」
「五中は本郷中よりずっといいよ。本郷中はスキル貰えない子がたくさんいたって。ジャイアント新堂ってやつが自分と子分で独り占めしたんだって」
「あ、独り占めじゃないか。子分が何人か知らないけどふたり占めか3人占めか」
「うわー、アタシ、本郷中じゃなくてよかったー」
「うん、そう考えるとうちのクラスそこまで酷いやつじゃないよな」
「みんな自分の事で精一杯だったよねぇ」
「6人いれば、スキルがひとり一個でも、6個のスキルがあるって事でしょ? かなりイケるチームになるんじゃない? ねぇねぇ、何のスキルがあるの?」
「よし、じゃあ、もう一度名乗ってからスキルを言う。昨日言ったのにお前今朝から名前間違いすぎ。俺、金井な。佐藤はあっち」
「ご、ごめんなさい、名前覚えるの苦手で……」
「俺は金井。スキルは解呪だ」
「俺は佐藤。佐藤はふたりいるから男子佐藤って呼んで。スキルは生産(採取採掘採石)」
「俺は高橋。スキルは生産(狩猟解体)」
「アタシは斉藤ね。佐藤と似てるけど間違えないでー。生産のー、養殖?養蜂?飼育?とかー」
「私は女子佐藤。スキルは収納ポーチです」
「俺は滝田、スキルは亜空間倉庫。みんなからはオタッキーって呼ばれてる」
「僕は草凪……」
「大丈夫。昨日聞いた。覚えてる」
「草凪、可愛いね。高田さんにポチャ次郎って呼ばれてたね」
「あ、うん。イチクミのみんながそう呼んでたよ」
「イチクミの……イチクミ……」
「斉藤さんのスキルはタガセンと一緒だから教えてもらうといいよ」
「イチクミ……タガセン……」
「どしたの? 僕、高橋君と一緒のスキル。狩猟解体ってめっちゃ役にたつんだよっ!」
「イチクミタガセンって、あの、イチクミタガセンかよっ!!」
「どうした? 高橋」
「やばっ、そっか、ろく中って六中じゃなくて緑中、緑陽中学のろく中かよ! 緑陽中学の田川先生、鬼のタガセン」
「えっ、あの、噂の……。俺、見たの初めて。兄貴がよく話してた。千葉県の………バレー部の」
金髪斉藤さん以外の5人が集まって何やらこそこそと話していた。タガセンの話みたい。
それから5人は急にかしこまってタガセンに敬語になっていた。
昨日、タガセンに抱きついて泣いてたのに今更?




